ふられた気持(You’ve lost that loving feelin’) ご存知でしょう? いわゆる往年の名曲です。何度もカヴァーされていますが、私はそれぞれ異なるミュージシャンが演奏する3枚のレコードを所有しています。 洋楽を聞き始めた80年代の或る時期、私は「マンイーター」で初めて知ったダリル・ホール&ジョン・オーツに一生を捧げるぐらいの勢いでアルバムを買い漁りました。 そのタイミングで新曲2曲を含むベスト盤『フロム・A・トゥ・ONE(Rock'n Soul Part1)』が出たものですから、いよいよ熱が高まります。盤中唯一ライヴ・ヴァージョンで収録された「ウェイト・フォー・ミー」の歌詞(“Love is what it does And ours is doing nothing 〜” あたり)の切々とした訴えかけを口ずさむのが当時の日課でした。 時はくだり1987年。 夢の共演として、ホール&オーツと桑田佳祐の共演ヴィデオがコカ・コーラの非売品として配られました。高校生だった私は、それこそもう毎日何通も応募の葉書を書いたものです―― 偶然とは奇なもの。彼らに夢中だった頃に聴いたアルバム『モダン・ヴォイス(Voices)』に、この「ふられた気持」が入っていたのです。 この曲に魅かれた私は間もなく、原曲が収録された『ザ・ライチャス・ブラザーズ・ベスト4』というEP盤を見つけました。確か荻窪の月光社だったと思います。 配信によってピンポイントで曲を探すのが主流の昨今、レコードに針を下ろすなんて動作は想像しにくいかもしれません。もしそんなアナログな方がいれば、「アンチェインド・メロディ」に針を下ろして、“あぁ、このグループかぁ” と懐かしくも気恥ずかしくも感じることでしょう。 閑話休題—— 奇しくも偶然は重なります。同じ頃に大ヒットした『トップガン』という映画の一シーンでトム・クルーズがこの曲をアカペラで歌います。私はカラオケはダメですが、当時はトムを真似てバーやカラオケでナンパのために歌う人がいました。 そして、偶然はますます奇。ホール&オーツに熱中していたその時期に、元レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジと元フリーのポール・ロジャースがザ・ファームというバンドを結成します。「レイディオアクティブ」というシングルでほんの少し話題になりました。商業的にはさほど成功しませんでしたが、それでも私は彼らのアルバム『ザ・ファーム』を所有しています。 ポール・ロジャースの暗く抑えた声に聴き惚れるとか、ジミー・ペイジによるギターのカッティングが “’Cause I'm radioactive” というマイクを通した無機質なコーラスと調和しているとか、そんな隠微な喜びもあるのですが、盤中際立つのが「ふられた気持」です。 偶然はいよいよ奇妙です。我が家ではレゲエとダブの重低音を響かせるためだけに、数年前にウーファーを導入しました。するとどうでしょう。何十というアーティストがカヴァーし、何百万回もオンエアーされている「ふられた気持」ですが、ザ・ファームのトニー・フランクリンによる、うねるような低いベース音をウーファーで響かせたら、もうとてつもなくセクシーなのです。 ザ・ファームとこの曲とウーファー。この偶然の出逢いで、曲への興味は失せてしまいました―― 今の私は、ザ・ファームの “この” 曲だけに萌えるのです。歌詞引用: ウェイト・フォー・ミー / ダリル・ホール&ジョン・オーツ レイディオアクティブ / ザ・ファーム
2018.06.14
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