11月23日

ブルーハーツ「TRAIN-TRAIN」トップ10ヒット2曲を生んだ大ヒットアルバム

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ザ・ブルーハーツのサードアルバム「TRAIN-TRAIN」がリリースされた日
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ザ・ブルーハーツがメジャーの舞台に躍り出たアルバム「TRAIN-TRAIN」


今年3月7日放送の『山下達郎のサンデー・ソングブック』で、リスナーからの質問に答え、ブルーハーツのセカンドとサードアルバムを発売日に購入したと語っていた。大学4年だった当時、後者をやはり発売日前日にフラゲした僕は親近感を覚えた。

このサードアルバムこそが『TRAIN-TRAIN』。ザ・ブルーハーツがメジャーの舞台に躍り出た1枚である。

1988年11月23日、『TRAIN-TRAIN』は同名シングルと同じ日にリリースされた。シングルのB面もアルバム収録曲である「無言電話のブルース」。もちろん僕は同時に購入したが、今考えるとシングルを売る気があまり無さそうにも思える同日リリースだった。

しかし実際は全く逆で、シングル「TRAIN-TRAIN」はオリコン最高5位と、ブルーハーツ初のトップ10ヒットとなった。これはリリース1か月強後の1989年1月6日に始まった、斉藤由貴主演のTBSドラマ『はいすくーる落書』の主題歌に起用されたことが大きかった。アルバムも最高3位とこれまた初のトップ10入り。ブルーハーツはチャートの上においても遂に大ブレイクを果たしたのであった。

マーシー初のシングルA面「TRAIN-TRAIN」


僕が初めてこの曲を聴いたのは9月23日の『ビートたけしのオールナイトニッポン』においてであった。涙してしまったことを未だに憶えている。初めて聴いた曲でいきなり涙したなんてこれが初めてだった。

後にこの曲がギターの真島昌利(マーシー)作と知って驚いた。Aメロでスローに静かに始まり、その後一転してアップテンポにラウドになる曲の構成といい、単語を2つ重ねたタイトルを連呼するサビといい、ヴォーカルの甲本ヒロト作で前年のメジャーデビューシングル「リンダリンダ」に似ている部分が多かったので、この曲もヒロト作ではないかと思っていたのである。

マーシーのシングルがA面になったのはメジャーのシングルでは3枚めにして初めてであった。よく見ると歌詞は「リンダリンダ」が抽象性が高いのに対し、「TRAIN-TRAIN」は時に洒落も交え具体性が強く個性の違いが見られるのだが、ともあれ代表曲となったこの2曲の作者が異なることに、まるでレノン=マッカートニーではないかと、僕はブルーハーツの、他のバンドには無い魅力を感じたのだった。

パンクからロックへ! 広がったブルーハーツの音楽


『TRAIN-TRAIN』のプロデューサーはブルーハーツと谷川千央。谷川は前の2枚のアルバムではマネージャーとしてクレジットされていた。ミックスはハワイのマウイ島で外国人によって行われ、やはり過去2作とは違う触感を生んでいる。

このアルバムではゲストミュージシャンが複数参加している。1987年のファーストアルバム『THE BLUE HEARTS』はセルフプロデュースで4人だけで作られ、同年のセカンドアルバム『YOUNG AND PRETTY』でも共同プロデューサーとして名を連ねた佐久間正英がキーボードを弾いただけであった。

それに対しこのアルバムではキーボードだけでも2人が参加。「TRAIN - TRAIN」で印象的なピアノを弾いているのは小島良喜。KUWATA BANDのメンバーでもあったことを今回初めて知った。シングルカットされたヒロト作の「ラブレター」とマーシー作の「青空」でも弾いていて、前者ではストリングスも担当。アルバム最後のマーシー作の「お前を離さない」ではホーンのアレンジも担当し、正に八面六臂の活躍を見せている。

そしてもう1人がボ・ガンボスのKyon。ヒロトとマーシーの共作「メリーゴーランド」とマーシー作の「ブルースをけとばせ」の2曲でピアノを弾いている。

「TRAIN-TRAIN」でヴァイオリンを弾いているのは篠崎正嗣。ヒロト作の「ながれもの」ではフィドルも弾いている。

この他にもストリングス、ホーンでゲストミュージシャンが参加している。結果このアルバムは、過去2作がパンク色が強かったのに比べ、ヴァリエーションに富んだロックアルバムになった。

「風船爆弾(バンバンバン)」はベースの河口純之助が初めて作詞作曲(ヒロトも作詞)。ヒロトとマーシーの共作というのも後にも先にも未だこの「メリーゴーラウンド」しかない。作者の幅も広がったのだった。

シングルカット「ラブレター」&「僕の右手」甲本ヒロトらしいナンバー


このアルバムからは前述の通り更に2曲がシングルカットされた。1989年2月11日にはヒロト作の「ラブレター」がリリースされている。ピュア過ぎるほどピュアなラヴバラードだが、やはりB面もアルバムに収められていたヒロト作の「電光石火」だったこともあり、オリコンでは最高23位という結果になっている。

ヒロト作の曲としてはA面5曲めのアップビートなナンバー、「僕の右手」を忘れるわけにいかない。元々は「僕の右手を知りませんか」というタイトルだったこの曲が、実在の隻腕のミュージシャン、MASAMI氏をモデルにしていたことはずっと後に知ったのだが、そんな背景を知らなくてもシュールな歌詞がすっと入ってくる、美しいメロディーと普遍性をしっかりと有していた。前期ブルーハーツらしい、せつなさを併せ持ったパンクである。

3枚めのシングルでトップ10ヒット「青空」


そして3枚めのシングルが、1989年6月21日にリリースされたマーシー作の「青空」である。B面にやはりマーシー作のアルバム未収録の「平成のブルース」を収めていることもあっただろうが、アルバムから半年以上後にカットされた3枚めのシングルが、なんとオリコン8位を記録。ブルーハーツ2曲めのトップ10ヒットとなったのである。

 生まれた所や皮膚や目の色で
 いったいこの僕の
 何がわかるというのだろう
 こんなはずじゃなかっただろ?
 歴史が僕を問いつめる
 まぶしいほど青い空の真下で

この頃のマーシーらしいほろ苦い歌詞が美しいメロディーに乗ったフォークロックの名曲。当時井上陽水も評価していたのを憶えている。ブルーハーツの進化と、『TRAIN-TRAIN』の豊かなヴァリエーションを正に体現したこの曲のヒットで、世間のブルーハーツに対する印象も変化したのではないだろうか。

miwa、上白音萌音、竹原ピストル、菅田将暉といったミュージシャンが、今でもカヴァーをし続けている。個人的には3年前の2018年、加山雄三とザ・クロマニヨンズが対バンを行った時に、加山が「どうせ本人達(マーシーとヒロト)は歌わないから」と、代わりに1曲めでいきなり「青空」をカヴァーしたのが、やはり嬉しかったし、沁みた。生でこの曲を聴いたのは雨の野音で観たブルーハーツ以来、実に24年振りのことであった。

『TRAIN-TRAIN』はトップ10シングル=スタンダードナンバー2曲を生んだ大ヒットアルバムであると同時に、ブルーハーツの扉を大きく開いた、記念碑的なアルバムとなった。

最後に―― 山下達郎はブルーハーツについて、自分には出来ない音楽を作っているからと評している。その山下がマーシーに声をかけ、真島昌利作詞、山下達郎作曲の2曲を、木村拓哉の来年1月19日リリースのソロアルバム『Next Destination』に収めるという報が今月飛び込んできた。これは聴くっきゃあるまい。山下達郎が『TRAIN-TRAIN』を発売日に手にしてから33年、歴史は続いていた。

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2021.10.27
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