アルバムからのシングルカット曲がヒットする―― 全米チャートを見ていると、それが当たり前の現象であることがよくわかる。80年代はとくに顕著だった。
マイケル・ジャクソンの『スリラー』やブルース・スプリングスティーン『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』からは、実に7曲がシングルカットされ、全米チャートを賑わせた。売れているアルバムほどシングルカットされる曲も多いわけで、それが自分の好きなアルバムだったりすると、“次にどの曲がシングルカットされるんだろ?” とワクワクしたものだ。
インエクセスを知ったのは1983年、高校2年の頃。シングル「ワン・シング」がビルボードのチャートに飛び込んできて、メン・アット・ワークに続くオーストラリアからのネクスト・ビッグ・シングか!? と騒がれていた時期だ。
メン・アット・ワークと異なり曲調はエレポップ風で、イギリスのバンドの音に近いなあと思ったのを覚えている。翌年のシングル「オリジナル・シン」は残念ながら「ワン・シング」ほど売れなかったが、個人的には凄く気に入った。6人組のバンドにしては音数が少なく、それでいてファンキーな香りもある。何度も聴いて惚れこんで、次のアルバムを待った。そう、彼らを世界的にブレイクさせた85年の『リッスン・ライク・シーヴズ』を、である。
US盤から遅れること約ひと月、輸入盤を気軽に買えない秋田県人は国内盤を待ち、買って聴いたら案の定、ハマった。これまでのニューウェーヴっぽさは抑えられ、大陸的な大らかさを感じさせるつくり。なんというか、田舎者のメンタリティにピッタリくるじゃないか。
欧米での最初のシングル「ジス・タイム」はチャート的にイマイチだったが、次の「ホワット・ユー・ニード」が、ついに初のビルボード、トップテン入り。こうなると次に何がシングルカットされるのか楽しみになってくる。
『リッスン・ライク・シーヴズ』で個人的にいちばん好きだった曲はB面1曲目の「嘆きの弾丸(Biting Bullets)」。とにかくノリがいいし、ビートが速いし、中華風のサビも面白い。“次はコレだろう” と思っていた。“シングルカットしてくれ~” と、雪深い田舎町から真夏の南半球に向けて念を送った。
―― が、それは届かず、3枚目のシングルはアルバムのタイトル曲、4枚目は「キッス・ザ・ダート」がカットされる。どちらも嫌いじゃないが、「嘆きの弾丸」に比べたら地味じゃん……。チャート的にも尻すぼんで、アメリカでのシングルカットは打ち止めとなる。
その後インエクセスは87年に決定打『キック』を放ち、最初のシングル「ニード・ユー・トゥナイト」が全米ナンバーワンの座に。翌年には日本武道館で来日公演を行ない、自分も足を運んだ。エキサイティングなライブではあったが、「嘆きの弾丸」はやらなかったので、バンドにとってはそれほど重要な曲ではないのだろう… と自分を納得させた。
『リッスン・ライク・シーヴズ』の国内盤リリースからちょうど12年後の97年11月、ボーカルのマイケル・ハッチェンスが37歳の若さで亡くなった。この時期になると、シングルカットの思い出がホロ苦さとともに甦ってくるのは、そのせいかもしれない。
2017.11.22
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