みなさんは河合奈保子といえばどの季節をイメージするだろう? ―― 思うに、彼女は夏のイメージがとても強い。「スマイル・フォー・ミー」「夏のヒロイン」「エスカレーション」「デビュー 〜Fly Me To Love〜」など、代表的なヒット曲はどれも夏にリリースされているし、明るく元気に歌う彼女の姿が一番印象に残っていることも大きい。
河合奈保子の全シングル曲の中で、一番秋を感じることができる曲。デビューからここまでのシングルは、ほぼ3月・6月・9月・12月にリリースされていたので、秋ど真ん中である10月に発表されたのは初めてのことだった。林哲司の織り成すメロディはきめ細やかで柔らかく、河合奈保子のやさしいイメージとも合致して安心して聴くことができる。全体的に地味なイメージのミディアムバラードではあるが、途中に入る変拍子が良いアクセントになっている。“キスして” ではなく「♪steal my lips」(唇を盗んで)という表現が上品な印象。こちらの作詞も売野雅勇。
秋らしい愁いのある切ない曲「砂の舟、草の舟」1987年6月24日リリース
河合奈保子自身の作曲によるナンバー。幻想的でスローなイントロから一転、テンポよく進むマイナー調のメロディに乗せて歌われるのは失くした恋の儚さ。吉元由美による歌詞には「♪女郎花(オミナエシ) 藤袴(フジバカマ)」といった秋の七草が織り交ぜられており、全体的に美しい響きの言葉が綴られている。この曲が収録されているアルバム『JAPAN as waterscapes』は “日本の美" をテーマに作られており、ジャケットのアートワークからも徹底したこだわりが感じられる。