2022年 5月17日

ももいろクローバーZのアルバム総ざらい!ついに最新作「祝典」がリリース!

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photo:KING RECORD  

ももいろクローバーZ、CDリリースが少ない理由とは


ももいろクローバーZ(以下ももクロ)は、結成14周年にあたる5月17日に6枚目のオリジナルアルバム『祝典』をリリースした。

オリジナルアルバム以外にも、ベストアルバム、コンピレーションアルバムをリリースしてはいるけれど、それでもやっと6枚目のアルバムというのはかなり少ない気がして、アイドルグループのCDリリース数を数えてみた。

モーニング娘。:1998年~
(オリジナルアルバム 16枚 / シングル70枚)
AKB48:2011年~
(オリジナルアルバム 6枚 / シングル 60枚)
乃木坂46:2015年~
(オリジナルアルバム 4枚 / シングル 29枚)
ももクロ:2009年~
(オリジナルアルバム 5枚 / シングル 23枚)
※インディーズ時代も含む。配信限定を除く

どのグループもアルバムはあまり多くなくシングル中心だが、これはアイドルの多くが音源と握手会などの接触イベントを連動させるビジネスモデルを持ち、その軸にシングルリリースを置いてきた結果ではないかと思う。

しかし、コロナ禍によって接触イベントが困難になったこと、さらに配信でのリリースが増えるなどの理由から、ここに来てどのグループもCDリリースのペースは鈍化しているようだ。

アルバムリリースのペースはそれほど差は無いけれど、ももクロはシングルの数が他のアイドルグループよりも圧倒的に少ない。これは、かなり早い段階(2012年)から接触イベントをやめており、制作サイドもリリースローテーションを定めず、楽曲の良さを最優先する楽曲主義のスタンスをもっていることが大きいのだと思う。

上質なポップアルバムだったファースト、プログレッシブなコンセプトアルバムだったセカンド




ももクロの楽曲主義はアルバム制作によりはっきりと示されている。

ファーストアルバム『バトル アンド ロマンス』(2011年7月27日発売)にはメジャーデビュー後のシングル曲「行くぜっ! 怪盗少女」「ピンキージョーンズ」「ミライボウル」をはじめ13曲が収められている。このうち前山田健一が5曲を手掛けていたこともあり、ももクロ=前山田というイメージも持たれていたが、実際はバラエティ豊かな楽曲がバランスよく配置されたポジティブなメッセージを持つ上質なポップアルバムだ。

『バトル アンド ロマンス』は、2012年度の「CDショップ大賞」を受賞しているが、通常盤のアルバムジャケットがビートルズのアルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』のオマージュになっていることにも、上質なポップスを作ろうという志が感じられた。



『バトル アンド ロマンス』がどちらかと言えばバラエティアルバムだったのに対して、セカンドアルバム『5TH DIMENSION』(2013年4月10日発売)はプログレッシブなコンセプトアルバムだ。衝撃的だったのが1曲目の「Neo STARGATE」だ。イントロにいきなりカール・オルフのカンタータ『カルミナ・プラーナ』の「おお、運命の女神よ」の荘厳な合唱が2分半近く流れるのだ。その後にEDM(エレクトロニクス・ダンス・ミュージック)サウンドが展開する「Neo STARGATE」はプログレッシブな構成をもつ約8分20秒の大曲だ。

さらにラップ、ラテン、R&Rなど、幅広いサウンドアプローチをもった楽曲が、スケールの大きなドラマチックなストーリーを描くように並ぶ『5TH DIMENSION』は、まさにアルバム全体で大きなメッセージを伝える作品となっていた。

このアルバム発表直前の3月12~31日にももクロは『5TH DIMENSION』と題するライブツアーを行った。ステージではまだ発売されていないアルバム曲が1曲目から順番に演奏され、MCは一切無く曲間はコンテンポラリーダンスで繋がれる。しかもメンバーはマスクで顔を隠してパフォーマンスするという大胆な演出でファンを驚かせた。

当時 “アイドルが顔を出さないとは、とんでもない” という否定的意見もあったが、それは自分たちの音楽のアプローチを見てほしいという意思表示だったのだと思う。事実、“こんなのはももクロではない” と離れたファンもいたが、このアルバムでももクロに興味を持ったという音楽ファンも少なくない。

起きてみる夢、寝てみる夢、壮大な世界観を描いた2枚のアルバム




ももクロの大胆なアルバム・アプローチはその後も続き、3年後の2016年2月17日、サードアルバム『AMARANTHUS』と4thアルバム『白金の夜明け』が同時にリリースされた。

AMARANTHUS(アマランサス)とは古代アステカ人が主食にした植物で、生命力の象徴でもある。このアルバムは “起きて見る夢” をテーマに、人の誕生から死までを描くトータルアルバム、『白金の夜明け』は “寝て見る夢” をテーマにファンタジックな世界観を描くアルバムだった。そして、この2枚のアルバムはそれぞれプロローグとエピローグでつながって循環するように構成され、トータルで壮大な世界観を描く作品となっていた。



こうしたコンセプチュアルなアプローチを経て、ももクロ結成11周年となる2019年5月17日に5thアルバム『MOMOIRO CLOVER Z』(2018年8月から5か月連続で配信された楽曲など全13曲+ボーナス曲「ももクロの令和ニッポン万歳!」)が発表された。1曲目の「ロードショー」では2 Unlimitedの世界的ヒット曲「Twilight Zone」(1992年)のフレーズがサンプリングされ、彼女たちにとって初めての洋楽カバー曲となるレンカの2008年のヒット曲「The Show」(2008年)も収められている。

このアルバムは、メンバーの脱退により2018年初頭から4人体制になった彼女たちが、“歌と踊りで笑顔を届ける” という自分たちの存在理由と進むべき道を改めて確認する作品であり、だからこその『MOMOIRO CLOVER Z』というセルフタイトルを打ち出したのだ。僕はこのアルバムを聴いてそう感じた。

『MOMOIRO CLOVER Z』は、若さとひたむきさで走り続けてきたももクロが、大人の佇まいを見せるようになったことを強く感じさせるアルバムだった。全員が20代半ばとなり、繊細な感情の綾も表現できるパフォーマーへと成長していた。

困難な時代だからこそ届けたいポジティブな自己肯定的ビジョン


そんな “大人のももクロ” がさらに先に進んだ姿を見せたのが、最新アルバム『祝典』だ。収録曲は17曲(うち3曲は短めのインストゥルメンタル曲)だが、「stay gold」(2019年)「月色 Chainon」(2021年)などすでに音源がリリースされている楽曲と新曲が見事にシンクロしてトータルな世界をつくりあげている。

これまでのアルバムでもそうだが、収録されている楽曲は、非常にバラエティに富んだ音楽性をもっているが、だからといって散漫ではない。逆に、これだけ幅広い音楽性がありながら作品全体がひとつのテーマに集約していく求心力を感じるのだ。

全体のテーマとして設定されているのは“祝いの儀式”。そこには、コロナ禍という困難な時代だからこそ、で、ポジティブな自己肯定的ビジョンを届けたいという想いも込められているように思う。

それぞれの収録曲に触れていくとキリがないので、リード曲になっている「MYSTERION」と「ショービズ」を取り上げてみたい。

「MYSTERION」と「ショービズ」に感じる、ももクロの強い意志


MYSTERION(ミステリオン)とは密儀、秘儀という意味の宗教用語だ。きわめて複雑に構築された無国籍イメージのサウンドに乗せて歌われるのは、閉塞した現状を打破して自由へと向かうための秘儀についてだ。しかし歌詞はは夢を語るだけでなく、本気で自由を求めるならば “けもの道” に踏み込むことを覚悟しなければならないことにも触れていく。神秘的でありながら、きわめてリアリティ溢れるメッセージソングなのだ。曲中にいきなり「通りゃんせ」のふっとメロディが入り込んでくるのも印象的だ。

「MYSTERION」とは逆に「ショービズ」はさわやかなシティポップスを思わせる軽快なアップテンポナンバー。しかし、そこで歌われるのはステージに立つパフォーマーとしての覚悟、そしてファンに対する想い。これまた、彼女達のリアルな想いが強く感じられる曲なのだ。

この他の曲からも、今に埋没するのではなく、次のページを切り拓いていこうとする強い意志が伝わってくる。だから、アルバムを通してプラスのエネルギーが聴き手に注入されていく。そんなアルバムなのだ。

収録楽曲それぞれのクオリティの高さも印象的だ。楽曲としての上質さ、演奏、録音の良さ。そしてなによりも『MOMOIRO CLOVER Z』より一段と表現力を増したもも4人のヴォーカルが、それぞれの楽曲を非常に説得力あるものにしている。

一貫したアルバムへのこだわり


楽曲全体でトータルなメッセージが伝わるように曲順も熟考されている。曲順を無視して勝手に聴くことができるサブスクの時代でも、ももクロは一貫してコンセプトアルバムにこだわり続けている。そこも彼女たちを推せる理由のひとつだ。

その意味で注目すべきなのが、1曲目、9曲目、17曲目に置かれている「Opening Ceremony -阿-」「Intermission -闍-」「Closing Session -梨-」と題されたインスト曲。この3曲をつなぐと「阿闍梨(徳の高い僧)」となるのもおもしろいが、重要なのが、このインスト曲によって、アルバムは二つのパートに分かれていること。これらのインスト曲が、アナログ盤のA面とB面の間のブレイクの役割を果たしているのだ。

『祝典』は、今や顧みられることも少なくなっている “クリエイティブなメディアとしてのアルバム” の価値観が、この時代でもけっして有効性を失っていないことを示すとともに、その普遍的価値を未来へ継承する意味を問うアルバムでもあると思う。

必聴! ももクロが歌う「また逢う日まで」


普遍的価値の継承という意味では、16曲目に収められている「また逢う日まで」も特筆すべきだろう。尾崎紀世彦の絶対的名唱で知られるこの曲が収められると知った時、果たしてももクロが料理できるだろうかと不安だった。しかし、それは杞憂だった。

原曲のイメージを壊さずにセンス良くアレンジされたサウンドに乗せて、無理にシャウトするのではなく、きわめてナチュラルな唱法で伸びやかに歌い継いでゆく。そして、キメのサビでは定評ある美しいユニゾンで情感を込めて盛り上げていく。この曲を “ナツメロ” としてではなく、自分たちの歌として生き生きと表現した素晴らしいテイクだった。

ももクロは、これまでも自分たちの過去曲に、ライブによって時を超える生命力を与えてきた。この「また逢う日まで」を聴いて、彼女たちが、それと同じことを自分たちが生まれる前の曲にも出来る表現力を身に付けたことに、僕は正直感動している。

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カタリベ
1948年生まれ
前田祥丈
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