「確かにやったんだな!」
(イ、イエス)
「よし、ココにサインしろ!」
(イ、イエス)
ジリリリン!
「はい、こちらポール・マッカートニー取調べ係りの菊池です」
ご存じの方も多いと思います。そう1981年にリリースされた『スネークマン・ショー(急いで口で吸え!)』に収録されているポール・マッカートニー取調室での一節である。1976年~1980年にかけてラジオ放送された “スネークマンショー” は、その過激な内容から様々なトラブルに見舞われて放送終了の憂き目に遭ってしまうのだが、紆余曲折あって YMO のサポートを受け制作したアルバムは大ヒットを飛ばしたのだった。
私もアルバム発売までは “スネークマンショー” の存在を知らなかったのだが、友人の家でこれを聞いたときのセンセーションは忘れられない。そもそも神聖なるレコード盤に、こんなふざけたモノを真面目に刻み込む根性と度胸に脱帽したものだった。
父親に「世の中には、やって良いことといけないことがある」と教え込まれた私にとって、これは間違いなく「やってはいけないこと」であった。しかし、音楽界、演劇界のそうそうたる大人のメンバーがその常識を覆してしまったのだった。もはやレコード業界には良心は存在しないのか?
取り調べ室の会話は続く。
「あ、これはこれは 秋山先輩、先日はどうもご馳走さまでした―― は?(小声になり)2枚ですね、わかりました。(再び普通の音量で)いや、もうイギリスじゃ偉いかどうかなんか知りませんがね、おとなしいもんですよ…」
「おい、バカなことしやがって。欧米諸国じゃ大目に見られてるかどうか知らんがな。この日本じゃこんなもの吸ってフラフラしてる若いやつは一人もいないんだ!(中略)おい! ココにサインしろ」
と言って、ポール・マッカートニーに次々とサインを書かせていくというストーリーである。
この他にも、薬局にコンドームを買いに行くがなかなか買えない「これなんですか」や、タイトルにもなっている「急いで口で吸え」など、よくもまあこんなに下らないけど面白いものを思いつくものだと感心した。そうは言いつつ、友だちにこのレコードをダビングさせてもらったのだが、その時のカセットテープは Lo-D(ローディ)の一番安いやつだった…。
※2016年11月15日に掲載された記事をアップデート
2019.01.16
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