リア充かオタクかの二者択一を迫られたら、これは困る。リアルが充実するに越したことはないし、レコードオタクもヤメられない。欲張りになったのはトシのせい!? それはともかく、振り返ると若い頃は、どっちかに振れていた時期が長かったなあと思う。
大学3年の夏、当時つきあっていた彼女と別れた。バブルに向かってまっしぐらの時期で、景気がよいとされていたが、大学生は今も昔も金欠。バイトは必修科目だ。稼ぎのほとんどはデートに注ぎ込んでいたが、それが失恋で浮いた。今まで買えなかったレコードが買える! 失恋の痛手を乗り越えられたのは、そんなレコオタ特有の発想の転換のおかげ、ということにしておこう。
輸入盤屋めぐりの頻度が上がり、渋谷の宇田川町界隈に通い詰めた。この頃、ハマッたのがイギリスのインディレーベル、クリエイションのバンド。後にプライマル・スクリームやオアシスでひと山当てるレーベルだが、当時はまだ知る人知るといった程度で、チャートを賑わすような存在ではない。
それでもウェザー・プロフェッツ、ビフ・バン・パウ、ジャスミン・ミンクスなどのギターポップサウンドは、ザ・スミスの解散によって心にポッカリ穴が開いていたUKインディーズファンにはたまらないものがあった。
中でも、刺さったのがハウス・オブ・ラヴ。「クリスティーヌ」の12インチシングルを手にしたとき、正面からガンを飛ばしてる、いかつい男の顔面をアップでとらえたモノクロのジャケットにビビッときてゲットしたが、これが大当たり。
ギターのアレンジは美しく、狂暴でもあり、ギターポップだが、どこか暗い影がある。何より、最後まで聴くと高揚する。大好きになり、それ以前の2枚のシングルもゲットした。
メロディも耳になじみ、歌詞を知るとなおさらグッとくる。この手のバンドには珍しく詩的なラブソングが多かった。デビュー曲「シャイン・オン」は後にメジャーのフォンタナに移籍後、再レコーディングされてバンド最大のヒットなったが、個人的にはクリエイションのバージョンが断然好きだ。
さまざまな解釈ができる内容だが、それでもサビの部分の “she, she, she shine on” を耳にすると、ふとリア充の方がこの詞はシミるのでは… などと思ったりした(注:言うまでもなく、この頃は「リア充」という単語は存在しません)。
… が、後悔しても、あとの祭り。すっかりレコ屋(&CD屋)通いがシミついたレコオタは、どんどん深みにハマり、その後しばらく “彼女いない歴” を積み重ねることになる。
2017.08.10
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