入口と出口が全く違う80年代、クロスオーバーからバブルカルチャーへ
2020年、あけましておめでとうございます。80年代の音楽エンタメに特化したリマインダーですが、おかげさまで記事数なんと 3,000 超え! 世界でも珍しいアーカイヴになっておりまして、これもひとえに皆さまの温かいご支援の賜物。ありがとうございます!
さて、たった10年しかない80年代ですが(当たり前だ)、何が面白いって、その入口と出口で文化の様相がかなり違っていることなんです。
前半は、
指南役サンが「黄金の6年間」と呼んだジャンルのクロスオーバー時代。東京が最も面白く、猥雑で、エキサイティングだった 1978年から1983年が該当します。そして後半は、1986年12月に始まったとされるバブル景気の影響をモロに受けた、1987年から90年代初頭の文化。キラキラともギラギラとも取れる、いわゆるトゥーマッチなバブルカルチャーが幅を利かせます。
これぞ「ザ・エイティーズ」1984年から1986年はテッパンの3年間!
そんな80年代、僕がこれから紹介していきたいのは2つの時代に挟まれた中盤の3年間。そう、1984年から1986年のエンタテインメントです。黄金の6年間で生み出したものをベースに、バブル時代へと向かっていく過渡期とも移行期とも言えるタイミング。振り返ってみると、これぞ「ザ・エイティーズ」と呼ぶべきコンテンツが続々と生まれています。
なにしろ、僕が 80年代ナンバーワン・コンテンツに推す「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が公開されたのも1985年ですからね。また、時代のアイコンと言ってもいい「フットルース」も、「ゴーストバスターズ」も、「トップガン」だって、この3年の間に封切られているんです。
さあ、「黄金の6年間」という名キャッチコピーには及びませんが、その言葉を意識して、豊潤の3年間… いや、なんか違うな… うん、「テッパンの3年間」とでも名付けてみましょうか。さてさて、ざっくりどんな時代だったのか?
まずは、1984年 ——
あの頃、ニュースやワイドショーは「グリコ・森永事件」と「ロス疑惑」を過剰なまでに伝えていました。日経平均株価は1万円を超え、夏にはロサンゼルスオリンピックが開幕。渡辺和博の「金魂巻(○金○ビ)」がベストセラーとなり、六本木プリンスホテルや有楽町マリオンがオープンしたのもこの年。
音楽に目を向ければ、マイケル・ジャクソンがグラミーの8部門を受賞。シンディ・ローパーとマドンナがブレイクし、プリンスは「パープル・レイン」を発表します。チェッカーズ、吉川晃司、尾崎豊の躍進もこの年で、ユーミンの「NO SIDE」やアン・ルイスの「六本木心中」などもリリースされています。
年末には麻布十番に「マハラジャ」がオープン。大晦日の紅白で都はるみが引退し、その視聴率は78.1%を記録するも、以降その数字が上がることはありませんでした。そうそう、アップルコンピュータが「マッキントッシュ」を発売したのも、トルコがソープランドに名称変更したのも1984年の出来事です。
つづく、1985年 ——
アメリカのレーガン政権が2期目に入り、ソ連の共産党書記長にはゴルバチョフが就任します。第2次世界大戦の終結から40年、冷戦の終わりが見え始め、中曽根首相は戦後初の靖国公式参拝を敢行しました。その直前には日本航空123便の大惨事、バブルの起点とも言われるプラザ合意もこの年の出来事です。
欧米のチャートでは第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンの最盛期。MTVの影響力は勢いを増し、「ウィ・アー・ザ・ワールド」や「ライヴエイド」に象徴される世界的なチャリティブームも起こっています。
あ、松田聖子が結婚した間隙を縫って、おニャン子クラブの「セーラー服を脱がさないで」や、小泉今日子の「なんてったってアイドル」がシーンを引っ掻き回したのもこの年。そのインパクトはある意味、アイドルの終焉をほのめかすものでもありました。これ、秋元康が仕掛けたというよりも、時代が「それ」を望んでいたのでしょう。その空気感を敏感にキャッチした秋元サンのチームが、見事なコンテンツとして世に送り出したというワケです。
そして、1986年 ——
時代はバブル直前、チェルノブイリ原子力発電所の爆発事故はショックだったものの、エンタメのコンテンツはドンドン多様化していきます。レコード大賞は2年連続で中森明菜でしたが、レベッカや BOØWY はもとより、ユースカルチャーを形成するバンドがインディーズシーンからもどんどん飛び出してきました。
ハレー彗星は大接近するし、ダイアナ妃の来日で旋風が巻き起こるし、ワールドカップのメキシコ大会でマラドーナが5人抜きするし、「写ルンです」も画期的だったけど、世の中を変えた大きな出来事は、男女雇用機会均等法が施行されたことでしょうね。にわかに信じがたいかもしれませんが、1986年まで女子総合職の採用は基本的に無かったわけですから…
まだまだ挙げ切れませんが、ざっとこんな感じでしょうか。以降は指南役サンに倣い、個別のコンテンツを掘り下げることで、時代の全体像が浮き上がってくるような連載にできればと思っています。さあ、何から取り上げようかな? よろしければ、今年もご贔屓に!
2020.01.01