5月31日
スプリングスティーンが歌う「栄光の日々」今が過去になる前に…
32
1
 
 この日何の日? 
ブルース・スプリングスティーンのシングル「グローリィ・デイズ」がリリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます

 
 1985年のコラム 
80年代を代表するヒットメーカー、ホール&オーツの夢が叶った夜

映画スターがチャート席巻! “ワルの帝王” リック・ジェームスの大仕事

中川勝彦、カルチャークラブの前座を飾った “しょこたん” の父

セット・ゼム・フリー!スティングがポリス解散後に得た自由

19年ぶりに武道館で響いた “レノン” の「デイ・トリッパー」!

80's ビデオの金字塔、a-ha は「テイク・オン・ミー」だけじゃない!

もっとみる≫


「グローリィ・デイズ」は、ブルース・スプリングスティーンの大ヒットアルバム『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』からの5枚目のシングルレコードだ。発売されたときには、アルバムリリースから約1年が経過していたが、それでも全米5位を記録し、トップ40に3ヶ月間も居座るロングセラーとなった。

溌剌とした歌と演奏が魅力的な曲で、今でもファンの間では人気が高い。印象的なシンセサイザーのリフ、シンプルなドラムパターン、遊び感覚で挿入されるマンドリン、エンディングで繰り返されるかけ声など、ちょっとしたパーティーソングでもある。

プロモーションビデオは、ブルースとEストリート・バンドがバーで演奏しているシーンを中心に構成されており、その楽しげな様子は、この曲が持つ気安さや軽妙さをよく表している。

とはいえ、歌詞に目を向けてみれば、楽しいことを歌った曲ではないと、すぐにわかるだろう。ブルースは、人が心に抱える不安や、直面する現実の厳しさを、自虐めいたジョークに変えてみせるのがうまい。この曲もそんな歌のひとつだ。

主人公の男は、年齢にして30過ぎといったところだろうか。歌には彼の高校時代の友人がふたり登場する。ひとりは野球の名プレーヤーだった男友達で、もうひとりは男子学生の憧れの的だった女友達だ。

主人公は彼らと再会し、一緒にお酒を飲む。しかし、彼や彼女の口から出て来るのは昔の話ばかり。自慢の豪速球で次々とバッターから三振を奪った日々。学校の人気者だった若かりし頃のこと。それは彼らにとってのグローリィ・デイズ(栄光の日々)というわけだ。


 栄光の日々
 そんな時間は過ぎ去っていく
 栄光の日々
 少女がウインクをするほんの一瞬の間に
 栄光の日々 栄光の日々


女友達は離婚して2年ほどがたつ。彼女は言う。「つらいことがあると、昔のことを思い出して笑うの」と。

そんな彼らとの会話に、主人公はやるせなさを感じている。正直、彼らのようにはなりたくない。昔のことばかり考えて過ごすなんてしたくない。でも、きっと自分もそうなるのだろう。それが歳をとることなのだと、彼も薄々感づいている。


 椅子に深く腰をかけて
 華やかだった時代を
 少しばかり取り戻してみようとする
 でも そんな日々はもうとっくに過ぎ去っていて
 自分は置いてけぼり
 後に残ったのは
 過去の栄光の退屈な話だけ


過去の栄光はもう戻らないし、今は今でしかない。人によっては厳しい現実だ。

しかし、ブルースのライヴでは、この曲が大合唱になる。それもみんな笑顔で歌っている。心の奥にある真実を吐き出すことで、気持ちが軽くなり、現実に立ち向かう勇気がわいてくるのだろう。一種の浄化作用と言えるかもしれない。それもまたロックンロールの本質だ。ブルースはそれを誰よりもうまくやってのける。

今でも野球場へ行くと、よく「グローリィ・デイズ」が聞こえてくる。

僕は想像する。もし主人公の友人がプロ野球選手になれていたとしたら… ほとんどの場合、選手が才能を輝かすことができる期間は短い。だからこそ、この瞬間にかける姿が胸を打つのだ。そして、僕らもまたそれをわかっているから、陽気に盛り上がり、歌を唄って、彼らのプレーに喝采を送るのだ。

ちょっぴり自虐的に。今が過去になる前に。

グローリィ・デイズが、少しでも長く続くことを願って。

2018.05.31
32
  YouTube / Bruce Springsteen
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1970年生まれ
宮井章裕
コラムリスト≫
11
1
9
8
7
ブルース・スプリングスティーンの葛藤「一歩前進、二歩後退」
カタリベ / 宮井 章裕
24
1
9
8
4
ブルース・スプリングスティーン、ボスのシングルカットに泣き笑い
カタリベ / ソウマ マナブ
52
1
9
8
4
大きな誤解の向こう側にある真実「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」
カタリベ / 宮井 章裕
38
1
9
8
4
84週も連続トップ10入りしたアルバムからシングルカットされない特別な曲
カタリベ / 宮井 章裕
20
1
9
8
4
コートニー・コックスも踊る!デ・パルマが撮ったスプリングスティーン
カタリベ / DR.ENO
7
1
9
8
2
マスター・オブ・ダークネス「ネブラスカ」が描くアメリカンマインドの闇
カタリベ / 後藤 護
Re:minder - リマインダー