恋も二度目なら 少しは上手に
愛のメッセージ 伝えたい
あなたのセーター 袖口つまんで
うつむくだけなんて
明菜ちゃんの曲の中で私が一番好きなのは、「セカンド・ラブ」(1982年)です。切なく歌う明菜ちゃんの声が、15歳の少女だった私の胸をしめつけました。恋に少し臆病で、彼に嫌われたくないと願う思いが、冒頭から伝わってくる。この曲は、そんな切ない言葉から始まります。
その前作となる「少女A」は、少女から大人の女性へと性的な変化を感じさせる曲で、山口百恵さんの「ひと夏の経験」(1974年)を彷彿させ、ポスト山口百恵と言われたりしていました。
山口百恵さんは、皆さんがご存知のように、歌うことよりも女性として、愛する人のそばにいつもいる生活を選びました。多くの人たちに惜しまれながらも、多くの人たちに祝福されながら芸能界を引退。明菜ちゃんが山口百恵さんのファンだったことは当時からよく知られていました。
帰りたくない そばにいたいの
そのひとことが 言えない
抱きあげて つれてって 時間ごと
どこかへ運んでほしい
せつなさの スピードは高まって
とまどうばかりの私
愛する人にとまどい、遠慮がちに… でも、大好きで、大好きで、この歌詞のように切なさのスピードだけが高まっていく… 私には、明菜ちゃんがそんな女性に見えていました。
バラードを歌う時に、ときどき涙を浮かべていたのを思い出すと、私はいまだに胸がしめつけられてしまう。
明菜ちゃんが歌手として憧れていた山口百恵さん。だけど、それ以上に一人の男性を愛する女性として、百恵さんに憧れていたのではないか…
たぶん、そんな風に想像してしまうから。
輝いていた80年代という時代。明菜ちゃんはヒット曲を連発して、アイドルの枠を超えて歌手として本当に輝いていました。
とても… 。
でも、その輝きを多くの人たちに見せながらも、芸能人という立場から、女性、女として、愛することのスピードを高められないその切なさと心の危うさを私たちは感じていました。
金屏風での年末の記者会見。
テレビを見ていた多くの方々が、色んな思いを感じた「女としての中森明菜」。それは山口百恵さんの金屏風とは違う… 。
帰りたくない そばにいたいの
そのひとことが 言えない
2017.04.29