4年半ぶり!ブルーノ・マーズ来日公演
2022年初秋、日本はようやくコロナ禍前の日常が戻りつつあるようだ。すべての業界が徐々に、あるいは一気に通常業態へとシフトチェンジしつつある中、我らが “外タレ来日公演” 業界も例外ではない。この夏日本の洋楽系2大フェスともいえるフジロックフェスとサマーソニックを皮切りに、その後続々と海外アーティストの単独公演が実現している。
そんな中、最も大きな話題をさらったのが、9月に発表されたブルーノ・マーズの4年半ぶりの来日、東阪公演だろう。世界トップクラスのシンガー、エンターテイナーのドーム公演に、日本の音楽ファンは大いに酔いしれてもらいたいものだ。
潮流に乗りながら次々と特大ヒットを記録
ブルーノ・マーズが今や世界トップクラスのシンガーに君臨していることに、異論をはさむ余地はない。彼がオーバーグラウンドに浮上したきっかけとなった、人気ラッパー、B.o.Bにフィーチャリングされた「ナッシン・オン・ユー」(2009年1位)からおよそ13年、その直後のソロとして初全米ナンバーワンを獲得した「ジャスト・ザ・ウェイ・ユー・アー」(2010年1位)以来、ブルーノ・マーズは常にショウビズ界の第一線をひた走ってきたといえよう。
その間リリースされたアルバムは、ソロ3枚、シルク・ソニック1枚の計4枚。今や超がつくビッグネーム感が漂うブルーノだが、12年間で4枚のアルバムというのは、21世紀以降の状況を鑑みれば、まあコンスタントにリリースされていたわけだ。
そこから生まれたシングル楽曲が、ほぼすべて時代の潮流に乗りながら次々と特大ヒットを記録。これら真摯なヒットシングル群のコンスタントな積み重ねが、今のブルーノ・マーズの立ち位置を築いたのは間違いない。
どこにある? ブルーノ・マーズの魅力
ところでブルーノ・マーズがここまで大衆音楽ファンの気持ちを惹きつけた理由とは、いったい何なのだろう。
良質な楽曲?
歌唱力の高さ?
ビジュアルの良さ?
正直言って世界のトップクラスに食い込んで、それを維持するようなアーティストならばこういった条件は、ある意味前提条件といっていいものだろう。もちろんこういった条件を揃えるのは、並大抵な才能・努力がなければ成しえないものだろうが…。
世界トップクラスに君臨するならば、それら前提条件にプラスアルファの要素が加わってくるのかもしれない。ことブルーノに関してのプラスアルファといえば、それはもう “歌うことの喜び” がストレートに伝わってくる、それに尽きるのではないだろうか。
「なんだそんなことか」という声が聞こえてきそうだが… これっていうほど容易いことではない。アーティスト(シンガー)が本来持っている初期衝動ともいうべき、心の底から湧き上がる歌うことの喜びや伝えるべき高揚感みたいなものが、楽曲毎に高次元な意匠を纏いながら、真摯にストレートに聴くものに伝わってくるのだ。
すべての作品1曲1曲にそれはひしひしと感じ取られるし、年を追うごとに強くなっている感さえも抱く。今のところ最新の録音となるシルク・ソニックにいたっては、最もそれが強くなっていると思うのは筆者だけではないだろう。
世界のトップエンターテイナー、ブルーノ・マーズの最大の魅力は、歌うことの喜びの真摯な伝播―― そこにいきつくわけだ。
アメリカンミュージックの伝統を意識した高クオリティの作品群
アメリカで誕生したロックンロール~ソウルミュージックに敬意を払いながら、伝統の継承をしっかりと意識したクオリティの高い楽曲(特にシングル作品)群、もちろんそれもブルーノの魅力のひとつだ。
■ 連綿と継続するソウル基盤のアメリカン・ポップ
例)「ジャスト・ザ・ウェイ・ユー・アー」「メリー・ユー」等
■ ポストディスコ期のデジタル・ニューウェーブ
例)「ロックト・アウト・オブ・ヘヴン」等
■ ブギーファンクの潮流
例)「トレジャー」「アップタウン・ファンク」等
■ デジタルファンク
例)「24Kマジック」等
■ ニュージャックスウィング
例)「フィネス」等
■ 70年代スウィート・ソウル
例)「リーヴ・ザ・ドア・オープン」等
これぞ歌いたかったソウル!―― とばかりに、様々なジャンルの70年代ソウルを愚直に再現したシルク・ソニックの作品には、特に歌唱の熱量がさらに上昇しているように感じる。
ブルーノ・マーズの歌声は、これからも喜びと高揚感をどこまでも伝えてくれるだろうし、もはや誰も止めることはできない。世界最高峰の生の歌声・エンターテイメントを、とことん堪能してほしいものだ。
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2022.10.23