今年2017年の1月27日に亡くなった、映画『ハリー・ポッター』シリーズのオリバンダー役で知られるイギリスの俳優ジョン・ハート。1980年にそのハートからデヴィッド・ボウイに送られていたメッセージが『DAVID BOWIE is』に展示されていたことにお気付きになっただろうか。
そのメッセージは、恐らくハートが演じたエレファント・マンの写真の下に「for David “Friend” - John Merrick with admiration John」と記されている。直訳すると「デヴィッドへ。“友だち” ジョン・メリックより。ジョン(・ハート)からも感嘆を込めて」。
ジョン・メリックはエレファント・マンの名前。このメッセージは、デヴィッド・リンチ監督の映画『エレファント・マン』で主演したハートから、舞台版で主役を務めたボウイに送られたものだったのだ。
ボウイ主演の舞台版『エレファント・マン』は7月29日にデンバーで始まり、シカゴを経由して9月23日にニューヨークのブロードウェイで初日を迎えた。因みにハート主演の映画版は10月10日に公開されている(日本での公開は翌’81年5月23日)。
映画との大きな違いは、ボウイが特殊メイクを施さないことだった。得意なパントマイムと風変わりな話し方だけで、ボウイは奇形を表現した。その模様は『DAVID BOWIE is』でも一部ではあるが映像で観ることが出来る。『戦場のメリークリスマス』の出演交渉のためニューヨークまで来た大島渚監督も観劇したそうだ。
ボウイが腰に着けていた衣装も展示されている『DAVID BOWIE is』だが、ジョン・レノンの射殺犯マーク・チャップマンが、犯行翌日に観劇予定だったというキャプションには息を呑んだ。チャップマンの次のターゲットは何とボウイであったらしい。生前のボウイによると同じ日にレノンとヨーコ・オノも観劇予定だったというが、こちらは真偽の程は分からない。
唯一つはっきりと言えるのは、親しくしていたレノンの逝去に大きなショックを受けながらも、ボウイは休演することも無く翌’81年の1月3日までやり遂げたということである。追加公演のオファーはさすがに固辞したそうだが。
『ダブル・ファンタジー』での5年振りの復帰と重なったせいか、どうやらジョン・レノンの『エレファント・マン』観劇は叶わなかった様である。この舞台での成功が、引いては『戦場のメリークリスマス』でのボウイの名演に繋がったと言っても決して過言ではないと思うが、『エレファント・マン』はレノンとボウイの永遠の別れの舞台にもなったのだった。『DAVID BOWIE is』を日本に持ってきたことでこの事実を知ることが出来たのは何よりであった。
最後に音楽の話もしよう。映画版の主演ジョン・ハートは2年後の1982年、ポール・マッカートニーの傑作『タッグ・オブ・ウォー』からのセカンドシングル「テイク・イット・アウェイ」のMVでも “主演” を果たしている。この縁からか、ハートの逝去後ポールはコメントを発表した。ボウイと『エレファント・マン』を挟んで、ジョン(・レノン)とポールが繋がったと言うのは些か強引だろうか。
2017.03.19
YouTube / DAVID BOWIE is
YouTube / PaulMcCartneyVids
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