1月21日

名盤「Private File」松本伊代がどれだけ歌手として素晴らしいか教えてあげたい

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松本伊代「Private File」で実感してほしい! 歌手としての高いクオリティ


松本伊代が歌手というよりはタレントとして活動してからもう結構な年月が経つが、41年前にリリースされた「センチメンタル・ジャーニー」という曲は、当時アイドルを応援していたドンピシャの世代だけではなく、結構幅広い世代に認知されている。

「伊代はまだ16だから」という自己PR(笑)を盛り込んだ歌詞のインパクトや、ご主人であるヒロミがテレビなどでネタにしたりされたりしていることも大きいとは思うのだが、やはりキャッチーなメロディとあの独特の声は一度聴くとなかなか離れなくなる、そんな中毒性を持っていると思う。ご本人は自分の声が好きではなかったようだが(笑)。

しかし、やはり大半の人には「センチメンタル・ジャーニーの人」「永遠に16だからって言ってる人」、もしくはテレビでの天然とも言えるキャラクターのイメージしかないのだろう。

もったいない。実にもったいない。

松本伊代がどれだけ歌手として素晴らしいか、そしてどれだけクオリティの高い作品をリリースしていたのか教えてあげたい。

ということで、私がオススメする松本伊代とっておきの一枚を紹介する。6月29日に、ビクターから『フィーメル・シティポップ名作選』と題して、シティポップ作品10タイトルがリイシューされたのだが、その10作品のひとつとして選ばれたアルバム『Private File』である。

シティポップサウンドに乗せて歌った“等身大の女性”


1989年にリリースされた『Private File』は、いわゆるシティポップサウンドに載せて、アイドルにありがちだったファンタジーな世界でも、ラブロマンスでもなく、短大を卒業してOLとして働いているような、そんな女性たちを等身大で表現している作品で構成されている。80年代アイドル好きの間では、このアルバムを名盤だと言う方も多い。

タイトルチューンとも言える1曲目「Private fileは開けたままで…」は西脇 辰弥による作品。軽快なリズムに乗って歌われるのは、ストレスフルな通勤ラッシュやオフィスで鬱々としている日常から解放された休日に、ひとり気ままにドライブをすることで解き放たれていく女性の心情。ハイウェイを走り抜けていくような疾走感も心地よい。

2曲目「土曜日のparty」も軽快なシャッフルナンバー。作曲はKAN。ちなみに「愛は勝つ」が大ヒットしたのは2年後の1991年。恥ずかしながら私は当時まだKANの存在を知らず、「KANって誰?」と思っていた。そんな時期にKANを起用するとは、メロディ・メーカーとしての才能を既に見抜いていたということなのだろう。伊代プロジェクト恐るべし、である。

3曲目「短大終わると短い大人の夢を見る」(タイトルが秀逸)の作曲はREIMY(麗美)。松任谷正隆・由実夫妻の強力なバックアップで1983年にデビューした彼女だが、この頃には松任谷夫妻の手を離れ、独自の音楽性に突き進んでいた頃である。大学生の彼氏より先に就職した短大卒の彼女が主人公。「遊びの計画だけ話す彼を見下ろしてた」というフレーズに、数々のギャップに悩んでいた姿が見える。当時はこんなカップル多かったのだろうか。

5曲目「有給休暇」の作曲は小西康陽。とわざわざ言わなくても、イントロからもろにピチカート・ファイヴサウンドなのですぐわかる。私はピチカートの存在も知らなかったので「変わった曲…でもシャレオツ」という印象を持っていた。音を取るのがなかなか難しい展開のメロディで、歌うのは大変だったのかもしれないが、伊代の独特の声にとても合っている。

6曲目「ソナチネ」は大江千里が作詞・作曲を手掛けた、シングルとしてもリリースされている作品。大江千里らしい、上品なメロディで構成されたバラード。クリスマス・ソングといえばハッピーエンドが常だが、この曲は違う。クリスマス一色の街中で別れてしまった彼と偶然再会してしまうのだ。しかし、寂しさや辛さに絶望するわけではなく、彼との日々で辛かったことも「笑って話せるほど強くなりたい」と、希望が見える内容になっているところに救われる。「あの日ひいてた風邪は治ったの」と問いかける歌詞もリアリティが感じられて、この主人公を応援したくなる。ちなみにアルバム・バージョンは街の雑踏の音から始まり、この曲の情景が一層リアルなものに感じられる。

スタジオミュージシャンならではの高い普遍性


他にも崎谷 健次郎、井上 ヨシマサといったメロディ・メーカーが作品を提供している。曲調はバラエティに富んでいるけれど、アルバムとしてのトータリティーが見事に保たれている。演奏は日本の音楽界で活躍する一流のスタジオミュージシャンが携わっており、今聴いても音は全く色褪せていない。

そして、楽曲自体のクオリティだけではなく、伊代のヴォーカリストとしての才能をぜひ高く評価していただきたい。感傷的な切ない歌詞を表現するのに、あの独特の声が実にマッチしているのだ。作曲家・筒美京平が彼女の声を「はっきり言って美声ではないが、実にユニークな響きのある声」だと評していたのも頷ける。

ところで、もう1枚オススメしたいアルバムがあるのだが、そのアルバム『風のように』は、私が以前書いたコラム『非常にクオリティの高い “80年代女性アイドルのアルバム” ランキング10』で紹介しているので、そちらをお読みいただけると嬉しい。

今年の10月には、ビルボードライブ大阪・横浜で編曲家・船山基紀プロデュースによる40周年記念公演が決定したとのこと。公演タイトルの『松本伊代 40th Anniversary Live “トレジャー・ヴォイス”』にもあるように、あの声はまさにトレジャー(宝物)。そんな魅力をぜひこのアルバムで堪能していただけると嬉しい。

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2022.07.19
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カタリベ
1966年生まれ
不自然なししゃも
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