6月25日

【作詞家 松井五郎インタビュー】男性ボーカルを語る〜安全地帯、氷室京介、田原俊彦…

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『【作詞家 松井五郎インタビュー】女性ボーカルを語る〜岩崎宏美、澤田知可子、田村ゆかり…』からのつづき

松井五郎がこれまで手がけてきた楽曲を自らセレクトしたプレイリスト “G-ism~松井五郎セレクション” についてのインタビュー、最終回は安全地帯や氷室京介、吉川晃司、HOUND DOG、さらには未配信曲も多いジャニーズ系などヒット実績の多い “男性ボーカル編” について語ってもらった。

“6人目のメンバー” とも言われてきた安全地帯、「悲しみにさよなら」でオリコン1位を獲得


―― まずは、これまで120曲以上を手がけ、“6人目のメンバー” とも言われてきた安全地帯について尋ねてみた。

松井:そもそものきっかけは、SERIKA with DOGという大阪のバンドを小室哲哉くんと木根尚登くんがプロデュースや作曲をしていて、そこに僕も歌詞を提供していて、そのアルバム(‘83年『CAUTION』)を聞いた安全地帯のディレクターさんから声をかけてもらったんです。だから、実は安全地帯との出会いには小室くんが関係しているんですよ。安全地帯がブレイクした翌年の’85年には、TM NETWORKにも「アクシデント」を提供しています。

―― ‘85年のシングル「熱視線」以降、’92年までの全シングルの作詞を手がけた松井五郎だが、「熱視線」の次回作となる「悲しみにさよなら」で、自身が手がけたシングルA面曲で初めてオリコン1位を獲得したことは大きな励みになったのではないだろうか。



松井:そうですね、僕のキャリアの中でも大きな分岐点となりました。チャートも1位となり、それまでの安全地帯のイメージとは異なる引き出しも出来たと思いますし。また、当時は作曲家・玉置浩二としてのキャパシティをさらに広げようとしていた時期で、「悲しみにさよなら」のようなそれまでのイメージを覆すようなバラードが特に必要な時期でした。

サザンオールスターズが良い例ですよね。コミカルなアップテンポな曲もある中で、「いとしのエリー」が出来たことで本格的なバンドになったように、やはりバンドの人気が安定するには最低3曲必要だと言われていましたから。だからこのヒットは非常にラッキーでした。

氷室京介のカリスマ性のある世界観を一緒に作りたいという想い


―― 男性アーティストへの提供は非常に多いので、順次、作詞のテイストを尋ねていこう。まずは、氷室京介。ミリオンヒットの「KISS ME」のほか、「JEALOUSYを眠らせて」(氷室と共作)や「VIRGIN BEAT」「NATIVE STRANGER」「HEAT」などヒット曲を多数手がけている。



松井:氷室くん(1960年生まれ)も僕と同世代で、ブレイクする前からよく知っているし、BOØWYのころから書いていたので、ソロになって、カリスマ性のある世界観を一緒に作りたいという想いで書かせてもらいましたね。プレイリストに選んだ「NATIVE STRANGER」は単独名義なのに対し、「JEALOUSYを眠らせて」は基本的に自分が書いたものを、氷室くんが少し言い回しを変えたので共作名義となっています。曲によっては彼がデモテープの段階で歌っていた英語をいかすこともあるし、共作名義のパターンは様々です。

―― 次に、HOUND DOG(ストリーミングでは「大友康平」名義で配信)にも「BRIDGE~あの橋をわたるとき~」(大友と共作)や「AMBITOUS」、「Only Love」「NO NAME HEROES」など多数のヒット曲を提供、こちらはメインタイトルを英語にする制約があった?

松井:ロックバンドということもあり、デザイン上、英語タイトルにしたものが多いですが、「BRIDGE」は “あの橋をわたるとき” というサブタイトルがあるし、その翌年には「日はまた昇る」(大友と共作)も出しています。

とんねるずに提供した王道のバラード「星降る夜にセレナーデ」


―― さらに意外なところでは、とんねるずに19曲もの楽曲を手がけている。松井五郎といえば、シリアスな楽曲が多いイメージがあるが…。

松井:とんねるずへの提供作は、基本ふざけていて、大笑いしながらパロディーソングを作っていたのもあります。元ネタがブルーハーツやHOUND DOG、安全地帯とかがあって、みんなで遊びながら作りました。ただ歌の内容自体は大真面目ですね。また、「星降る夜にセレナーデ」は、先にテレビのタイアップ(’88年、「とんねるずのみなさんのおかげです」エンディングテーマ)が決まっていたので、玉置(浩二)に曲を書いてもらった王道バラードにしています。

―― 崎谷健次郎への提供作からは、インドネシアでは多くのアーティストにカバーされた国民的ヒット曲の「涙が君を忘れない」をプレイリストにセレクト。

松井:単純にこの曲が好きなんですよ。崎谷さんの持っているセンチメンタリズムが強みで、なおかつあまりウェットにならない歌声が魅力なんですよね。そうすると言葉が良い意味でドライになるので。

約35年間にわたって歌詞を提供している田原俊彦、「彼にはいくらでも書けますね!」


―― ここからは、未配信の多いジャニーズ系アーティストについて見ていきたい。まず、‘88年の「かっこつかないね」以降、「ごめんよ涙」「ひとりぼっちにしないから」「ジャングルJungle」「雨が叫んでる」など大人の田原俊彦像を描くことで成功し、近年も「好きになってしまいそうだよ」や本プレイリストでセレクトした「ロマンティストでいいじゃない」など約35年間にわたって歌詞を提供している。



松井:トシとは88年からの付き合いで、長きにわたって節目節目に書かせてもらっていますね。ちょうどアイドルの頃からダンサブルなアーティストに確立し始めたころに依頼を受けました。特に(作曲の)都志見隆くんとのコンビが多いと思います。彼の作品で、特に印象的だったのは、91年にシンガーソングライターの荒木真樹彦くんと組んだアルバム『夏の王様 〜MY BLUE HEAVEN〜』ですね。全曲の作詞を松井五郎、作曲を荒木君が手がけて、詞も曲もいろんな曲が入っていてオススメです。アルバムだからこそバリエーションを持たせる必要があるので。

―― ちなみに最初の提供シングルの「かっこつかないね」は、数少ない作曲家:筒美京平とのコンビによる作品だという。‘22年のシングル「ロマンティストでいいじゃない」も、ビッグバンド風の歌詞にふさわしいゴージャスな作品だが、松井は田原俊彦のことをどう感じているのだろうか。

松井:これはデモの段階からビッグバンドの演奏があったので、ああいう歌詞になりました。トシは、玉置のようなボーカリストではないんだけれど、彼にしか歌えないワビサビというのがあるので、彼が発するからこそ生き生きとする言葉ってあるんですよね。だから彼にはいくらでも書けますね!

―― 確かに、ダンディなもの、ワイルドなもの、ナイーブなものなど、タイトルのバリエーションは全提供アーティストで最も幅広い感じがする。実際、タイアップの制約以外は、ずっと自由に作れたとのこと。

―― さらに、光GENJIには‘93年の代表作「勇気100%」以降、光GENJI SUPER5となりやがて解散するまでの大半のシングル曲を手がけている。

松井:大人になってからの光GENJIを描いていますね。どれも、シングルとは意識せずに書いていて、結果的にシングルになったと後から聞かされたものが多くて、そんなにプレッシャーはなかったです。「勇気100%」以外では「BOYS in August」は好きな作品ですね。ジャニーズは、皆さんお忙しいのもあり、提供した時も、ほぼメンバーとは会っていません。

松井五郎の代表作、郷ひろみ「逢いたくてしかたない」、矢沢永吉「東京」


―― 他にも、少年隊「oh!!」、V6「愛なんだ」、J-FRIENDS「明日が聴こえる」、KinKi Kids「まだ涙にならない悲しみが」「鍵のない箱」、Sexy Zone「Ladyダイヤモンド」「Real Sexy!」、そしてA.B.C-Z「Moonlight Walker」などジャニーズ系はとりわけヒット曲満載だ。その他、プレイリスト内の楽曲からこだわりの作品はどうだろうか。

松井:僕の代表作として、郷ひろみさんの「逢いたくてしかたない」(’95年)と矢沢永吉さんの「東京」(’93年)は外せませんね。また、意外なところでは、沢田研二さんの「彼は眠らない」(’89年のアルバムタイトル曲)や平井堅さんの「Affair」(’00年、シングル「楽園」カップリング)あたりもあるので、是非聞いてもらいたいですね。

―― 00年代以降は、K-POPアーティストへの楽曲提供も多いが、その大きなキッカケとなったのがドラマ『冬のソナタ』にも出演していたパク・ヨンハで、彼には20曲以上の提供作がある。

松井:彼は玉置のことをリスペクトしているので、曲を書いてもらうために神戸までコンサートに連れていったこともありました(’05年、両A面シングル「Truth/ほほえみをあげよう」)。

演歌・歌謡曲アーティストへの提供でも大活躍!


―― 近年は、演歌・歌謡曲アーティストへの提供でも大活躍! 特に‘23年の上半期は、山内惠介「こころ万華鏡」、純烈「だってめぐり逢えたんだ」、市川由紀乃「花わずらい」、新浜レオン「どんなに愛したとしても」、走裕介「篝火のひと」などシングルA面曲だけで上位入りした曲が大量にあり、演歌・歌謡曲部門では間違いなく “いま、最も勢いのある作詞家” と言えるだろう。

松井:ただ、僕の場合、演歌といっても七五調やご当地モノではなく、かつての歌謡曲の世界となにも変わりません。純烈の曲なんて、トシちゃんへの提供作とさほど変わらない。その意味では、演歌を書いているという意識はなく、ポップス色を出すようにしていますね。ちなみに、「また君に恋してる」などフォークや演歌・歌謡曲系は詞先が多いのですが、完全にJ-POPになると曲先が多くなります。

―― 最後に、今後の抱負を尋ねてみた。

松井:ラジオのDJやこのプレイリストの選曲も含め、これまで作ってきた曲を沢山聴いてもらえればと思っています。それと、新たなアーティストが既存の楽曲を歌ってまた新たな息吹を持つということを、今後も試していきたいですね。とはいえ、松本隆さんや売野雅勇さんのような大規模のトリビュート・イベントは自分には難しそう。だってBOØWYとCHAGE&ASKAを一緒に呼んでこないといけませんから(笑)。ともあれ、歌は年を取らないので、そういう意味で新しい世代の方も作品を楽しんでもらえればと思います。


ちなみに、’11年からは『GORO MATSUI SONGBOOKS LIVE』と題し、これまで楽曲を提供したアーティスト(基本的には1組ずつ)が出演し、松井が共演するというスペシャルなライブも不定期に行われている。松井五郎の歌詞世界は、“女性はより女性らしく、男性はより男性らしく” といったことはなく、強いて言えば “人間がより人間らしく” 輝く歌詞が多い気がする。ChatGPTなどIT技術がいくら発達しようとも、彼が描く歌詞の行間にただよう愛しさや優しさまでは到底真似できないし、またいつまでもそれを感じ取れる人間でありたいと強く思った。

特集:作詞家 松井五郎の世界

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2023.07.25
109
  “G-ism”松井五郎セレクション〜男性ボーカル編【おとラボ】
 

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カタリベ
1968年生まれ
臼井孝
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