2月14日

忌野清志郎+坂本龍一「ルージュマジック」を支えた80年代広告界のレジェンドたち

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忌野清志郎+坂本龍一のシングル「い・け・な・いルージュマジック」がリリースされた日
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テクノ歌謡ではなくグラムロック!? 「い・け・な・いルージュマジック」


坂本龍一と忌野清志郎の最初にして最後のコラボ曲「い・け・な・いルージュマジック」は、1982年春の資生堂キャンペーンソングにもなり、オリコン1位を記録する大ヒットになった(ちなみに資生堂は今年で創立150周年、このシングルはリリース40周年だ)。

当時最先端のテクノを導入したあのYMOの坂本作曲というのもあって、「テクノ歌謡」というジャンルに分類されている。実際、1999年にP-VINEからリリースされた『テクノ歌謡 ポリドール篇 ハートブレイク太陽族』というコンピ盤に、「い・け・な・いルージュマジック」とそのシングルB面「明・る・い・ね」が入っている。

なので「テクノポップ」とか「テクノ歌謡」くらいの雑駁な脳内カテゴリーにこの曲を整理していた僕は、2009年のTBSラジオの忌野追悼特番「坂本龍一が語る忌野清志郎」での、坂本の発言に驚かされた。この曲には元ネタがあって、それはグラムロックの雄T-REXだというのだ。そのキーボードの浮遊感あるサウンドに気を取られがちだが、ドラムとベースはかなりシンプルなロックンロール(※ちなみにドラムは教授が叩いてる)で、サビの「oh baby, oh baby, いけないルージュマジック」のリフレインはマーク・ボランが歌っても違和感ないデカダンスとナンセンスに満ちている。

アート・ディレクター井上嗣也がもたらしたギャルソン感覚


とはいえグラムロックを意識した曲内容よりも、ペアルックのような二人の過剰なファッションこそがグラムなのだ(生放送でディープキスした伝説も、デヴィッド・ボウイとミック・ロンソンの関係みたいでグラムっぽい)。TV出演映像を見ると、毛布のように厚手でゆったりとした着物(和風ながらコートとも呼べそうな)モスグリーンの上着をまとい、下半身は左右色違いのスパッツ(黒柳徹子は「ザ・トップテン」でそう言っていたがゲートルに見える)でタイトに締めている。足元は忌野のほうは足袋のようなものを履き、坂本のほうはグラムロック定番のヒールブーツを履いている。

しかしこのゴテゴテしたファッションも、よく観察すると、80年代に花開いたデザイナーズブランド的なシルエットの洗練やレイヤード感がある(気がする)。調べてみるとこのシングル全体のアートディレクションを担当したのがYMOとの仕事で知られる井上嗣也で、のちにコム・デ・ギャルソンの広告、同ブランドから刊行された伝説の雑誌『six』を手掛けた人なのだ! 二人のファッションに見られるボロっちさとエッジさの妙な融合は、この井上氏のモードな美的感覚によるところが大きいのかもしれない。

80年代TVCM界の伝説、川崎徹


ところでこの曲のMVは、大量の一万円札(坂本によれば3000万円とのこと)をビルの屋上からバラ撒いたことであまりにも有名になったが、演出・撮影監督は川崎徹である。20代、30代の読者には馴染みがないかもしれないが、糸井重里などと並んで80年代広告ブームを作ったTVCMの名手で、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』にレギュラー出演もしてた人だ。

郷ひろみ&柄本明コンビで「ハエハエカカカ キンチョール」のフレーズを流行させたCM、素人演技の味わいで笑わせる関西電気保安協会の初期のCMなど、代表作には “伝説のCM” として今でも記憶されているものが多い。ナンセンスと日常が奇妙にまじりあった作風、と言えばよいか。

この川崎の広告手法をおもしろがった人に思想家の吉本隆明がいて、その特徴を「川崎徹小論」にこう評してる。

「川崎定式ともいうべき画像構成の仕方は、かならず不調和なアンバランスな登場人物のあいだの磁場に作られる。それはまずタレントの択び方できめられ、いちばん単純に人物は、おおくのばあい画面の正面にむいて、横に並ぶよう配置される」

―― なるほど、確かに「い・け・な・い」でも冒頭、着物の中に大量の紙幣を入れた二人が、横並びになって画面の正面を見つめている(銃で撃たれて棺桶に入っても二人は横並びで正面を向いている!)。川崎広告のよくある構図なのだ。そして川崎がこのMVを手掛けたと分ると、忌野と坂本がなぜ双子のようなペアルックなのかも説明がつきそうだ。というのも、この双子イメージは川崎の過去の “ある作品” を彷彿とさせるからである。

川崎徹の過去作品から炙り出す「い・け・な・い」の双子イメージ


1975年に放送された研ナオコのキンチョールのCMがそれだ。「蚊がトンデレラ」「蚊がシンデレラ」というナンセンスな台詞を、全く同じ白い服でベルトの色だけ異なる「二人の研ナオコ」が言うだけの内容ながら、この分身イメージが坂本と忌野のペアルックに無意識的に流れ込んでいる、と斜め読みすることもできる。

川崎徹と忌野の交流はこの後も続き、1985年に作られたRCサクセションの『Spade Ace』という映像作品でも企画・演出を担当している(2013年にDVD / Blu Rayとしてソフト化された)。この『Spade Ace』のなかにある「不思議」「Feel so Bad」「横浜ベイ」の3曲のクールで摩訶不思議なMV(特に最後のものは衝撃的!)を見れば、川崎のMV監督としての作家性が良く分かるのだが、それはまた別の機会があれば語ってみたい。

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2022.02.14
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カタリベ
1988年生まれ
後藤護
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