7月7日

徳永英明「壊れかけのRadio」大人になって輝く思春期のゆらぎ

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15歳のときに聴いた 徳永英明「壊れかけのRadio」


徳永英明の「壊れかけのRadio」を初めて聴いたのは、私が15歳のときだった。最初に耳についたのは、サビのメロディーラインの美しさ。それから「♪ 思春期に少年から大人に変わる」という言い回しだった。

10代の、ある一瞬にしかない輝きのことを、だいたいの楽曲では “青春” という言葉で表現される。当時私は15歳。青春真っ盛りで、かつ思春期真っ盛りだった。

だからこそ、だったのかもしれないが、“青春” ならキラキラした少女漫画のような世界を思い起こされるのに、あえて青春ではなく “思春期” という言葉を使っていることに驚いた。私にとって、思春期は青春と比べてキラキラしているどころか、むしろ苦くて生々しい。

“思春期” という言葉は、15歳の私にとっては複雑にさせられる言葉で、“時期が来たから” というだけで無理やり着させられた重たい鎧のようだった。それは、自分の意志では決して脱ぐことができないし、無理やり走り出すと足をとられるという、やっかいなものだった。

心と身体、矛盾だらけの思春期…


 何も聞こえない
 何も聞かせてくれない
 僕の身体が昔より
 大人になったからなのか

僕の心、ではなく、身体という歌詞が目にとまる。

思春期は “青春” とおおよその時期的には被っている部分もあるだろうが、さらに生物的な成長期という意味もはらんでいるだろう。

私は15歳当時、思春期という言葉が嫌いだった。とくに、自分の意志に反して身体が成長していくことや、“子ども” “女の子” から “大人” や “女性” として扱われることが、すごく嫌だった。自分自身が変化していってしまうことが怖くて仕方なかったし、まだ子どもでいたいとずっと思っていた。変わっていく自分自身に気づきたくなかったのだ。

何にでもなれる、と思っていた自分の身の程を知っていくこともショックだった。だって、知ってしまったら、もう汚れなき純粋な子どもでいられた日々に戻ることはできないのだ。

この曲で歌われる “レディオ” の意味とは?


そんな思春期は、疑いなく人を信じる気持ちも奪っていく。それまでは、母親の言うことは正義だと思っていたし、学校の先生の言葉をただ真に受けていればよかった。実際、疑いもなく信じていた数々は、私にたくさんの幸せももたらしていたからだ。それは別に何か自分の信ずるアーティストでもなんでもいい。絶対的なものに身を任せていればどうにかなっていたはずだったのだ。

だんだんとその気持ちが歪み始めたのも、この時期だった。

この曲で歌われる “レディオ(Radio)” は、そんな自分の信じていた道しるべのことだと、私は受け取っている。迷子になりそうなときに、その道しるべを心から信じられなくなり、絶対的だった存在が揺らいでいく。できることならずっと疑いなく信じていたかったのに、突然それができなくなってしまった。わかってほしくて、反発もした。だからといって自分自身を信じられるほど大人じゃない。

 本当の幸せ教えてよ
 壊れかけのRadio

という叫びに、そんな思春期のゆらぎが詰まっているのではないだろうか。

大人になって輝く、残酷だった思春期の日々


当時はもちろん、そこまで歌の内容は理解できていなかったし、意味もわかっていなかったが、なんとなく複雑な心境にさせられる曲というイメージだった。それから13年ほど経って大人になり、いま28歳の心で改めて「壊れかけのRadio」を聴いてみた。

そうしたら、どうだろう。「思春期に……」のサビを聴くと、当時の自分にとって残酷だったあの思春期の日々が、なぜだか輝いて聴こえてくるのだ。変化に戸惑い、道の真ん中で泣きわめいていた自分が、愛おしくさえ感じられる。

きっとそれは、あのとき、きっと自分を傷つけながら、おそらく周りも相当に傷つけながら、それでももがいた日々が今の自我をつくったとわかっているから… だろうか。それとも、少しは「本当の幸せ」の答えに近づけているから… だろうか。

代表曲にして、徳永英明にしか歌えなかった曲


青春は誰にでも訪れるわけではないが、思春期はきっと誰にでもある。だけど、この歌は誰にでも歌えるわけではない。

「壊れかけのRadio」は、言うまでもなく徳永英明さんの代表曲のひとつだが、やはりこの曲は彼にしか歌えなかっただろう。彼は歌唱やその佇まいには大人の色気を感じさせながらも、あどけない笑顔や透き通った声はまるで少年のままのようだ。その一見矛盾した存在が “聞こえないラジオ” や “少年と大人” そして “思春期” という矛盾を歌う。だからこそ、そのあいだに横たわる真理を突きつけてくるのかもしれない。



2020.10.18
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