2022年 11月2日

9組の極上アーティストにカバーされた原田知世のうた「ToMoYo covers」

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原田知世のオフィシャル・カバー・アルバム「ToMoYo covers」がリリースされた日
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原田知世の “水彩画のようなふんわりとした透明感”


突然ですが、このコラムをいま読み始めた皆様に質問――

原田知世さんの楽曲で、最初に思い出すものは何ですか?

原田知世さんが女子中学生の頃、角川映画のヒロインとして登場した頃は、女優の卵がユーミンなどの楽曲を歌っている… そんな印象の少女だった。そこから少し時が経ち、気が付くと、大貫妙子さん等と組んでフレンチポップスをリリースしていた。それまでの、“アイドルが大人になって発表する曲” とは少し異なる、センスの良さを感じたものだ。

また、セルフカバーを含めたカバー作品集、他アーティストとのコラボレーションも多数発表している。フレンチ〜ヨーロピアンポップス期以降については、“あら、こんなところに原田知世さんが”、あるいは、“え、これ原田知世さんだったの?”といった場面が結構あるというのが、歌手としての原田知世さんに対する印象だ。

もしかすると、歌手というより女優の印象が強いという方もいるかもしれない。どの年代を通じても共通しているのは、水彩画のようなふんわりとした透明感。

デビュー40周年を記念した公式カバーアルバム「ToMoYo covers」


そんな原田知世さんの9つの楽曲が、趣を変えてカバーされる。今回紹介する11/2発売『ToMoYo covers~原田知世オフィシャル・カバー・アルバム』。原田知世さんのデビュー40周年を記念して、9組の多彩なアーティストが40年間の代表曲をカバーした。

一言で表すなら、「素材としての原田知世さんの作品を、味付けを変えてテーブルに出した」といったところだろうか。どの曲も、カバーする各アーティストの個性が溢れており、原田知世さんのカバーだと言わなければ気づかない人がほとんどだろう。

参加アーティストはindigo la End、kiki vivi lily、キセル、土岐麻子、中納良恵、橋本絵莉子、藤原さくら、Plastic Plastic、堀込泰行(五十音順)の9組。声に特徴のあるアーティストが多いこと、初めて見る名前のアーティストが半数近いこと。「ほほう、面白そうなカバーアルバムだ」と感じた。

音源を聴いた第一印象は、“上質で心地良い”。美味しい日本酒とかワインを、気づいたらひと瓶空けていた… とか、何気なく入った飲み屋の突き出し(お通し)が美味しい… とか、そういうタイプの幸せ感。

声に特徴があるヴォーカリストによるカバーだが、どの楽曲も過度なえぐみ、くさみがない、個性的で気持ち良い作品に仕上がっている。原田知世さんの作品ということをしばし忘れてしまうほど。各ヴォーカリストの熱心なファンでなくても、その楽曲を初めて聴く人でも、違和感なくスルっと聴けるのではないだろうか。
何曲かピックアップしてみよう。

Plastic Plasticの「時をかける少女」を聴いて実感、世界に広がる可能性


原田知世さんは歌手としてのキャリアの初期、1983年から84年頃にユーミンによる楽曲をいくつかリリースしたが、この時代の楽曲が2曲含まれている。

ひとつは「ダンデライオン~遅咲きのたんぽぽ~」。近年はピアノと歌で音楽を紡ぐ作品を発表している中納良恵さんによる作品。動的な印象が強いEGO-WRAPPIN'とは全く違うテイストが、凛として美しい。



もう1曲はタイのユニット、Plastic Plasticが取り上げた「時をかける少女」。知世さんの1983年のオリジナル歌唱にかなり寄せた作品に仕上がっている。このカバーから、ユーミン作品のカバーが、アジア圏をはじめとして世界に広がっていく可能性を感じている。



原田知世さんの作品というと、1990年代のスウェディッシュ・ポップを想い起こす方も多いだろう。1997年に発表した「ロマンス」は、kiki vivi lilyが知世さんの大人のキュートさをそのままギュッと閉じ込めた。音使いも80年代を意識したウーリッツァー(エレクトリック・ピアノ)やオルガン等、どこか懐かしいが、そのキュートさは永遠だ。



たまらなくエモーショナル。藤原さくらが歌う「早春物語」


2010年代後半以降、原田知世さんが、川谷絵音さんなど若手のアーティストと組んで発表した作品の、作者によるカバーも何曲か収録されている。作者の個性が激しく出ていて面白い。

心地よさに加えて、どの楽曲にも感じるのは、FIRST TAKEにも通じる “ライブ感”。個性あふれるヴォーカルに加え、演奏も上質なライブハウスでの名演奏を聴いているようだ。

とくにライブハウス感を感じたのは先ほどの中納良恵さんに加えて、藤原さくらさんが歌う「早春物語」。感情を抑えつつ溢れ出る繊細でブルージーなヴォーカルと、ジャズワルツ的な凝ったバッキングが、たまらなくエモーショナルな仕上がりになっている。ちなみにこのアルバムは、ユニバーサルのクラシックス&ジャズからのリリース。幅広い層に聴いてもらうことを期待された作品集だということがわかる。



感じてほしい、原田知世の作品と表現するアーティストの解釈による“心地よさ”


筆者個人として、「やられた!」と思ったのは、堀込泰行さんが歌う「シンシア」。オリジナルは1997年、その後2007年に原田知世さんがセルフカバーしている。これは堀込泰行さんというシンガーを選択した時点で大正解! としかいいようがない。心をワサワサ揺さぶるせつないヴォーカルは、堀込泰行さんならでは。歌詞にある「胸にほほをうずめて」というところで、キリンジの「耳をうずめて」を思い出した。



日本のポップスも、だんだんとクラシックやジャズのように「何年の、誰某の歌と演奏」となっていきつつある途上かもしれない。良質な楽曲を発表してきた原田知世さんの作品を、違う味付けで聴く作品集。作品自体の心地よさと、表現するアーティストのみなさんの解釈による別の心地よさを、ぜひ感じてみてほしい。

ちなみに冒頭の質問、筆者の答えは「地下鉄のザジ」。1983年の『バースディ・アルバム』に収録されている大貫妙子さんによる楽曲。2017年発表の『音楽と私』で知世さんのセルフカバーが聴ける。

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2022.11.02
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カタリベ
1965年生まれ
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