2022年 5月3日

ゴールデングローブ賞!歌曲賞の変遷にみる80年代の映画音楽とMTV黄金時代

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映画賞レースの注目作品「トップガン・マーヴェリック」前作とリンクする音楽の効果


昨年日本でも公開され空前のロングランとなった映画『トップガン・マーヴェリック』が大ヒットを記録したことはまだ記憶に新しい。これからアメリカのショービズ界はホリデーシーズンを終え、エンターテインメント各賞の獲得レースが本格化することになる。

国際情勢の緊張も追い風として話題となった本作は、その注目株の筆頭といっていいだろう。そして新春それら先頭を切ってこの1月10日発表となる映画賞が「ゴールデングローブ賞」だ。『トップガン・マーヴェリック』も作品賞(ドラマ部門)、またレディー・ガガによる主題歌「ホールド・マイ・ハンド」の歌曲賞へのノミネートが決まっている。

作品中効果的に使われていた「トップガン・アンセム」


ともあれRe:minder的には、やはり歌曲賞については触れておくべきだろう。この作品中でも効果的に使われていたのが1986年公開の前作『トップガン』の挿入歌曲である。映画冒頭で流れる「トップガン・アンセム」は前作の終盤でも鳴り響き、敵機を迎撃して帰還する栄光のシーンを思い起こさせるし、艦載機の出撃シーンで使われた「デンジャー・ゾーン」には相変わらず高揚した気分にさせられる。

あえて前作へのオマージュとも取れるような使い方をすることによって、イメージリンクを図り、36年の時を超えて、観客たちを一気にストーリーの世界に引き込んでいく。タイアップ全盛で実力派のミュージシャンが集結していたとはいえ、今なお色あせない楽曲の力を思い知らされる。

かの主題歌「愛は吐息のように(Take My Breath Away)」は、ゴールデングローブ賞だけでなく、アカデミー賞においても歌曲賞に輝き、世界中のヒットチャートを席巻した。今回の「ホールド・マイ・ハンド」はメガヒットが生まれにくくなった昨今、セールス的には及ばないものの、過去に受賞歴のあるガガの作品という事で今回も最有力候補と言われている。



アカデミー賞の前哨戦「ゴールデングローブ賞」両者の違いとは?


ところでゴールデングローブ賞は、映画業界のみならずショービズ界全体において最も著名で価値ある賞のひとつ、アカデミー賞の行方を占うともいわれている。これを選定するのが “HFPA(ハリウッド外国人記者協会)” という団体である。評価対象はいわゆるハリウッド作品であり、要するに外国人記者やジャーナリスト、カメラマン等がその年で最も優れたアメリカのエンタテインメントを選び、メンバーそれぞれの自国、つまり世界中へ知らしめるというのが本来の主旨である。

グローブとは(GLOVEではなく)その名の通り“GLOBE”即ち地球のことで、トロフィーもそれを模したものになっている。ただし“アメリカの”といってもロサンゼルス一帯で7日間以上の上映または配信などの実績があればいいというものだから、多少緩くはなっているが、としては厳密に定められており、それらの作品群の中から映画15部問、テレビ12部門について授与される。

なお一昨年程前から過去の選考を巡ってスキャンダルが相次ぎ、一時は存続も危ぶまれる事態となったのは記憶に新しい。こちらは選考委員の大幅な入れ替えなど組織の近代化に取り組むことで沈静化に向かい今年は無事開催される見込みだ。



映画賞のスタンスの違いを超越した80年代の映画音楽


このような権威失墜の危機を免れ、ようやく再建の道を歩み始めたゴールデングローブ賞であるが、それでも築いてきた歴史からすれば依然として存在感は健在。組織の在り方に問題があろうと、選考結果には大衆も納得して公正さを認めてきたからだろう。決して興行成績というものを軽視しない姿勢がそうさせているのかも知れないが、受賞作の毛色がアカデミー賞と多少異なる点がそこにある。

アカデミー賞は映画関連企業の経営者や製作者、俳優などハリウッドに集う業界関係者で構成される「映画芸術科学アカデミー」の会員たちによって選ばれる。そのせいか多くの人に“観てもらった”作品よりも、内向きな発想から“観てもらいたい”作品、例えば世相を反映した社会派の作品や文芸作品の候補から選んでしまうことがある。ジョージ・ルーカスやジェームズ・キャメロンといった娯楽大作の巨匠たちは作品賞でしばしば苦戦する羽目になるのだ。

アメリカの人々にとって“フェア”であるかどうかは、何を判断するにせよ重要なファクターとなっている。だからメジャースポーツ等でもMVPやオールスターゲームなどの選考はファン投票ではなく、スポーツ記者や選手間の投票で選ばれるケースが多い。海外での興行力も問われるゴールデングローブ賞と、ドメスティックな事情が優先することもあるアカデミー賞のいずれも“フェア”であろうとするが故に、かえって足並みがそろわないのも至極当然である。

それはもちろん歌曲賞についても例外ではないはずだが、実は双方の最優秀賞で同じ楽曲が選ばれ続けた時期がある。先に挙げた「トップガン」を挟んだ1980年代、1980年「フェーム」から1989年「リトル・マーメイド」までの10年間のことだ。それが起こり得た大きな理由・・・やはり音楽と映像が一体となってメディアを席巻したMTVの興隆と無関係ではないだろう。

MTVがもたらした映像と音楽の一体感が映画音楽の在り方を変えた


当時ミュージックビデオの多くはハリウッドのスタッフによって制作されていた。以前からドラマ仕立てで演出に凝ったPV等も中にはあったが、MTVというメディアに登場するにはコンテンツとしての質が問われるようになった。アーティストたちがただ演奏するのを撮影するのではなく、屋外ロケを敢行したり、VFXを駆使したり、時として演奏家たちに演技を求めることまであった。するとスタジオの稼働率は上がり、音楽業界から映画業界に莫大なプロモーション予算が流入することになった。

さらに映画やテレビドラマでの主題歌タイアップともなれば、それの費用が制作予算として注ぎ込まれる。そしてそのさわり映像がMTVのコンテンツとして放送されることで、グローバルな宣伝活動も展開できる。音楽業界側にしてもキャスティングに労わることなくジェニファー・ビールス(フラッシュ・ダンス)やケビン・ベーコン(フット・ルース)等、映像映えのするキャストが躍動するコンテンツが制作できて訴求力はアップ。プロモーションの期待値は爆上がりである。



それまでのように映画製作者側が一流ミュージシャンに使用料を払って、楽曲提供を依頼するばかりでなく、時として先方からオファ―と資金が提供されることもあるのだから、まさに願ったりかなったり。これがMTVが取り持った縁であり、両者の協力関係も一段と距離を縮める結果となった。すると優れた音楽家が集結して大幅な質的向上が図られ、その楽曲と効果も話題性も同一線上で語られることとなる。いずれの観点から評価しようとも行き着く結果は変わらないという状況が生まれたのが、この1980年代の映画音楽の在り方というものなのだろう。その様相はかつてミュージカル映画全盛だった1960年代以前のそれとはまったく異質のものとなり、サントラとMTVが混然一体となってヒットチャートをにぎわせ続けた、産業構造の変化ともいえるまさに大変革だったのである。

新たに「映画・テレビ主題歌賞」を創設したグラミー賞


一方で、音楽賞のハイライトといえばグラミー賞の行方も注目される。こちらはちょうどゴールデングローブ賞とアカデミー賞(3月12日)の中間、2月6日に受賞式が開かれる予定だ。

昨今音楽ジャンルが多様化、細分化が進み、過去には表彰するカテゴリーが最大109まで増えたこともあるというが、現在は84に落ち着いている。グラミー賞はこういった人々の音楽の嗜好や流行をつぶさに観察し、常にカテゴリーを見直し続けているのがひとつの特徴となっている。先に述べた映像メディアとの融和が進んだことを看過できない状況と見定め1988年、主催団体は新たに「映画・テレビ主題歌賞」(現・映像メディア歌曲賞)を創設した。

ただし先の2つの賞と異なるのは、映画の挿入曲は公開された時期から対象年度に組み入れられるが、グラミー賞では多くは公開後となるシングルセールスの成績が考査の対象となるため、リリース時期によっては選考対象となる年度が翌年以降にで変わる場合がある。

ゴールデングローブ賞では1988年に映画「バスター」からトゥーハーツ(フィル・コリンズ)、同「ワーキングガール」からレット・ザ・リヴァー・ラン(カーリー・サイモン)の2曲が同時に選ばれているのだが、グラミー賞では前者が公開翌年の1989年、後者がさらに翌年の1990年に最優秀賞を受賞している。そういう意味ではグラミー賞も主催団体であるレコーディングアカデミー、つまり音楽出版の関連団体が主催しているため、やはり業界事情が大きく左右しているというわけだ。

そしていよいよ迎えた2023年。ゴールデングローブ賞で歌曲賞にノミネートされているレディ・ガガ「ホールド・マイ・ハート」は、2019年の「シャロウ」(アリー / スター誕生)に引き続き、グラミー賞、アカデミー賞の3冠獲得に向けスタートを切ることができるのか。はてまた作品賞の行方は「トップガン・マーヴェリック」が先行逃げ切りを図るか、「アバター / ザ・ウェイ・オブウォーター」が巻き返して日本の興行成績に追い風を吹かせることが出来るのか、注目しながら各賞の行方を見守ってみたい。

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2023.01.11
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カタリベ
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