『セレブリティ・デスマッチ』とは、1998年から2007年まで MTV で放送されていた人気クレイアニメのことで、粘土で作られた有名人たち(政治家、俳優、ミュージシャン等)がプロレスで対決させられる… という番組内容だった。もちろん「デスマッチ」を名乗っている以上どちらかが死ぬまで闘う訳で、ビジュアル的にもかなりグロテスクだったが、僕はこの番組が面白くて仕方なかった。
スティーヴン・タイラーが登場したのは、98年5月の「シーズン1」3回目の放送で、試合の相手はミック・ジャガーだった。言わば「タラコ唇対決」だ。結果は、ミックがスティーヴンの胸部を巨大な舌でズブっと刺して勝利。舌を凶器にする設定は、きっとザ・ローリング・ストーンズのシンボルであるベロマーク(Lips and Tongue)に対する皮肉を含んでいたに違いない。このように、スティーヴン・タイラーは何かにつけてミック・ジャガーと比較され、エアロスミスは良くも悪くも「ザ・ローリング・ストーンズの米国版」的なイメージを持たれてきた。
RUN DMC のダリル・マクダニエルズ(DMC)は「ウォーク・ディス・ウェイ」で共演するまでエアロスミスの存在を知らなかったそうで、初めてスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーに会った時のことを米国の音楽サイト『LOUDWIRE』のインタビューでこう答えている。
「プロデューサーのリック・ルービンがザ・ローリング・ストーンズを連れて来たと思った」
だが、90年代にグラミー賞の最優秀ロック・パフォーマンス賞(Best Rock Performance by a Duo or Group with Vocal)を4回も受賞し、2001年にはロックの殿堂(The Rock and Roll Hall of Fame and Museum)入りも果たした偉大なバンドのことを、まるで「ザ・ローリング・ストーンズの二番煎じ」のように扱うのは、さすがに失礼というものだろう。
73年にデビューしたエアロスミスは、3rdアルバム『闇夜のヘヴィ・ロック(Toys In The Attic)』と4thアルバム『ロックス』のヒットでスタジアム級のバンドになった。今では信じられない話だが、当時は日本でクイーン、KISS と共に「御三家」と呼ばれることもあった。ところが、バンドは程なくして、メンバーの脱退劇、解散状態、セールス不振と「どん底」に陥ってしまう。そんな彼らを救ったのが、かつてのヒット曲「ウォーク・ディス・ウェイ」だった(蛇足だが、この曲には発売当初「お説教」という邦題が付けられていた!)。
Run-D.M.C.のDMCが「Walk This Way」について語っているインタビュー動画が面白いので紹介します↓ DMC: The Real Story of Aerosmith + Run-D.M.C.'s 'Walk This Way' - YouTube https://youtu.be/5ikJrtxRovI