11月25日

安全地帯「ワインレッドの心」玉置浩二は9th(ナインス)の魔術師

67
5
 
 この日何の日? 
安全地帯のシングル「ワインレッドの心」がリリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 1983年のコラム 
8ビートギャグに夜ヒット、U2のメディアミックスは正しかったのか!?

ザ・モッズ「HANDS UP」強面リーゼント先輩からのロックンロールレッスン

佐藤信 × 妹尾河童「1983 YMO ジャパンツアー」解散じゃなくて散開!

バンド解散の危機!平成の中学生が選んだ安全地帯とチューリップ

伊藤銀次と高橋幸宏、¥ENレーベルのクリスマスアルバムにみる2人のポップスター

伊藤銀次と4曲のクリスマスソング「ほこりだらけのクリスマス・ツリー」

もっとみる≫




80年代って、9th(ナインス)コードの時代?


突然ですが、「80年代って、9th(ナインス)の時代だったよなぁ」と、深く感じ入るわけです。

ここでいう “9th” とは、コードに対するメロディの音の位置の話をしています。ごくごく簡単に言えば、バックの演奏が「ド・ミ・ソ」のメジャーコードで演奏しているとき、「レ」の音で歌うことです。またはマイナーコード=「ラ・ド・ミ」のときに「シ」の音で歌うこと。

「バックの音と歌の音が合ってないということは、音痴みたいな、変な響きになるんじゃないの?」という疑問を持たれる方がいるかもしれません。まさにその通り、変な響きになるのです。

昔の日本人、そうですね、たとえば戦後すぐの日本人にとっては、9thなんて、変な響きすぎて、気持ち悪くってたまらなかったかもしれません。

そんな時代を形作った作曲家、安全地帯の玉置浩二


しかし、60年代にイギリスから登場したあの4人組の音楽が、世界を席巻した。そして、彼らによる奇妙なコード進行や転調、そして9th含む、バックの音と対決するような、過激なメロディづくりが、全世界に撒き散らされた(その象徴が、その4人組の「ドライブ・マイ・カー」の歌い出し)。

そして日本でも、彼ら4人組の影響を強く受けた、筒美京平や都倉俊一などの職業作曲家、また荒井由実や桑田佳祐のようなシンガーソングライターが、ヒット曲を連発したことで、“変な響き” が徐々に “いい響き” に転換した―― という舞台設定が整ったところに、80年代がやってきたわけです。

そうして、80年代が “9thの時代” になっていく。今回は、そんな時代を形作った作曲家の1人として、安全地帯の玉置浩二を挙げたいと思います。私にとって彼は “9thの魔術師” とでも呼ぶべき存在に映ります。

その “9thの魔術師” としての代表作と言えば、1984年発売の大ヒット=安全地帯「ワインレッドの心」。あのサビ=「♪ 今以上、そ《れ以》上、愛されるのに」の《 》内が9thになっています(この曲はマイナーキーなので「ラ・ド・ミ」のときの「シ」の音)。

図解「ワインレッドの心」大ヒットの要因はサビのメロディ!


図で描くとこうなります。《れ以》のところで、音程もぐぐっと上がって、浮遊感ある「シ」の音が、強烈に印象づけられる結果になっています。

図1:安全地帯『ワインレッドの心』(コードは「ラ・ド・ミ」)



余談になりますが、拙著『1984年の歌謡曲』で、この「ワインレッドの心」のこのサビを以下のように激賞しました。これでも誇張しているつもりはありません。

―― とにもかくにも、大ヒットの主要因は、サビのメロディである。「♪ 今以上 そ《れ以》上」「♪ あの消えそうに燃《えそ》うな」の、《 》でくくったところの強い引っかかりはどうだ。一度聴いたら、二度と忘れることが出来ない必殺フレーズである。(中略)玉置浩二のボーカルは、低音部分が湿ったタオル、高音部分が乾いたゴムのような質感を持っている。「♪ 今以上 そ(ここまでタオル)→(ここからゴム)《れ以》上」という、声質の転換が、このフレーズの引っかかり度をより高めている。

図解「悲しみにさよなら」不思議な浮遊感が強烈なインパクト!


あと、こちらも大ヒット曲=1985年の安全地帯「悲しみにさよなら」の歌い出し(サビ)も忘れられません。「♪《泣かない》で《ひと》りで」の《 》内が9th。こちらはメジャーキー「ド・ミ・ソ」の上に「♪《レレレレ》ド《レレ》ミミ」となります。

図2:安全地帯『悲しみにさよなら』(コードは「ド・ミ・ソ」)



9thは、冒頭にも書きましたが、もともとは “変な響き” なので、使いすぎると逆効果になります。ただし、“ここ1番” で使うと、その不思議な浮遊感が強烈なインパクトとなって、大ヒットに貢献するのです。そして、80年代中盤に、9thの響きを、最高に上手く使ったのが、“9thの魔術師” 玉置浩二だということです。

では『見事なまでの浮遊感、1979年+80年代の9th(ナインス)名曲ベスト3』で、安全地帯以外も含めた9thベスト3を決定したいと思いますのでお楽しみに。


※2017年9月18日に掲載された記事をアップデート

2020.11.25
67
  Apple Music


  Apple Music
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。


おすすめのボイス≫
1966年生まれ
スージー鈴木
【宣伝】サイト「リマインダー」連載、新ネタ入りました!
2017/09/18 18:30
1
返信
カタリベ
1966年生まれ
スージー鈴木
コラムリスト≫
9
1
9
8
2
エンジニア出身のアーティスト、「狂気」も手がけたアラン・パーソンズ
カタリベ / DR.ENO
22
1
9
8
6
天才同士のぶつかり合い、いわくだらけのXTC「スカイラーキング」
カタリベ / DR.ENO
110
1
9
8
9
少年隊「まいったネ 今夜」ニッキこと錦織一清に目を奪われた!
カタリベ / 平マリアンヌ
36
1
9
8
1
シングルヒットは現実路線?筒美京平と近田春夫でとりあえずニューヨーク
カタリベ / ふくおか とも彦
45
1
9
8
6
80年代イントロなんでもベスト3 ~ その3「コミカル・イントロ」
カタリベ / スージー鈴木
23
1
9
7
8
J-POP 創生の立役者、細野晴臣の存在感(前篇)
カタリベ / goo_chan