このジャケットを最初に見た時「これ、何のシーン?」と思った人は多いと思う。
1984年夏公開のヒット映画「フットルース」は映画本編もさることながら、かつてないサントラのヒットでもお馴染みだ。
しかし、公開がアメリカ本国から5か月も遅れていたため、日本においてはメディアによるMVとの接触が先行し、洋楽リスナー達は映画も観ていないのに、春先からバカ売れしたサントラだけを散々聴かされるというおかしな状況が発生していた。
物語の舞台は、いまだ超保守的なアメリカの片田舎の町。こういった舞台設定は日本人にとっては馴染みが薄く、知られざるアメリカを垣間見るという点でも印象に残っている。
ロックが人を堕落させ、演奏はおろか聴くことも禁止という環境の中で、都会から来た転校生が周囲を巻き込んで自由を勝ち取るストーリーが描かれているので、音楽とダンスがミュージカル映画のように各場面で効果的に使われている。
と、そこまで理解して、ようやくアルバムのジャケ写に合点がいくという有様だ。
80年代に入って、主題歌をヒットさせた映画は他にもあったが、MTVを映画と音楽のプロモーションに生かした点では、前年の「フラッシュダンス」からの成功の流れをさらに推し進めている。そのあたりは以前、カタリベの鎌倉屋さんが詳しく書かれているので、ご覧になってほしい
(フラッシュダンスが産んだメディアミックス戦略とMTV映画) 。
このアルバムは、タイトル曲「フットルース」をはじめ「レッツ・ヒア・ボーイ」、「パラダイス ~愛のテーマ~」、「ヒーロー」、「アイム・フリー」、「ダンシン・イン・ザ・シーツ」の6曲をビルボードトップ40に送り込み、アルバムチャートでMJの「スリラー」を1位から追い落とした。
その後、いくつかのナンバーは国内でもカバーされ「ヒーロー」の他「ネヴァー」も大映ドラマシリーズのテーマ曲としてもお馴染みである。
主役を演じたケビン・ベーコンは、最近ではすっかり悪役が板についてしまったが、この映画で一躍スターとなり、その後も数々の映画に主演した。一昨年、テレビ番組で30年ぶりに当時のダンスを披露した彼の様子が YouTube にアップされているが、驚くことにそのキレも健在だ。
さて、待ちに待った公開を迎えたその夏、僕らの合言葉は「なあ、フットルース見た?」であった。そして夏休みも終盤、サークルの合宿で再びメンバーが集まると、ケビン・ベーコンを意識して前髪を立ててきたやつが、私を含めて3人いたのは内緒だ。
2016.08.02