という一節で始まるデペッシュ・モードの「パーソナル・ジーザス」は、それに続く「君だけの神様(your own personal Jesus)」というリリックだけ目にすると、それなりに信仰深い曲に思える。しかし作詞・作曲者のマーティン・ゴアによれば、この曲はプリシラ・プレスリーが亡夫エルヴィスとの関係を綴った『私のエルヴィス』(新潮文庫)が着想源で、曰く「これは誰かにとってのイエス、つまり希望を与え、面倒をみてやる何者かになるということに関する曲だ」とのこと。
Depeche Modeを聴き出したのは1993年からと、1983年頃からUKポストパンク・ニューウェイヴを聴き始めていた自分にとっては大変出遅れてしまった感があるのですが、なぜか買ったばかりのビデオデッキでSONY MUSIC TVで採り上げられていたDepeche ModeのMV特集を「これは将来好きになるかもしれない」と録画してとっておいた(当時の最新シングル曲は”Never Let Me Down Again”)ことは結果的に大正解で、特に彼らが1990年代にリリースしたアルバム(”Violator””Song Of Faith And Devotion””Ultra”)はどれも文句のつけようのない傑作揃いと感じています。救いようのない暗さと絶望感、そして妖艶さは群を抜いています。ロックへのアプローチやFloodによるプロダクションも非の打ちどころがありません。ティム・シムノンによる”Ultra”も勿論最高!中学・高校とプロテスタント主義の学校に通い、毎朝礼拝で讃美歌を歌い聖書をめくっていた自分にとって、彼らの楽曲の歌詞の世界観はすんなり入ってくるものでした。この感覚、能天気な多神教の価値観しか持ち合わせていない日本の曲の歌詞しか聞かない連中には解らないんだろうなぁ。