「ベストヒットUSA」がその名の通り、マイケル・ジャクソンのPVを筆頭にメジャーな音楽を次々と流したのに対し、その真逆を行き硬派でマニアックな選曲をみせたのが「ポッパーズMTV」だ。
音楽本位、映像本位でPVを選定したのもノーカットフルサイズで放送したのも初めての試みで斬新だった。PVを映画のようにひとつの作品として初めて日本で認識させたのもたぶんポッパーズだ。
売れ筋でさえ、デュラン・デュランやスティング、A-haというUKを中心とした欧州の音楽だったし、流される曲のそのほとんどがアンダーグラウンド。でも、そのマニアックな音楽が持つ輝きたるや強烈なものがあり、世界にはこんなに面白い音楽があるんだということをこの番組は教えてくれた。
火曜の深夜にこの番組が始まってから私の生活は一変… オンエアを観て、その後次週の放送を待つ間VHSで録画したものを毎日繰り返し見るというのが当時の日課となった。
聴いたこともない未知の音楽をMCのピーター・バラカンさんが初心者でも分かるように明確な解説してくれるのだが、それをそのまま覚えて次の日にはまるで自分の知識であるかのように友人たちに話す… そんな日々をこの番組からもらった。
特に気に入って覚えているのは、ドイツのグループ、プロパガンダの「p:machinery」(1985年)。メンバーがマリオネットを演じる前衛的なビデオに釘付けになった。
トム・ウェイツの味のあるしゃがれた歌声にも、この番組がなかったら一生出会うことはなかっただろう。たしか、ジム・ジャームッシュの映画「ダウン・バイ・ロー」(1986年)を観たのもピーターさんが番組内で猛プッシュしていたからだ。
すべての曲や映像が一癖もふた癖もあり、居酒屋で珍味にハマるのと同じように音楽的味覚を子供から大人にしてくれた… それが私にとってのポッパーズだった。
p:machinery
作詞:Ralf Doerper
作曲:Michael Mertens
発売:1985年(昭和60年)
2016.01.15
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