5月3日

クイーンズライチのチケット争奪戦と金縛り寸前の完璧なパフォーマンス!

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クイーンズライチのアルバム「オペレーション:マインドクライム」がリリースされた日
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photo:UNIVERSAL MUSIC  

リマインダー世代の皆さんは最近ライヴに足を運んでいるだろうか。先日、クイーン+アダム・ランバートの来日公演が発表されたが、『ボヘミアン・ラプソディ』の一大ブームの後だけに、チケット争奪戦が起こりそうな状況だ。

興味深かったのが、先行発売の受付が始まるやいなやネット上で申し込みが殺到したらしく、プロモーターからあくまでも “抽選” での発売である注意喚起がされたことだ。

恐らく、ライヴから足が遠のいていたリマインダー世代の方々が、チケット発売イコール先着順、というイメージで行動したのだろう。今は先着での一般発売は最後の手段で、それまでに抽選による何段階もの販売方法が用意されており、80年代とは隔世の感がある。

80年代末、関西にいた僕は、洋楽 HM/HR の来日公演を何よりも楽しみにしていた。チケットを確実に入手するためには、いつどこにどうやって並べばよいのか? チケットの入手方法の流儀をトライアンドエラーでイチから学んでいった。

お気に入りのチケット売り場は、大阪・梅田のとある場所にあった。比較的ライバルが少なめの穴場だったけど、それでも始発に乗って早朝から長時間並ぶことは不可避だった。

整理券を貰う時と後日発売の時で、都合2回並ぶ必要があったが、特に前者の疲労感は半端なく、無事チケットを手に入れた達成感は非常に大きかった。

何度か並んでいると、同じような面子が何人もいることに気づいた。僕は、とある男性と偶然にも何度か前後に並ぶ機会があった。見た感じ無口そうな方で話掛けることはなかったけど、向こうも僕のことをいつしか認識したように感じた。

さて、そんな大変な思いをして、当時チケットを手に入れたバンドのひとつがクイーンズライチである。元メンバーではあるが、80年代の黄金時代にメインコンポーザーでありギタリストとして活躍したクリス・デガーモが、この6月14日に56歳のバースデイを迎える。ところで、今は「クイーンズライク」と呼称されているが、ここでは80年代当時に馴染みの「クイーンズライチ」と敢えて表記したい。

80年代のクイーンズライチを語る上で欠かせないトピックは、不朽のコンセプトアルバム『オペレーション:マインドクライム』のリリースだろう。彼らの代表作というよりも、数多の HM/HR アルバムの中でも最高峰に位置づけられる歴史的作品のひとつであることに、異論はないはずだ。

僕にとっては LP ではなく初めて CD で買った作品であり、輸入盤だったので、縦長の外箱(スパゲティ・ボックス)に本体が入っていたのを記憶している。

そんなクイーンズライチ2度目の来日公演を観たのが、ちょうど30年前、『オペレーション:マインドクライム』リリース後のツアーだった。まさに脂が乗り切ったタイミングでの来日だっただけに、HM/HR ファンの期待が高まらないはずがない。チケットを求める行列もいつもより長く伸びていた。

ライヴ当日、会場の大阪・毎日ホールは1800人ほどのキャパで、僕は超満員の会場の2階席、しかもほぼ最後列にいた。席を見つけると、例の男性が隣にいるではないか。実は整理券の並びは前後でも、座席表の空きから希望の席を選べるシステムだったので、ライヴ会場での隣り合わせは、意外にもこの時が初めてだったのだ。

程なくして客電が落ち、1曲目の「NM156」がいきなり始まった。ジェフ・テイトの超音波の如きハイトーンヴォイス、クリス・デガーモをはじめとしたメンバーが織りなす鉄壁の演奏。その張り詰める圧倒的なテンションに、僕はステージから最も離れた席にもかかわらず、まるで金縛りにあったように身動きできなくなった。

中盤でついに『オペレーション:マインドクライム』の再現が始まり、この日のハイライトが訪れた。全曲完全再現ではなかったが、最後の「アイ・オブ・ザ・ストレンジャー」まで、彼らは見事にアルバムの世界観を伝えきった。

終始硬直していた身体も、強靭なパワーを放射する彼らのメタルによって次第に呼び覚まされていった。アンコールではヘヴィメタルの魅力を凝縮した彼らのテーマ「クイーンズ・オブ・ザ・ライチ」が披露されたが、これは僕がバンドで無謀にもコピーした思い入れのある曲だっただけに、感慨もひとしおだった。そして、気高くも美しい「テイク・ホールド・オブ・ザ・フレーム」でライヴは大団円を迎えた。

この頃、僕はライヴに行くと音楽評論家気取りでレポート的なメモを残していたのだが、そこには「鳴り止まぬ拍手の中、圧倒的な虚脱感。文句なし、ヘヴィメタルの1つの頂点を観た。サイコーだ!100点」と書いてある。当時数多観たライヴの中で、満点をつけていたのはこれだけだった。

ライヴが終わり、僕は心地良い疲労感とは真逆な放心状態で座席にへたり込んだ。客電に照らされた隣の男性をふと見ると同じような状態に陥っていた。「スゴかったですね」、「いやぁ、本当にスゴかった」。どちらからともなく、思わず初めて交わした短い言葉は、この日のライヴが僕等に与えた衝撃の強さを物語っているようだった。

2019.06.14
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  YouTube / Queensrÿche


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カタリベ
1968年生まれ
中塚一晶
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