共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.54 Danger Zone / Kenny Loggins ケニー・ロギンスは産業ロックなのか?
70年代から(アーティストによっては60年代から)地道な活動をしていて、突然80年代に大きなコマーシャルラインに乗っかって、キャリア上のピークに達してしまったシンガー、グループが結構存在している。
その多くのパターンが “産業ロック” 系アーティストで、最たる例はスターシップ(ジェファーソン・エアプレイン~ジェファーソン・スターシップ)だろうか。ハート、ジャーニー、ジェネシス等も、かなり目立った例として挙げられるが、70年代からいくつかのヒットソングを輩出していた男性シンガーソングライター、ケニー・ロギンスも該当アーティストのひとりと言えよう。
多彩な才能! フォークロックからAORの名曲まで
ケニー・ロギンスの70年代前半はフォークロックデュオ、ロギンス&メッシーナ。1973年に全米4位となった「ママはダンスを踊らない(Your Mama Don’t Dance)」が最大ヒット。70年代後半以降はソロのシンガーソングライターとして、好事家の間で人気が高かった。
スティーヴィー・ニックス(フリートウッド・マック)とのデュエット「二人の誓い(Whenever I Call You "Friend")」(1978年5位)や「明日に向って(This Is It)」(1980年11位)といった、日本での一般的認知度は低いかもしれないが、AOR ブームの火付け役となった名作ヒットソングを残している。また、ドゥービー・ブラザーズ2曲目の全米ナンバーワン曲「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」(1979年1位)をマイケル・マクドナルドと共作している。
サントラからメガヒット「フットルース」と「デンジャー・ゾーン」
そして、ケニーにとって人生のピークともいえるメガヒットとなったのが、映画『フットルース』の主題歌「フットルース」(1984年1位)と、80年代52番目に誕生したナンバー2ソング「デンジャー・ゾーン」(1986年7月2位)だった。
80年代洋楽ヒットの代表的楽曲であると同時に、「フラッシュダンス~ホワット・ア・フィーリング」と共に80年代 “サントラブーム” の代表的作品でもある「フットルース」、おそらく共有感は100%に近いだろう。その「フットルース」に匹敵し、さらにブームに拍車をかけたのが映画『トップガン』のテーマソング「デンジャー・ゾーン」。推定共有感80%という高さを誇る作品だ。
これが本人の本意だったかどうかは推測の域を脱しないものの、奇しくもケニー・ロギンスの最大ヒット2曲は、80年代サントラブームの中心的存在だった大ヒット映画2作から生まれた作品だったのだ。これはもうケニーとしては、ケヴィン・ベーコンとトム・クルーズには足を向けて寝られないわけだが、今となっては逆に足を向けて寝ちゃっているのかな、なんて考えたりするのも一興。「デンジャー・ゾーン」が、男闘呼組「TIME ZONE」のひな形だったなんて、そりゃあもうどうでもいいレベルなのかもね。
いずれにしろ「フットルース」と「デンジャー・ゾーン」は、派手で、バブリーで、ゴージャスで、MTV 的で、実に典型的な “80年代メガヒット” だった。
※ KARL南澤の連載「共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味」
ジャンル、洋邦、老若男女を問わないヒットソングにある ‟共有感”。米ビルボードのチャートがほぼそのまま日本における洋楽ヒットだった80年代。ナンバーワンヒットにも負けず劣らずの魅力と共有感が満載の時代に生まれたビルボードHOT100 2位ソングを紐解く大好評連載。
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etc…
※2018年7月21日に掲載された記事をアップデート
2020.07.26