バングルズの「冬の散歩道 ー Hazy Shade Of Winter」。サイモン&ガーファンクルの秀逸なカバーが映画の冒頭、回想シーンで鳴り響く。
ニューロストジェネレーションの旗手と言われたブレット・イーストン・エリスの処女作『レス・ザン・ゼロ』。1987年に映画化されたこの作品の冒頭シーンはジャミー・ガーツがロバート・ダウニー・Jr.と浮気している場面を東部の大学に入学したマッカーシーに見られてしまうところから始まる。
エリスは思春期に自分の回りで起こっていた事を淡々と描写しただけと回想する。映画が余りにもスタイリッシュで美しかったのですぐに小説も読んではみたが青春と呼ぶには余りに暗く残酷だった。
この映画には青春の挫折と欲望の輝きがあった。何故か考えてみると映画から小説や音楽やファッションが立ち上っていたからではないだろうか?
ロバート・ダウニー・Jr.演じるジュリアンが着用する Yohji Yamamoto によって僕は初めてコムデギャルソンに負けず劣らずの服がある事を知る。この映画が僕と山本耀司との出会いだった。
今となればヨージオムがビバリーヒルズに合うはずがないとか考えてしまうのだが、そんな疑念を払拭して余りある演技をジュリアンは魅せる。
昼間、ロスの海岸の太陽の下でヨージを着用したジュリアンは全然動かない。昼間の動物園の動物の如く動かない。
夜になると違うヨージに着替えたジュリアンはハイになり上機嫌でぶっ飛び続ける。
そんな「静」と「動」のジュリアンをヨージの服は否定したり突き放したりせずに優しく包み込む。
『こんな服があったのか⁈』
しかもデザイナーは日本人! 以来、ヨージ好きのまま30年が経過した。
映画のラスト、砂漠を疾走するオープンの Little Red Corvette。3人のスタイルや想いが夕陽に溶け込んでいく。
エンディングテーマはロイ・オービソン「ライフ・フェイズ・アウェイ」。この映画はストーリー関係なしに絵だけでも成り立つ映像美で今観ても古くならない。
続編の噂を聞いた事があるが『レス・ザン・ゼロ2』は製作されるのだろうか? 10代だった主人公達が40代をどう過ごしているのか観てみたい。
2017.10.12
YouTube / Manubibi Walsh
YouTube / Music From Movies
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