6月21日

僕が選んだ筋肉少女帯、モーレツア太郎が教祖様ブームを打つ!

24
1
 
 この日何の日? 
筋肉少女帯「モーレツア太郎」の収録されたアルバム『仏陀L』がリリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 1988年のコラム 
リア充なんてクソ食らえ!? レコオタ道へと続いていた “愛の家”

チェコアニメの巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエルが唯一撮ったミュージックビデオ

パティ・スミスの「People Have the Power」音楽が政治的で何が悪い

今井美樹「9月半島」観音崎の空と海が教えてくれた “がんばらない生きかた”

アイドル、ロック、アニソンまで!作詞家・森雪之丞の傑作10選ランキング

男心を惑わせる、ストリート・スライダーズの危ない魅力

もっとみる≫



photo:TOY’S FACTORY  

僕はジャンルを問わず何でも聴くのですが、逆に苦手なのは何かと考えると――

恐ろしく分かりやすい歌詞(気恥ずかしい)、どっかにありそうなメロディ(既にあるものならいらないのでは?)、あまりにもファンが多いアーティスト(同じ趣味の人がそんなにいなくてもいい)あたりかと。

何か決めているわけではないんですが、どれかに当てはまると、アンテナに引っかからないようです。

ところで本サイト Re:minder でも取りあげられている尾崎豊の歌といえば、詩が無骨でストレート、音はシンプルなロック。その組み合わせがあまりに自然で80年代の高校生以上なら誰でも聴いていました。

それで高校中退が増えたとか、校舎の窓ガラスが軒並み割られたとか、そんなことはありませんでしたが、学歴社会の息苦しさに対して「自由になりたくないかい」と語りかけ(Scrambling Rock'n' Roll)、支配からの「卒業」を歌う尾崎さんに多くの人が共感を覚えたのは確かです。

同じ頃、僕は筋肉少女帯を選んでいました。当時は大槻さんが客席に語りかけて応答を楽しむという、小さい会場ならではのMCスタイルだったのですが、猫も杓子もラフィンノーズの時代に「げっと、げっと、げっとざぐろ〜りー」と連呼していました。

けなすのでも妬むのでもなく、ちょっと拗ねた子供が憎まれ口を叩くような斜に構えた感じです。そういえばメジャーデビューアルバムの『仏陀L』のジャケットも YMO のパロディのようですし。

そんな悪意のない、ちゃかすような姿勢がストレートに歌詞にでたのが「モーレツア太郎」でした。


 モーレツア太郎
 啓蒙してくれよ

 狂えばカリスマか!?(脱いだら天才か)*
 吠えれば天才か!?(ゲロ吐きゃ天才か)
 死んだら神様か!?(狂えば仏か)
 何もしなけりゃ生き仏か!?


*ライブでは時々、( )内のように歌詞を変えて歌うことがありました。


 そんなロックで
 子供が踊るよ
 モーレツア太郎
 ひとつものを教えてあげて下さい


当時聴いた人なら、間違いなく尾崎さんを思い浮かべたことでしょう。

この頃、尾崎さんは「教祖様」への重圧から一時停滞していました。高校、学歴といった制度への反抗から離れてしまえば、もう歌うテーマがなくなったなんて噂も流れていました。

そんな口さがない噂を裏付ける歌詞にも読めてしまうのですが、当時の筋少のスタイルを知っている人なら、尾崎さんに対する皮肉とは受け取らなかったでしょうし、「そんなロックで」踊り狂うファンの方をちゃかしているのです(もちろん筋少で踊るファンも含めて…)。

その数年後に、尾崎さんは亡くなります。葬儀には数万人が参列し、尾崎さんが全裸で座り込んでいた庭は巡礼地になりました。そういえば、忌野清志郎が亡くなった時にも葬儀は大盛況でカリスマブームがおきました。

それにしても音楽の趣味とは難しいものです。「モーレツア太郎」で尾崎さんを想いだすと、僕は必ず「卒業」を取り出して美しいピアノのメロディとその晴々とした歌い方に耳を傾け思わず一緒に口ずさんでしまうのです。



歌詞引用:
モーレツア太郎 / 筋肉少女帯


※2016年6月22日に掲載された記事をアップデート

2018.06.21
24
  YouTube / SilentFace007


  YouTube / Magnata
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1970年生まれ
ジャン・タリメー
コラムリスト≫
73
1
9
8
5
尾崎豊の迷走と「壊れた扉から」早熟の天才は10代で燃え尽きたのだろうか?
カタリベ / 指南役
54
2
0
2
3
いつだって現在進行形【バンドやろうぜ ROCK FESTIVAL】音楽への憧れを呼び起こせ!
カタリベ / 本田 隆
52
1
9
8
6
80年代の東京インディーズ事情、上條淳士の「TO-Y」と北村昌士の「YBO²」
カタリベ / ジャン・タリメー
27
1
9
8
5
これぞ「ザ・エイティーズ」1984年から1986年はテッパンの3年間!
カタリベ / 太田 秀樹
67
1
9
8
8
いつから僕は忌野清志郎をリスペクトするようになったのだろう?
カタリベ / 宮井 章裕
38
1
9
8
8
水戸華之介が覗いていたもの、アンジー「天井裏から愛を込めて」
カタリベ / 上村 彰子