5月1日

ルースターズへの深い愛情、ラストアルバム「FOUR PIECES」にみる花田裕之

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メンバーチェンジを経て制作されたラストアルバム「FOUR PIECES」


「どこかヤンチャで荒々しい」… 私のイメージするザ・ルースターズはそんなバンドだった。こうした印象を一蹴した作品が彼らのラストアルバム『FOUR PIECES』だ。リリース当時、高校2年生になったばかりの私に、同級生の藤田くんがCDを貸してくれた。

「えっ、ルースターズぅ?」と私。すると藤田くんは「ジュリアン・コープも曲提供してて、音はマジ、洋楽レベルだよ。エコバニとか、イギリスのギターバンドみたいなんだよ、いやそれ以上だよ!」と興奮気味に迫ってきた。こうして貸してもらったCDを聴いてみると、冒頭で挙げた私のルースターズのイメージは完全にひっくり返された。藤田くん、ありがとう!

本作『FOUR PIECES』は、それまでのルースターズのアルバムと大きく異なる点が2つある。1つ目は音楽的な主導権が花田裕之から下山淳に移っていること。2つ目はリズム隊のメンバーチェンジがあり、ベースに元ザ・ロッカーズの穴井仁吉、ドラムに元ローザ・ルクセンブルグの三原重夫が新加入していることだ。

本作を最後にルースターズは解散、ようやく大江慎也のイメージを払拭


『FOUR PIECES』制作前に花田と下山の間では本作を最後にルースターズは解散することが決められていた。解散が前提だったことによって下山は自由に音楽に向き合うことができたのだろう。その結果、それまではどこか大江慎也の残像を引きずっていたソングライティングとサウンドから脱却し、大江のイメージを払拭することに成功している。

そして、新しく加入したリズム隊の貢献が実に大きい。穴井のベースは安定感があるのに時に唸りを上げて攻撃的になり、三原のドラムは重厚さとドライブ感を兼ね備えている。何より二人のコンビネーションはこれが初顔合わせとは思えないほど相性抜群で、サウンドが格段にパワーアップしている。

こうして盤石の体制で制作された『FOUR PIECES』は、正攻法の実にロックらしいロックが轟音で鳴っている。疾走感あるビートに研ぎ澄まされたギターが絡む、王道ギターロックナンバーがアルバムの中核を成し、そこに浮遊感あるサイケデリックサウンドやシンガーソングライター然とした幾分フォーキーなナンバーが絶妙に配置されている。最初から最後まで飽きることがない、聴き応え充分の傑作だ。

唯一のオリジナルメンバー、花田裕之の強い決断


さて、ここまで話を進めてきて、バンドのリーダーにして唯一のオリジナルメンバーである花田裕之の話題が乏しい。彼はこのアルバムにどのように向き合っていたのだろうか?

解散前提でのアルバム制作で花田は完全にやる気を失っていたという説もあるが、私にはそうは思えない。きっと花田はルースターズのラストアルバムを圧倒的な傑作にしなくてはならないと考えていたはずだ。

あとアルバム1枚で解散するバンドのリズム隊を入れ替えたのも、音楽的リーダーシップを下山に託したのも、すべてはどうしても必要なことだった… というのが私の持論だ。プライドを捨ててでも、新加入したばかりのメンバーに解散を告げなければならなくても、“ルースターズのラストアルバムを圧倒的傑作にしなくてはならない” という強い意志を感じるのだ。

『FOUR PIECES』を圧倒的傑作に導いた張本人は、花田裕之だったのではないだろうか。花田が一歩身を引き、俯瞰した距離感でバンドの最期を見届ける “おくりびと” の役割を担ったのだ。

『FOUR PIECES』からは洋楽ロックを凌駕するほどの圧倒的なクオリティを備えたギターロックが鳴り響く。ルースターズの有終の美を飾る。そのためには手段を選ばない。花田のバンドへの深い愛情がヒシヒシと伝わってくる。それがルースターズのラスト・アルバム『FOUR PIECES』なのだ。


追記
私、岡田浩史は、クラブイベント「Fun Friday」(吉祥寺 伊千兵衛ダイニング)で DJ としても活動しています。インフォメーションは私のプロフィールページで紹介しますので、併せてご覧いただき、ぜひご参加ください。


2020.05.01
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カタリベ
1972年生まれ
岡田 ヒロシ
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