今も昔も真夏はアイドルが最も輝きを増す季節。というわけで、毎月2回配信されている【中森明菜 Best Performance on NHK】8月1日配信分を観てみよう。今月は昭和世代が熱中して観ていた『レッツゴーヤング』を中心に以下の5曲がラインナップされた。
▶︎ スローモーション
『レッツゴーヤング』1982/8/8放送
▶︎ トワイライト -夕暮れ便り-
『レッツゴーヤング』1983/8/21放送
▶︎ サザン・ウインド
『レッツゴーヤング』1984/8/5放送
▶︎ 椿姫ジュリアーナ
『レッツゴーヤング』1985/8/25放送
▶︎ ジプシー・クイーン
『ヤングスタジオ101』1986/8/17放送
中森明菜デビュー3ヶ月目の初々しい貴重映像
注目すべきはやはりNHK初登場となった、1982年8月8日放送の『レッツゴーヤング』である。“若さでは誰にも負けません!” という新人ならではの紹介でステージのなだらかな階段を降りてきて、清楚な白いドレスで「スローモーション」を歌う。収録日は少し遡ったとして、おそらく17歳になりたての頃だろう。デビュー3ヶ月目の初々しい貴重映像。余裕のある表情で終始笑顔を見せながら、安定感たっぷりに歌う姿はとても新人とは思えない。
明瞭な発声で歌詞の一言一句が非常に丁寧に歌われていて、余計なビブラートも無い。歌い終わり、2コーラス目のラストフレーズの伸びやかな着地はあまりにも素晴らしすぎて思わず溜息が漏れてしまう。放送時はセカンドシングルの「少女A」がリリースされたばかりだったが、まだ爆発的なヒットには至っていない状況。それほど注目度も高くはなかったせいか、リラックスムードが漂う。現存するリアルタイムの「スローモーション」の映像でもベストパフォーマンスの1本に挙げられるのではないだろうか。おそるべし17歳!
表現力が豊かになった「トワイライト-夕暮れ便り-」
続く、1983年8月21日放送『レッツゴーヤング』での「トワイライト -夕暮れ便り-」は既に5枚目のシングル。当時は新曲が出されるローテーションも早かった。「スローモーション」「セカンド・ラブ」に続く、来生えつこ作詞、来生たかお作曲のバラードである。少々地味ながらもしっかりと耳に残るメロディーは、姉弟コンビによる初期3部作の中でも名曲ぶりが際立っている。18歳が歌う曲としてはかなり大人びているが、デビュー間もない頃に比べると、表現力が豊かになり、歌の世界に没頭している様子も窺える。ロングトーンにもさらに磨きがかかっている。
季節感の濃いサマーソング「サザン・ウインド」
さらに1年後の「サザン・ウインド」は1984年8月5日放送の『レッツゴーヤング』 より。「禁区」「北ウイング」に続く8枚目のシングルで、正に脂が乗ってきた感じ。玉置浩二からの楽曲提供は、6枚目のシングル「禁区」のB面曲だった「雨のレクイエム」以来となる。ヒットを連発し、名実共にトップアイドルとして君臨する中で、それまでで最も季節感の濃いサマーソングを歌っている。極めて大人っぽい来生えつこの詞に相応しい悠然とした表情と歌いっぷり。終わり間際、観客に向けてほんの一瞬だけ覗かせる無邪気な笑顔が、まだ10代であることを思い出させてくれる。
大人の色香が漂う「椿姫ジュリアーナ」
1985年8月25日放送の『レッツゴーヤング』で歌われた「椿姫ジュリアーナ」は、13枚目のシングルだった「SAND BEIGE -砂漠へ-」のB面曲。松本一起が作詞、佐藤隆が作曲を手掛けた。佐藤の起用は、氏が前年に高橋真梨子へ提供した「桃色吐息」のヒットに起因するものに違いない。この年出されたアルバムのタイトルを冠した『BITTER & SWEETツアー』で披露されたほか、この後出演したフジテレビ『夜のヒットスタジオDELUXE』でも歌われている。20歳になり、ワンピース姿に束ねた髪のシックな佇まいが大人の色香を漂わせる。レコード大賞を受賞した「ミ・アモーレ」をはじめ、この時期は異国情緒溢れるナンバーが続いていた。
アイドルとしてのアイデンティティは見当たらない「ジプシー・クイーン」
15枚目のシングルとなった「ジプシー・クイーン」は1986年8月17日放送の『ヤングスタジオ101』より。1974年から12年間続いた『レッツゴーヤング』が4月に終了した後にスタートした後継番組だった。この頃のシングルは1作毎に作家陣が入れ替わっており、本曲は松本一起の作詞、作曲は国安わたる。作家は替われど前年からのエキゾチック路線は継承されていた。歌う姿は毅然とし、もはやアイドルとしてのアイデンティティは見当たらない。一種のノベルティソングとはいえ、同じ頃に「なんてったってアイドル」を歌っていた小泉今日子とは対照的でさえあるが、これぞ中森明菜。この年「DESIRE -情熱-」で2年連続となるレコード大賞を受賞していよいよ歌手としての境地に至るのである。
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2025.08.31