4月30日

TUBE「ビーチタイム」織田哲郎と亜蘭知子によって育まれたビーイングの鉄壁ヒット!

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サザンに代わる “夏をイメージさせるバンド” TUBE


10数年前の初夏、生まれも育ちも湘南出身者のグループに交じってドライブした時のこと。「何か1枚CD焼いて持ってきて」(当時はまだカーオーディオはCDが主流の時代だった)のリクエストに、適当に自分のプレイリストからジャズ系でテンポのいいものを取り混ぜたところ、「ドライブにCD持ってくっていえばTUBEかサザンに決まってるじゃん!」と大船出身のリーダーの男性にえらく怒られたことがあった。ドライブに必要なのは “夏” と “海” と “湘南” だと30分ほど力説された思い出がある。

TUBEのイメージというと、季節労働者的な夏のバンド… という印象を持つひともいるだろう。1980年代後半、サザンが湘南ローカルの私的なバンドから一度活動休止を経て “メガザザン” 的なバンドになっていったころ、サザンに代わる “夏をイメージさせるバンド” として存在感を増してきたというのが、関西出身のわたしがTUBEというバンドに持っているイメージだ。

彼らの人気は北海道から火が付き、瞬く間に全国区となったが、湘南地区でとみに愛されているのは、地元のことを歌う作品をメンバーが書いているから。そんなことを「はよつけ鎌倉」(1991年のアルバム『湘南』収録、イントロや間奏で江ノ電の電車が動き出す音が聴ける)推しの辻堂出身女子に教えてもらった。

TUBEのメンバーの出身地は、いわゆる海沿いの湘南ではなく、神奈川県の内陸部… 厚木、座間、そして東京・町田。地元在住者よりもその場所に憧れたりこまめに通う人のほうが概してその街には詳しかったりするから、湘南地区に住んでいる人にも、その場所を愛する人たちにも、愛されているのだろう。わたしはそのように考察している。

1988年の夏もやっぱりTUBE!「Beach Time」


そのTUBEが1988年4月にリリースしたのがシングル「Beach Time」。この後メンバーたちが自作し、湘南をテーマにした作品群を発表していくが、本作は作詞:亜蘭知子、作曲・編曲:織田哲郎というビーイングお抱えの鉄壁ヒット作家でつくられた最後のシングル。

1986年の「シーズン・イン・ザ・サン」(織田哲郎さんの最初の大ヒット作品)、1987年の「SUMMER DREAM」のヒットもあり、“夏バンド” として安定してきたTUBEが、“1988年の夏もやっぱりTUBE” とばかりにリリースした作品だ。






キリンレモンのイメージソングということもあり、短いイントロからサビ始まりの歌に入る部分をはじめ、随所随所で「パーン!」とも「パシャッッ!」とも聴こえる、サイダーの栓を抜くイメージの爽快な音が入っている。イントロからぐんぐん進む8ビートのポップなサウンドと、インパクトのある前田亘輝さんの爽やかなヴォーカルが、聴く人の耳をビーチに連れていく。

あの頃のビーチを思い出してみた。1988年頃の須磨海岸では、今井美樹さんを3割ケバくしたソバージュにアンクレットをつけたゴージャスなイケイケ女子がウジャウジャしていたのを思い出した。「Beach Time」の歌詞はそんな渚の綺麗系セクシー女子に恋をする “渇いた俺” からのラブソングだ。

前田亘輝のヴォーカルだけじゃない、春畑道哉のギターも聴き逃すな!


ハイトーンが続くサビとは一転し、低音を中心にした穏やかなメロディラインが、凝ったコード進行上で歌われるAメロ。そして、ドラムが印象的に場面転換し、ライブでも手拍子で盛り上がりそうなリズムのBメロは高いキー。前田さんの声は太くたくましく、低音でも高音でも抱擁感を感じさせる。

前田さんのヴォーカルが、最高潮にセクシーにきまるのはサビに入る前に駆けあがるメロディ。1コーラス目では「♪ き・み・が・好・き・さ」、2コーラス目では「♪ だけどOnly You!」さらにダメ押しで半音上げて「♪ 好・き・な・の・さ」と畳み掛けてくる。さらにさらにこれでもかと「♪ 好・き・な・の・さ」と3度目に畳みかける場面から一瞬のフェイク、勢いが止まらない前田さんのヴォーカルは、めくるめく夏の恋をイメージさせる。4分足らずの短い曲ではあるが、それ以上にスピード感を与えている。

前田さんのヴォーカルのことばかりここまで書いてきたが、バンドサウンドも暴走しない適度な勢いで、聴く人の耳をビーチに連れて行く。重量感とスピードが両立した松本玲二さんのドラムス、確実にサウンドを支えグルーヴとスピード感をキープする角野秀行さんの安定したベース、間奏で鮮やかに印象を残し、前田さんのヴォーカルから間髪入れずエンディングでもう一度永遠の夏を鮮やかに色づける春畑道哉さんのギターも聴き逃せない。

みんなでつくった “TUBEという名の楽園” 礎を築いた亜蘭知子×織田哲郎


もともとTUBEというバンドは、1984年に町田で行われたビーイングのオーディションでベストヴォーカル賞を取った前田亘輝さんとベストギタリスト賞を取った春畑道哉さんを中心に結成されたユニット。1994年発行の書籍『TUBE 終わらない旅 - Never Ending Road-』(TOKYO FM出版)によると、春畑さん曰く、農具小屋で楽器を置いて「1・2・3・4」と大声を合わせ、3拍目でしゃがみ、4拍目でジャンプ、そんな「4人の息を合わせる」練習を繰り返していたという。

デビューまではオーディション、デモテープ作り、ローディーの日々。前田さんもアマチュア時代から作詞作曲をしていたが、デビュー当時の織田哲郎さんとの出会いでコード進行など音楽的な衝撃を受け、

「アコースティックギターを弾いていたギタリストの吉川忠英さんと織田哲郎さんの会話に耳を大きくしたり、一挙一動も見逃さないよう目を皿のようにしたり」

… と、ぐんぐん吸収していった。アルバムではメンバーも曲を書き、プロデューサーの長戸大幸さんをはじめとして織田さん、ディレクター、エンジニア、参加するミュージシャンみんなで「方々からビーチに集まってきた人たちで “TUBEという名の楽園” を造るような感覚だった」とのこと。

こんな青春ドラマになりそうな日々の結果、“TUBEという名の楽園” から聴こえてくる音楽は、じっとりした日本の夏の湿度を気持ち下げて、カラッとして適度に湿気のある明るい夏に近づけた。

1989年の夏にリリースする「SUMMER CITY」以降はメンバーによる作品がメインとなり、日本の夏を代表するバンドになるが、その礎をつくったのはまぎれもなく亜蘭知子×織田哲郎コンビの手による1988年の「Beach Time」までの、いわばバンドの青春前期の作品群であることは間違いない。



さあ、キラキラした熱い季節がやってくる。ことしも、渚に向かう道中で聴くプレイリストを準備しなきゃ。そこには初期のTUBEも入れようか。もちろん「Beach Time」も。


2021年4月30日に掲載された記事をアップデート

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2023.04.30
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カタリベ
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