それにしても、4月のマッドネス、そして3月のスペシャルズ来日公演は楽しかった。ライブであんなに踊ったのは久しぶり。
それはともかくスペシャルズ、オリジナル・メンバーが3人だけになって大丈夫かなあと思っていたが、演奏はむしろ前回の来日公演よりもタイトで鋭角だった。変わってなかったのはフロントマン、テリー・ホールの、良く言えばクール、悪く言えばクラいたたずまい。MCは少なく、楽しいのかどうかもよくわからない。
でも、それがテリー・ホールなんだよなあ… と、昔を思い出しながら納得した。
スペシャルズはリアルタイムで聴いていたワケではなく後追い。リアルタイムでホールを知ったのは、スペシャルズ解散後に盟友ネヴィル・ステイプルズ、リンヴァル・ゴールディングと結成したファン・ボーイ・スリー(以後、表記FB3)時代だ。
当時、洋楽を本格的にディグり始めた高校生の自分は陽気だったりタフだったりの曲が多くを占める米ビルボードのヒットチャートよりも、クラいポップが次から次へと売れてしまうイギリスのシーンの方に魅力を感じていた。
「オマエがクラかったからだろ!」と言われればそれまでだが、まあ、そういう曲の方がクールに思えるヒネクレた反抗期だったのだ。
そんなときに現われたのがFB3。 “陽気な3人組” という名前、ファーストアルバムに付けられた『ファン・ボーイ・スリーがやってくる / ファン、ファン、ファン!』という邦題、そしてリマールより2年、ハワード・ジョーンズより3年早かったホールのネギ坊主のようなヘアスタイル。
そんなノーテンキなイメージとは裏腹に、音はとにかくダークだった。呪術的、というべきか。いずれにしても、スペシャルズのようなスカの朗らかさは皆無。デビュー曲の「ザ・ルナティックス」も、ロックファンにはジャニス・ジョプリンの熱唱で知られるガーシュウィンのスタンダード曲「サマータイム」のカバーも、異様なアフリカン・ビートのおかげで呪われ感たっぷり。
また、「泡いっぱいの恋」は、テリー・ホールがゴーゴーズのジェーン・ウィードリンと共作したナンバーだが、彼女たちのバージョンが弾むようなポップソングであるのに対して、FB3のバージョンは憂鬱度200パーセント増し。クラいポップを求めていたバカ高校生にはど真ん中のストライクだった。
2枚のアルバムを発表した後、彼らは解散するが、後年ホールはヒネクレ・ポップの王道を行くXTCのアンディ・パートリッジを尊敬していると発言したりして、こちらとしても妙に腑に落ちた。
なのでスペシャルズで歌う今のホールの、スカバンドのフロントマンらしからぬアンニュイな雰囲気もスンナリと飲み込める。いったい彼は今、どんな気持ちでスペシャルズの曲を歌っているのだろう? 万が一会えたら、ぜひ訊いてみたい。
2017.04.20
YouTube / TheBoyCub
Youtube / TheBoyCub
Youtube / MadFranko008