2022年 11月2日

これが吉川晃司だ!朝ドラにも出演したロックスターの最新アルバムは必聴!

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吉川晃司のアルバム「OVER THE 9」がリリースされた日
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朝ドラ「舞いあがれ!」で見せた役者としての力量


現在放送中、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の航空学校編で大河内教官役を演じ、大きな話題を呼んだ吉川晃司。

当初脚本にあった、言葉遣いも荒く、ワイルドな鬼教官という役柄設定を、自らの希望で丁寧な口調で学生を諭す役柄に変更したというのは有名な話だ。丁寧な口調もさることながら、表情の機微や立ち姿でも、大河内守というひとりの男の人生を垣間見せるような演技は見事だった。ネット上には “大河内ロス” なる言葉が散見されるのも頷ける。

ここには、役柄と同世代として生きてきた吉川晃司というひとりの男の人生も反映されているのかと思う。経験値から生まれる人生の機微が演技にも表れたからこそ、多くの人の心を揺さぶったのかとも思う。

一方、トーク番組で見せる吉川のキャラクターは、どこか憎めずチャーミングだ。共演者とフラットに接し、気配りも忘れない。時折、“ロックスター” という自身の核となる華やかさを見せる。表現者として一流なのだ。それは、信念を持ちながらも多面的に様々なキャラクターを演じ分ける懐の深さがあるからだと思う。

ミュージシャンとして積み上げた吉川晃司の経験値


一方主軸となる、ミュージシャンとしての吉川はデビュー以来、一貫した姿勢を見せる。「モニカ」でデビューし、ファーストアルバム『パラシュートが落ちた夏』に自らの希望で佐野元春の「I'M IN BLUE」を収録した頃から、ロックへの憧憬をストレートに表し、“吉川晃司” という唯一無二のオリジナルブランドを確立させるためにストイックに格闘してきた人だ。



布袋寅泰とタッグを組んだ “COMPLEX” 期もそうだったし、ロックバンドの美学とも言える3ピース編成にこだわり、日本を代表する名うてのミュージシャン、村上 "ポンタ" 秀一、後藤次利とタッグ組んだ “Innocent Rock” の時もそうだった。

吉川はこの二人と納得のいく形で音を作り上げるためにギターを一から学び直したという。ボーカリストとして圧倒的な存在感を確立していながら、まだまだこんなものではないと、自らの描くロックと真摯に向き合うその姿にも、彼のストイックさがうかがえる。

当時吉川はこんなコメントを残していた。

「3ピース・バンドがいいだろうと頭の中で思っていても、実際にやってみないと判らないんですよ。知識をいくら積んでも知識でしかないと僕は思うんです。自分の身体を使って消化した後に、経験値として知恵を積んでいかなければ身になりゃしねぇだろと思う質なんですね」
(エンターテイメント・メディア Rooftopより)

―― と。

役者とミュージシャン、吉川自身が目指すベクトルは違うかもしれないが、この「経験値を積んでいかなければ身につかない」という考えが今の吉川を築き上げたのだと思う。

吉川ブランドを貫いた傑作「OVER THE 9」


そんなことを思ったのは、2022年11月2日にリリースされ、本日(1月25日)にアナログ盤としてもリリースされる20枚目のオリジナルアルバム『OVER THE 9』を聴いた時だ。

ここでも吉川は、自身のブランドを貫き、とことんロックにこだわる。いわゆるロックバンド然としたビートが効いたスタイルの楽曲がヒットチャートに姿を見せなくなっても吉川は揺るぎない信念で自らの経験から醸造させた音を最高のコンディションでファンに届ける。「あぁ… これが吉川晃司だ」と思わずにいられない1枚だ。

レコーディングメンバーは、全幅の信頼を寄せる後藤次利を筆頭に、ホッピー神山、LUNA SEAのINORAN、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTで活躍したウエノコウジなど、これまでの吉川サウンドを構築してきた上で少なからずは影響を与えてきたアーティストたちが名を連ねる。彼らの個性も相俟ったからこそ、80年代、90年代に築き上げられた日本語のロックの系譜を練り上げながら、時代への挑戦とも思える硬質な音作りが実現した。これは、ロックの継承という観点からも重要な作品だと思う。

また、一貫した吉川サウンドでありながらも、作品として多面的な振り幅を見せる。スウィング風にビートが跳ねる「ギムレットには早すぎる」や表現者としてのこれまでの軌跡をスキャットと短い言葉で見事に体現した「焚き火」では、シンガーとしての円熟味を感じ取ることが出来るだろう。

「焚き火」の中で吉川は歌う。

 あゝ時は今何処へ
 空に放つ矢のように

―― と。

デビューから39年、あの頃に吉川が放った矢は、今も失速せずに飛び続けている。

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2023.01.25
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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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