4月19日

田原俊彦「ごめんよ涙」自身主演の大ヒットドラマ「教師びんびん物語Ⅱ」主題歌

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トレンディドラマとはオシャレで、コメディタッチで、ちょっと熱いドラマ


世間一般のイメージと実態が、必ずしも一致していない事例がある。

例えば、かつて一世を風靡した「おニャン子クラブ」――。ごく普通の放課後の女子高生たちのグループと思われがちだが、デビュー曲「セーラー服を脱がさないで」の時点で13名いたメンバーのうち、本物の女子高生は半分にも満たない6名。残るメンバーはオーバーJKだった。

また、よく “バブルの象徴” とされる、お立ち台ディスコの「ジュリアナ東京」――。営業していたのは1991年5月から1994年8月までだけど、経済企画庁によると、日本のバブル経済は91年3月で崩壊。つまり、ジュリアナはバブル崩壊後のムーブメントだった。

同様に――「トレンディドラマ」なる名称も、かなり誤解されている印象がある。本来、それは、フジテレビの “ゲツク” こと月曜9時枠で1988年1月クールに放映された『君の瞳をタイホする!』に端を発し、同局の “モクジュウ” こと木曜10時枠で1990年4月クールに放映された『恋のパラダイス』までの、わずか2年半のドラマ群を指す。いわゆるオシャレで、コメディタッチで、ちょっと熱いドラマたちだ。

つまり、1991年1月クールの『東京ラブストーリー』や、ましてや1996年4月クールの『ロングバケーション』(ともにフジテレビ系)は、トレンディドラマとは違う。それらは、テレビドラマ史では「純愛ドラマ」とカテゴライズされる。そう、トレンディドラマと純愛ドラマの最大の違いは、そこに “純愛” が描かれているか否かにある。

テレビドラマ史的にはトレンディドラマ「教師びんびん物語」シリーズ


何が言いたいかというと、田原俊彦―― トシちゃんが主演し、大ヒットしたドラマ『教師びんびん物語』シリーズ(フジテレビ系)は、テレビドラマ史的にはトレンディドラマの系譜にあり、そこでトシちゃんは大いに輝いた。主題歌は2作連続大ヒット。シリーズ最終回は、自己最高視聴率31.0%と有終の美を飾った。

そして―― ここが一番大事なところだけど、そんな風にトレンディドラマと極めて親和性の高かったトシちゃんだからこそ、その後の90年代に訪れる「純愛ドラマ」ブームに乗れなかった。要は、万人に愛される王子様・田原俊彦だからこそ、一人の女性との純愛が似合わなかったのだ。

少々前置きが長くなったが、今回紹介する楽曲は、エンタテインメントの時代・80年代を疾走し、そのラストイヤーである1989年に迎えた自身最大のヒットドラマ『教師びんびん物語Ⅱ』の主題歌「ごめんよ涙」である。

ドラマ主題歌に相応しい、万人に受け入れられるメロディ「ごめんよ涙」


 最後に一度だけと
 唇かみしめて
 握りしめた手のひら
 燃えるように熱い

「ごめんよ涙」―― 作詞・松井五郎、作曲・都志見隆。都志見サンは、中森明菜の「SAND BEIGE -砂漠へ-」や「TANGO NOIR」を手掛けた、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの若手ヒットメーカー。『教師びんびん~』は前作の主題歌「抱きしめてTONIGHT」が大ヒットして、80年代中盤、一時停滞期にあったトシちゃん人気を一気に回復させた経緯もあり、シリーズ続編の主題歌として同曲も相当気合が入っていた。

リリースは、ドラマの放映開始から半月遅れとなる1989年4月19日。5月1日には、「華麗なる賭け」以来4年ぶりのオリコンシングル1位となり、5月4日には、「抱きしめて~」以来となる『ザ・ベストテン』の1位に返り咲いた。

結局、トップを4週、ベストテン内には12週ランクインし、同番組最多出演回数を247まで伸ばす。セールス面でも、「チャールストンにはまだ早い」以来、5年ぶりとなる売上30万枚オーバーを記録した。

 ひとつの季節だけには
 とまっていられない
 風をみつけた男は
 夢を追いかけてく

そのラテン調の長めのイントロは、もはや恒例のエンターテイナー田原俊彦の “魅せ場” だった。華麗なるステップとリズミカルなダンスが観客を一瞬で魅了する。それは、ジャニー喜多川さんが長年求め続けた理想の男性アイドル像だった。そして歌に入ると一転、曲調はどこか懐かしく、ドラマ主題歌に相応しい、万人に受け入れられるメロディだった。

キャストは同じで物語は連続しないパラレルワールド続編


 愛しあい 傷ついて
 やさしさに気がついたよ
 つらいとき きみのまなざしを
 僕は信じてる

ドラマの舞台は、前作の「銀座第一小学校」から一転、御茶ノ水にある名門私立小学校「聖橋大学附属小学校」である。ここにトシちゃん演ずる小学校教師・徳川龍之介が赴任するところから物語が始まる。

しかし、なぜか前作で「エノモト!」「センパ~イ」の名コンビだった野村宏伸演じる榎本英樹とは “初対面” の設定。映画「若大将」シリーズでも見られる、キャストは同じで物語は連続しない、いわゆるパラレルワールド続編だ。

同ドラマがトレンディドラマである理由は、主人公・徳川龍之介の身なりを見ればわかる。レノマのスーツに、トップを立ち上げたおしゃれヘア。『熱中時代』で常にジャージ姿だった北野広大(水谷豊)や、『金八先生』で長髪を振り乱して生徒に接した坂本金八(武田鉄矢)とは、住んでる世界が違った。トレンディたる所以である。

とはいえ、シリーズの脚本は漫画『人間交差点』(作画・弘兼憲史)の原作者としても知られるベテラン・矢島正雄サンだけに、話そのものは深く、龍之介の台詞も熱かった。だから人間ドラマとして見応えがあり、視聴率は平均22.1%だった前作からさらに上積みして、平均26.0%。最終回は30%を超えた。

田原俊彦のキャラをドラマに投影させた野村宏伸の功績


しかし―― 同ドラマを一躍人気シリーズにした最大の要因は、やはり野村宏伸サン演じる“エノモト”の存在だろう。気弱で、人が良く、子犬のように「センパ~イ」と龍之介になつく可愛い後輩。彼がコメディリリーフとして登場することで、熱い龍之介が時々おとぼけキャラになり、ドラマにユーモアが生まれた。

以前、あるインタビューで「龍之介の8割は僕自身です」とトシちゃんが語っていたように、二枚目だけど、時々ボケるトシちゃんの地のキャラをドラマに投影させたのは、エノモトの功績である。

ちなみに、あの2人の関係、どこかドラマ『傷だらけの天使』でショーケン(萩原健一)演じるオサムを「兄貴ぃ~」と慕う水谷豊演じるアキラと似ていると思っていたら、実際に野村宏伸サンは『傷だらけ~』を見て、キャラ作りの参考にしたそうで。あまりに当たり役となり、後に佐藤雅彦サンが作ったNECの「文豪ミニ」のCMでも、ほぼエノモトのキャラで出演していたのが懐かしい。

ショー・マスト・ゴー・オン、ジャニー喜多川の志を受け継ぐ体現者


 その涙ごめんよ 想い出になるけど
 いつまでも いつまでも 忘れはしない
 さよならもごめんよ
 抱きしめていたいけど
 ふりむかず いかせてくれ
 胸の夕陽が赤いから

主演ドラマと主題歌の大ヒットに沸いた1989年―― トシちゃんは10周年記念コンサートツアー『10TH ANNIVERSARY GLORIOUS』を催す。「ごめんよ涙」から始まる怒涛のメドレーは、エンターテイナー田原俊彦の魅力をいかんなくステージに投影した。間違いなくその瞬間、トシちゃんは最高に輝いていた。

その時、着用した赤いソフトスーツは、後に親友であるKAZUこと三浦知良選手に譲渡され、1993年―― Jリーグ初代MVPに輝いたセレモニーの場で披露された。巨大風船が割れ、中にいたKAZUが着ていた、あのスーツである。エンターテイナー田原俊彦がKAZUに乗り移った瞬間でもあった。

ショービジネスにおいて、昔から連綿と語り継がれる有名な言葉に「ショー・マスト・ゴー・オン(ショーは続けなければならない)」がある。あのジャニー喜多川さんも生前、口ぐせのように唱えていたという。その意味では、今年、60th Birth Anniversary記念シングル「HA-HA-HAPPY」をリリースし、今なおライブでファンを魅了し続けるトシちゃんは、ジャニーさんの志を受け継ぐ体現者と言っても過言じゃない。

奇しくも、親友KAZUも、いまだ現役のJ1プレイヤーである。

特集 田原俊彦 No.1の軌跡



2021.08.28
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カタリベ
1967年生まれ
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