友人の家でテレビを見ていたところ、世代間格差を話題にした番組をやっていた。「昭和のお父さんは~だった」「えぇ!今ではありえない!」というようなやり取りがなされる、そんなバラエティ番組であったが、そこで「80年代」も話題にされていた。そしてカタリベの皆様もお書きになられているように、車で流す「デート用カセット」があったという話になり、僕と同世代の女性タレントが少し「ひいて」いたのを見て思わず笑ってしまった。
彼女と同じく、何事にも「無難な」ものを求めてしまう「ゆとり」で「草食系」の烙印を押された平成前半生まれの僕のような人間には、なかなかデート用にムードを上げるための選曲をするという行為はできそうにない。しかし、自分の思いが込もっている曲をバックにプロポーズというのも悪くない、素敵なことだ(相手がそのナルシシズムにギョッとしなければだ)。
2000年公開の『あの頃ペニー・レインと』で有名な監督、キャメロン・クロウの映画に『セイ・エニシング』というものがある。ジョン・キューザック演じるクラッシュのTシャツを着てヘビメタを聴く出来損ないの高校生が、スクールカーストの頂点にいる女の子に恋をするお話だ。
時期は卒業式のすぐ後の夏休み。初めは上手くいくのだが、裕福な彼女の父親が付き合うのを許さない。彼女もそれを理由に別れてしまう。そんな中、彼は自分の思いを伝えるためある晩、彼女の家の窓際に立ち、ピーター・ガブリエルの『イン・ユア・アイズ』をラジカセで流すのだ。
そのシチュエーションと、『君の眼差しに光がある。温もりがある。君の眼差しの中、僕は満たされる』というド直球の歌詞。観ているこっちが恥ずかしくなるようなシーンだ。しかし、どうしてもキライにはなれないのだ。そんなアンビバレントな思いを、90年代生まれとして、「デート用カセット」だけでなく「80年代そのもの」に僕は持っている。
ともかくこの『セイ・エニシング』、単なる恋愛ものではなくアメリカの「階層社会」のドロドロに深く言及している面白い映画なのでオススメしておきたい。
2016.09.03
YouTube / Movieclips
YouTube / Peter Gabriel
Information