4月21日

寺尾聰、安全地帯、国武万里… 胸を打つ【大人の恋】を歌ったヒットソングとは?

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昭和から平成にかけてヒットした大人の恋を象徴する曲とは?


5月27日、スペースシャワーTVにて『胸を打つ!大人の恋を歌ったヒットソング特集』と題された4時間のスペシャル番組が放送される。昭和を中心とした歴代のヒット曲からドラマ主題歌まで、時代と共に人々の胸に切なさとときめきを染み込ませた名曲の数々。

今回は、この大人の恋を象徴する曲をいくつかピックアップしながら、歌詞を紐解きながら、時代を超えて今も多くの人が口ずさむその魅力を解き明かしていきたいと思う。

昭和から平成にかけて大人の恋をテーマにしたヒット曲には大きな傾向があった。男女の視点を問わず、決して自分からグイグイと行かない、相手を待ち続ける切なさが描かれている。つまり、相手に重きを置き、自分の感情をグッと抑える。ここから生まれる心の機微が聴き手にいくつもの心象風景を残しているのではないだろうか。

決して派手ではないけれど、ジワジワと心に染み渡る「ルビーの指環」


ソフィスティケートされたシティポップには、大人の恋をテーマとした数々の名曲があるが、その代表格と言えるのが「ルビーの指環」だ。この曲のリリースにあたり、当時寺尾が所属していた石原プロモーションの専務、小林正彦氏は、「こんなお経みたいな曲が売れるわけがない」と一蹴したそうだが、その予想を覆し、発売当初は停滞気味だったチャートアクションも1981年2月5日の発売から約2ヶ月後の3月30日にはオリコンチャート1位に輝く。

確かに小林氏の言うところの「お経みたいな曲」と言うのは、抑揚があまり感じられないということだろうか。しかし、だからこそリリックがジワジワと心に染み込んでいくのだ。おそらく小林専務は、聴き手の心を一瞬で捉えるフックに欠けている曲ではないかと危惧したのだろう。確かにそういう意味合いからリリースからヒットまである程度の時間を要したのかもしれない。

決して派手ではないけれど、ジワジワと心に染み渡る曲。これが「ルビーの指環」がヒットした一番の要因だ。じわじわと、ゆっくりゆっくり。大人の恋はこうあるべきと言わんばかりに長きに渡りこの曲はチャートを賑わせた。



決して若さだけでは描くことのできない官能的な名曲「じれったい」


この「ルビーの指環」が描いた都会的な乾いたイメージとは違うが、煌びやかなバブル期でありながら、そんな虚飾を感じられずに男女の間に存在する不確かな愛のかたちだけをじっくりと描いた安全地帯の「じれったい」も大人の恋という括りに忘れてはならない1曲だ。

危なげな予感を感じさせ、男女の心の奥底をシンプルな言葉で綴るリリックを手掛けたのは恋愛ソングの名手、松井五郎。安全地帯第6のメンバーと言われた松井の歌詞は玉置浩二の声に寄り添うかのように官能的だ。

 じれったいこころをとかして
 じれったいからだもとかして

―― と繰り返される囁きの向こうに見える情景は、決して若さだけでは描くことのできない大人の恋の世界だ。

時流を取り入れた不倫ソングの名曲「ポケベルが鳴らなくて」


この「じれったい」のヒットから6年。90年代に入り、大人の恋愛模様は大きく様変わりしていく。ポップスで不倫をテーマにした曲が増えていく。そして、ポケベル、そして携帯電話の普及と、すれ違いから物語が生まれる恋愛模様が描きにくくなっていった。そんな中、時流に合ったテーマを汲み取りながら、普遍的なもどかしさを描いたのが国武万里が歌う「ポケベルが鳴らなくて」だ。

 ポケベルが鳴らなくて
 恋が待ちぼうけ

―― という時代の流れを感じずにいられないリリックに、

 私のすべて 2番目でも愛されたい

―― という不倫でも構わないからという一途な恋心を切々と綴る。国武万里の歌い方も歌詞のリアリティをリアリティを際立たせている。

不倫ソングといえば、好きな相手に電話するのをためらう描写が印象的な小林明子の「恋におちて-Fall in love-」を思い出す人も多いだろう。この曲にしても、「ポケベルが鳴らなくて」にしても、決して焦らず、ゆっくりじっくり相手を待つというのは、恋愛の形態がどうあれ、80年代以降に描かれた大人の恋の共通点ではないだろうか。



失恋ソングの定番「ハナミズキ」「涙そうそう」もオンエア


そう、純粋に相手を思う気持ちを描いたリリックこそが80年代から90年代にかけて多くの人に指示されたのだ。夏川りみ「涙そうそう」のような国民的名曲や、一青窈「ハナミズキ」のような失恋ソングの定番曲も、今改めて聴き返すとその一途な思いに胸が締め付けられそうになるほど切ない。

また、おそらく同窓会で再会した初恋の相手をテーマにした斉藤和義「ずっと好きだった」でも情感が込められた歌い方に共感できる人も多いだろう。

今回の特集では、新しいところで2016年にリリースされた宇多田ヒカルと椎名林檎のコラボレート作品「二時間だけのバカンス」もオンエア。寺尾聰から宇多田ヒカルまで、大人の恋を描いた数々の名曲の中から、時代によって変わっていくもの、変わらないものを確かめながら、今も色褪せることない楽曲の素晴らしさを味わってみて欲しい。



■ 胸を打つ!大人の恋を歌ったヒットソング特集
初回放送:2023年5月27日(土)6:00~10:00
リピート:2023年6月13日(火)9:00~13:00

<編成予定アーティスト>
寺尾聰「ルビーの指環」、安全地帯「じれったい」、中西保志「最後の雨」、小野正利「You're the Only・・・」、国武万里「ポケベルが鳴らなくて」、スピッツ「君が思い出になる前に」、ORIGINAL LOVE「接吻 kiss」、松田聖子「あなたに逢いたくて~Missing You~」、globe「Can't Stop Fallin' in Love」、DREAMS COME TRUE「やさしいキスをして」 他

■ 番組詳細、視聴方法はこちら
SPACE SHOWER TV

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2023.05.20
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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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