1985年のデヴィッド・ボウイ&ミック・ジャガーの共演シングル「ダンシング・イン・ザ・ストリート」はライヴ・エイドのチャリティーのためにリリースされた。ミュージック・ヴィデオでのあまりに’80年代的な2人の衣装が印象的だ。
しかし同年7月13日のライヴ・エイドでは2人の共演は実現しなかった。ボウイはロンドン、ジャガーはフィラデルフィアで出演したためで、衛星中継で共演しようとしたがディレイが生じるため断念したとのこと。当日はミュージック・ヴィデオが流れただけに終わった。しかしそれから1年後、2人は共演を果たしていた。なぜか歴史の中に埋もれているその共演は、前回のコラムで取り上げた、ポール・マッカートニーが復活を果たした1986年9月20日にロンドンのウェンブリー・アリーナで開催されたプリンス・トラストのコンサートにおいてであった。
前回のコラムの画像を見て頂くと分かるが、ボウイとジャガーはアーティストの記念撮影に写っていない。そしてライヴアルバムにも、レーザーディスクやVHSといった映像にも2人は全く登場していない。見事なまでに歴史から消え去っている。実は僕も昨年のボウイ逝去後、ネットでようやくこの共演を知ったのだった。
2人の登場はまた意外なことにトリのポールの途中だった。「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」、「ロング・トール・サリー」の2曲が終わったところで、なんとポールの紹介で2人がステージに姿を現したのだった。
ボウイはモスグリーンのジャケットに白と赤の太い縦縞のシャツ、ジャガーは薄紫のジャケットに、青赤白の細い縦縞のシャツ。もちろん歌うは「ダンシング・イン・ザ・ストリート」。ポールが後ろでアコギを弾いている。熱の入ったボウイとジャガーは2番に入ってジャケットを脱いだ。リハーサルはしていないのかユニゾンで力強く押すパフォーマンスはあっという間に終わり、ジャガーだけが短く挨拶し2人はさっとステージを後にした。ポールとティナ・ターナーの「ゲット・バック」が続きコンサートはフィナーレを迎える。最後の挨拶でもボウイとジャガーはステージに戻って来なかった。
この2人の共演について、ネットで “unplanned(予定されていなかった)” “incidental(偶発的な)” といった言葉を見かけた。急きょ決まったものだったため販売されたソフトには残されなかったのか、もしくはぶっつけ本番だった可能性の高いパフォーマンスに2人が満足しなかったのか、真相は不明である。
ボウイとジャガーのみならず、ポールとミックが同じステージに立ったのもこれが最初で最後かもしれない。ボウイ亡き今、この歴史的に極めて重要なパフォーマンスは、改めて日の目を見たりはしないのだろうか。
2017.01.16
YouTube / Matt Day
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