1月28日

U2 初の全米ナンバーワン、真冬の恋心に響く切ないラブソングとは?

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U2 初のナンバーワンソング「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」


「そろそろU2、来日するんじゃないの?」
―― 寒くなってくると自分の中のロッキンDNAが、そう語りかけてくる。単にU2の来日公演を11、12月にしか見たことがなく、そのイメージがこびりついているせいだが、実際、彼らはこの時期によく来ている。記憶に新しい2019年の『ヨシュア・トゥリー・ツアー』での来日公演も、自分は行かなかったが、12月だった。

そう、出会った頃から、U2には冬に向かうイメージがあった。雪原で演奏していた「ニュー・イヤーズ・デイ」のMVに秋田の田舎者がグッとこないワケがない。ライヴ・アルバム『ブラッド・レッド・スカイ=四騎=(Under a Blood Red Sky)』の国内盤は冬にリリースされ、即買いに行った。翌年のアルバム『焔(The Unforgettable Fire)』も国内盤は晩秋に出た。とにかく、U2は寒いロックバンドだった… などというと誤解を招きかねないが、とにかく冷気が似合う。

なので、1987年の新曲「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」が春にリリースされたのは少々意外だった。「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」がU2にとって初めての全英&全米チャート、ナンバーワンソングに上り詰め、彼らの代表曲となったのはご存知のとおり。

ラブソングながら、いかにもブライアン・イーノ的サウンド


しかし、だ。この曲も、やっぱり寒々しかった。いかにもブライアン・イーノのプロデュースらしい、ミニマルなキーボード。そのリフから始まる静謐なイントロに冷気を感じない人がいるだろうか? 歌詞もしかり。“君がいてもいなくても、僕は生きていけない”…… てか、じゃあ、どうすればいいんですか!? 吹雪の中で、雪山で迷ってしまったときのような、どん詰まり。もはや死ぬしかない絶望的な風景が、そこに広がっていた。

いや、これがとてつもなく切ないラブソングであることは理解している。実際、この曲が出た頃につきあっていた女子との関係にそれを痛感した。ずっと一緒にいると息が詰まる。でも、離れるととてつもなく寂しい。結果、別れたりくっついたりを繰り返していた、そんな二十歳の恋愛事情にシンクロする曲だった。一緒でも一緒じゃなくても生きていけない…… そして心の北風はぴゅーぴゅーと吹き込んでくる。

ボノによれば、この詞は享楽的なロックンロールライフと、普通の家族生活の狭間で悩んでいたときに生まれたとのこと。なるほど、前者は魅力的だが命を縮めるし、後者は安定しているが退屈ととれなくもない。

しかし、作者の動機がどうあれ、この曲は世界中の北風が吹きすさぶ恋心に響いたからこそ、とてつもないヒットを飛ばしたワケで、ラブソングとしては疑うことなく強力なパワーを持っていた。映画の世界への影響を見ても明らかだ。

たとえば、U2のドキュメンタリー映画『U2 / 魂の叫び』を撮ったフィル・ジョアノー監督は、その後この曲を反映したかのようなラブストーリー『ウィズアウト・ユー(Entropy)』を撮り、U2のメンバーを出演させてもいる。また、イギリスの名匠マイケル・ウィンターボトム監督は曲に発想を得て『いつまでも二人で(With or without You)』という、そのものズバリの、やはり切ない恋愛映画を放っている。

長い冬もいつかは終わる… ライブバージョンには新しい歌詞が!


『U2 / 魂の叫び』が日本公開されたのも真冬の寒い日だった。初日に観に行ったが、本作に収められた「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」のライブバージョンには、レコーディングバージョンにはない歌詞が加えられていた。

 We'll shine like stars in the summer night
 夏の夜の星のように、僕らは輝く

そんな歌詞のせいだろうか。映画館を出たとき冷気は気にならなかった。ちょっとだけ暖かい気分になったのを覚えている。長い冬もいつかは終わる。そして歌も成長するのだなあ…… などと考えたものだ。

聴き手である我々も、成長する生き物だ。“あなたがいても、いなくても、私は生きていけない” という言葉は、あのとき確かに自分の気持ちを代弁していた。でも、今はそう言われてしまった相手の気持ちを想像する程度には大人になった。もし誰かにそう言われたら、“じゃあ、心中でもしますか” という冗談くらいは用意している。

冬も間近。おそらく… というか絶対に今年のU2来日公演はないだろう。できるのは、U2のレコを聴いてロッキンDNAを活性化させること。コレでウイルスが活発化する季節を乗り切ろうと思う。



2020.10.24
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  YouTube / U2
 

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カタリベ
1966年生まれ
ソウママナブ
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