2018年6月27日、スターダスト☆レビューの4年振りとなるオリジナルアルバム『還暦少年』が発表された。
正確に言えば、メンバーのなかで、このアルバム発表の時点で還暦に達しているのは、根本要(ボーカル、ギター)と柿沼清史(ベース、ボーカル)の二人なのだけれど、それでもデビュー37年のキャリアでオリジナルアルバムが出せるというのもすごいし、還暦を過ぎてロックバンドとしてのパワーやノリを少しも失なわずに、全速力で走り続けているのも、やはりとんでもないことだと思う。
そんなスターダスト☆レビューのすごさを改めて確認してもらう資料として目を止めてほしいのが、同じ6月27日に出版された『スターダスト☆レビュー オフィシャル・データブック』(ヤマハ)。彼らがこれまでに発表してきたレコード、CD、映像作品、ライブなど活動記録を網羅した本だ。
この『オフィシャル・データブック』シリーズは、これまでに中島みゆき、吉田拓郎、小田和正の3冊が発行されている。じつは、僕もこの制作に関わってきたが、このシリーズを引き継ぐのにふさわしいアーティストとして、満場一致で名が挙がったのがスターダスト☆レビューだった。
僕がスターダスト☆レビューを知ったのは、彼らがアルバム『STARDUST REVUE』とシングル「シュガーはお年頃」でデビューした1981年だった。80~81年にかけて、ハウンド・ドッグ、佐野元春、山下久美子、THE MODS、ザ・ルースターズ、LOUDNESS など、ロックシーンに有望な新人が次々とデビューするなか、スターダスト☆レビューも期待の新人として登場してきた。
しかし正直言えば、その時から彼らにはちょっとした違和感を覚えていた。乱暴な言い方をしてしまうと、他の新人たちはやろうとしていることがハッキリしていた、というか向いている方向がなんとなくわかるような気がした。
けれど、スターダスト☆レビューから感じられる音楽性はあまりに多彩で、果たして彼らがなにをやろうとしているのか、ちょっと戸惑ってしまっていたのだ。デビューシングル曲となった「シュガーはお年頃」では、大胆にアメリカ南部のルーツサウンドを使うセンスには感心したけれど、デビュー曲にはちょっとマニアックすぎるのではないかとも思った。
彼らのサウンドアプローチは多彩だった。しかも、そのどれもがエッセンスをちょっと借用するというレベルではなく、音楽通をも納得させてしまう本格的な匂いとクオリティがあった。けれど、その本気になり過ぎてしまう生真面目さが、彼らがヒットメーカーとなることを邪魔していたのかもしれないとも思う。
シングルヒットに恵まれなかったせいもあって、スターダスト☆レビューがテレビなどに取り上げられる機会は多くなかった―― だから、世間一般から見れば知る人ぞ知る存在であり続けたけれど、彼らは時流の後追いをしようとはせず、ひたすらに自分たちが信じる音楽スタイルを貫き、マイペースで活動を続けていった。そして、その一途さが彼らならではのカラーとなり、独自の音楽性をつくりあげていった。
シングルのセールスはそれほど伸びなかったかわりに、アルバムは音楽ファンに支持されて着実にセールスを伸ばし、スターダスト☆レビューはアルバムアーティストとしての評価を確立していく。その一端は、彼らのアルバムが現在まで1枚も廃盤になっていないという事実にも現れている。
ライブも彼らの強力な武器となっていた。圧倒的にエネルギッシュで底抜けに楽しく、今できることを出し惜しみせずにすべてやってしまおうというステージは、一度観たら虜になってしまう魅力に満ちていた。「とにかく一度行けば理屈抜きに凄さがわかるよ」という口コミで、スターダスト☆レビューはライブアーティストとしての評価を確立していった。
まさに、ブームとは別のところにしっかりと根を張って、彼らならではのシーンを創り続け、スターダスト☆レビューの存在感はどんどん大きなものになっていく―― 気づけば、デビュー37年目にして、リリースしたオリジナルアルバム23枚(ライブ、ア・カペラを除く)、ライブ回数も通算2000回を遙かに越えて、今もエネルギッシュに活躍し続けている。
そして今回、彼らの最新アルバム『還暦少年』を聴いて特に印象的だったのが、デビューアルバム『STARDUST REVUE』と同じ空気感が伝わってくることだった。
デビュー当時と較べれば、圧倒的に経験も違っているだろうし、演奏やアンサンブルのクオリティや成熟度にも違いがあるハズだ。けれど、37年を経た2枚のアルバムから伝わってくる本質的なインパクトはなにも変わっていない。それは、音楽を目いっぱい楽しみ、リスナーにもその楽しさを全力で伝えようとするスピリットだ。
スターダスト☆レビューは、80年代に抱いたスピリットを持ち続け、それが今の時代にも響くインパクトをもっていることを証明し続けている。そんな彼らのすごさに、今一度目を止めていただければと思う。
数日前、ボーカル、ギターの根本要が倒れたというニュースを聞いた。しかし、幸い大事には至らないようで、これからもスターダスト☆レビューの “高い音楽性と低い腰” に貫かれた音楽を楽しむことができそうだと、ホッとしている。
2018.06.27
YouTube / ColumbiaMusicJp
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