2022年 10月21日

グラミー賞授賞式から東京ドームへ【テイラー・スウィフト】は絶対にウソを歌わない!

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グラミー賞を受賞したテイラー・スウィフトが来日


なんとグラミー賞 “年間最優秀アルバム” を受賞したテイラー・スウィフトが、授賞式を終えて来日した。彼女はこれまで、2010年に『フィアレス』、2016年に『1989』、2021年に『フォークロア』で同賞を受賞。今回は『ミッドナイト』で4度目の受賞となる。この快挙は、フランク・シナトラ、スティービー・ワンダー、ポール・サイモンの3回を抜き、歴代最多となった。

今回の来日は、海外女性アーティストとしては初の東京ドーム4日連続公演ということで、その人気の高さを物語っている。最近、日本における洋楽の人気低迷を耳にするが、今回のテイラーやブルーノ・マーズ、エド・シーランのドーム公演ソールドアウトの活況を見るにつけ、洋楽の盛り上がりは健在だと思えてならない。21世紀以降も海外のアーティストは、変わらず素晴らしい作品を生み出し続けているのだ。

さて、テイラー・スウィフトの今回のツアーは『The Eras Tour』と題され、昨年はアメリカを周っていた。今までテイラーがリリースした10枚のアルバム全てからセットリストが組まれており、彼女のキャリアを網羅する内容となっている。その演奏時間も3時間を超えるもので、彼女の魅力をお腹いっぱい堪能することができそうだ。

再録音という荒業= “テイラーズ・ヴァージョン”




こうした自らのキャリアを総括するモードに至った背景には『テイラーズ・ヴァージョン』の制作とリリースが大きく関係していることは間違いない。『テイラーズ・ヴァージョン』とは、彼女のキャリア初期のアルバムの原盤権が転売され、自分が作った作品の権利を自らコントロールすることができない状況にあったため、これらの楽曲を再録音して作ったアルバムである。

現時点で4枚の作品がリリースされたこのシリーズで再録音された楽曲は、オリジナルと比べてもアレンジはほぼ同じで、注意深く聴き比べなければ違いが分からないのだが、それでも曲の権利を自分のものにするために再録音してリリースするという荒業に打って出たのだ。

こうした行動からもテイラーは音楽業界の契約という縛りに対して闘争モード真っ只中にあることは間違いない。契約とはいえ、自分が作った音楽の権利をアーティスト本人が所有できない状況は不自然だし、そうした音楽業界のカネに絡む契約に立ち向かっていく姿勢は力強い。

パンデミック下で内省を歌うテイラー・スウィフト




『テイラーズ・ヴァージョン』への挑戦において、彼女はやりたいようにやるという決意を手に入れた。それは彼女の表現においても同様で、理想とするサウンドや曲作りを求め、決して売れ線とは言えない地味な作品の制作にもチャレンジしている。

その成果がコロナ禍の2020年にリリースされた2枚のアルバム『フォークロア』と『エヴァーモア』だ。この2枚は世相を反映した内省的な作品となり、それまでのメジャー感ある作品からはかけ離れた作風に仕上がっている。共同制作者にはUSインディシーンで大活躍するザ・ナショナルのアーロン・デスナーやヴォン・イヴェールことジャスティン・ヴァーノンを迎え、現在のインディシーンのトップランナーが奏でる温かみのあるアコースティックサウンドを作り上げた。

シンプルな音作りがテイラーのボーカルとメロディーの美しさを際立たせており、聴き応え満点の作品となっている。それまでのカントリーポップからメジャーブレイクしたシンデレラガールという彼女のパブリックイメージを一気に覆すアーティスティックな仕上がりとなり、同時に商業的にも大成功した。

完全無欠の大傑作「ミッドナイト」




そして、躁状態の『テイラーズ・ヴァージョン』、鬱状態の『フォークロア』、『エヴァーモア』という全く異なる作品を短期間で仕上げたテイラーが向かった先は、繊細な楽曲を冒険心溢れるサウンドで表現することに成功した最新作『ミッドナイト』だ。

『ミッドナイト』は、夜中に今までの恋愛における失敗を思い出しては後悔に苛まれる自らのダークサイドに正面から向き合いながらソングライティングに挑み、奏でられる音像はエレクトロニックな要素を大幅に取り入れている。

エレクトロニックの導入というと、80年代のエレポップのような楽しく踊れるダンスミュージックを思い描くかもしれないが、『ミッドナイト』から聴こえてくる音像は、重低音が強調されたミニマルなダウンテンポのビートが鳴らされている。

しかし、そこで歌われるメロディーはとても美しく分かりやすい。こうした相反する要素を組み合わせることで、テイラーはポップミュージックのスタイルを刷新しているし、自らの表現の質を高めている。『ミッドナイト』は、当たり前のように世界中のメディアから大絶賛され、リリースから1年以上経過した現時点(2024年1月)においてもビルボードのアルバムチャートでトップ10に入っているモンスターアルバムとなっている。

ポップミュージックに選ばれしミューズ


こうしたテイラーの活躍ぶりを見るにつけ、彼女は紛れもなくポップミュージックの神様に選ばれた逸材だと感じる。彼女の表現からは今までのポップミュージックの歴史を築き上げた偉大なる先人たちと重なる姿を感じることが度々ある。

自分の心模様や恋愛における後悔の念を包み隠すことなく歌う姿勢からは彼女のウソをつけない実直さを強く感じる。このウソのない歌を歌うという表現の原則は、ブルース・スプリングスティーンと同じ系譜に位置するソングライターだ。



併せて、テイラー・スウィフトのファンは “スウィフティー” と呼ばれ、熱狂的なファンベースを築いている。スプリングスティーンもファンからボスと慕われ、その信頼関係も圧倒的だ。ファンとの関係性においても、テイラーとスプリングスティーンはとても似ており、絶対にウソを歌わないという信頼関係が共通しているのだ。

そして、『テイラーズ・ヴァージョン』における業界との闘争からは、かつてのプリンスを思い起こさせる。プリンスはアルバムリリースのスピードが早すぎてワーナーと闘争したことがあったが、それに屈することなく表現欲求のままに突っ走っていた。テイラーの闘いも契約社会のアメリカにおいては無謀と言わざるを得ない状況からアルバムを再録音してリリースするという破天荒極まりない荒業で切り替えしてみせた。その姿は力強く、我々ファンはもう彼女に着いていくしかないと痛感させられるのだ。

スプリングスティーンやプリンスと比較しても引けを取らないサクセスストーリーを生きているテイラー・スウィフト。ポップミュージックの歴史においても最大級の成功を手に入れた彼女が今後、どのような表現に向かうのかと考えると、ワクワクが止まらない。

彼女が何を思い、何を考え、何と闘っていくのか? そして、その人生をどんな歌にしてくれるのか?これからもパーソナルな歌を歌い、多くの人の共感を得るというポップミュージックのダイナミックな拡がりを我々は現在進行形で体験できるのだ。そして、それはものすごくスリリングなことだ。

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2024.02.07
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  YouTube / Taylor Swift
 

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カタリベ
1972年生まれ
岡田ヒロシ
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