今でこそ年末商戦を見据えたビートルズ関連のリリースは恒例行事だが、80年代はおとなしいものだった。それでも82年の冬はちょっと盛り上がった感がある。ポール・マッカートニーがマイケル・ジャクソンとデュエットした「ガール・イズ・マイン」の大ヒットは、多くの人が思い出すことができるだろう。しかし、同時期にジョージ・ハリスンのアルバム『ゴーン・トロッポ』がリリースされたことは忘れられがちだ。 ジョージのオリジナルアルバムの中でも、もっとも売れなかったから “忘れられがち” というよりは、そもそもリリースされたことが知られていなかった…… という方が正しい(同時期に出たヨーコ・オノの『イッツ・オールライト』よりもUSチャートの最高位は下だった)。 おまけに、このアルバムに対するファンの評価は当時(も今も!?)さんざんだ。が、80年代に洋楽耳を育んだ自分にはフィットした。とくに最初のシングル「愛に気づいて(Wake Up My Love)」は、いきなり大げさなシンセのリフが響き、いかにも80年代的。今となっては、この曲に昔からのファンが拒否反応を示したのは理解できるが、当時の10代の耳にはスンナリ受け入れられた。 それに『ゴーン・トロッポ』自体、悪い内容ではない。“トロッポ”、すなわちトロピカルな空気感が宿り、タイトル曲はつい口ずさんでしまう。ジョージがプロデュースした映画『バンデットQ』の主題歌「ドリーム・アウェイ」(日本でシングルカットされた際には「オ・ラ・イ・ナ・エ」と邦題が改められた)のミステリアスだが、のどかな南国テイストも妙味。売れなかったのは、北半球の冬にこのアルバムを出してしまったからか。ちなみにこの頃のジョージはオーストラリアで暮らす時間が長かったという。 寒い季節が苦手な自分は、冬になるとこのアルバムを聴きたくなる。ジョージの大晦日ソング「ディン・ドン」を聴きながら年を越し、『ゴーン・トロッポ』で温かい新年に浸る…… というのもオツじゃないか!
2016.12.30
VIDEO
YouTube / Beatles❤Girl
VIDEO
YouTube / COASTAL TOWN 2
VIDEO
YouTube / jmoul59
Information