7月21日

J-WALK「何も言えなくて…夏」がミリオンヒットした深層心理【90年代夏うた列伝】

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後悔、謝罪、そして、愛と褒め言葉の数々、「何も言えなくて…夏」は恋の反省文


J-WALK(現:THE JAYWALK)の「何も言えなくて…夏」。私はこの歌を聴くたびに毎回思う。こんなによくできた恋の反省文はなかなかない。ギシギシと渋く重なるギターと中村耕一の低くかすれた声で歌い上げられる後悔、謝罪、そして、愛と褒め言葉の数々――。

歌い出し「綺麗な指してたんだね 知らなかったよ」。これはもう「歌い出し選手権」があればベストテンに入る素晴らしい歌詞だと思う。この一節だけで、主人公がどれだけ彼女を見ていなかったかが、怖いほど伝わってくるではないか。

彼女が去っていくことになって、初めて分かるありがたみ。別れを言われたその瞬間、ドバーッと巡る思い出の走馬灯&センチメンタル&リグレット。ただ残念ながら、どれだけ美しくとも、主人公は頭の中で言っているだけであり、現実的には言葉にできていない。ああ、独り相撲な「何も言えなくて」!

けれど、自分のことで必死なときは誰しも主人公と同じ経験をしがちだ。だからこそ、この曲は聴いても歌ってもドハマりするのである。自分の殻に閉じこもり、そばにある愛情ややさしさに気づかず、大切な人に去られてしまう。その苦い恋を懺悔するのに理想的なテキストフォーマットといえる歌詞。しかもバラードではなく、爽やかなメロディーがついているので、罪悪感が薄まり、再会した時の希望もプラスできる。

くっ、完ぺきではないか! 私もカラオケで何人見たことか。これを歌いながら目を閉じ、過ぎ去った愛しい人の背中を思い出している人の姿を!

1993年はロングヒット曲の当たり年


「何も言えなくて…夏」は、リリースは1991年だが、ヒットの火がついたのは1992年夏からで、オリコンランキングベスト10に入ったのは1993年だ。

不思議にも1993年は、1曲が何十年も歌い継がれるロングヒット曲がとにかく多い。中西保志の「最後の雨」も、リリースは1992年だが1993年にヒットしている。

ほかにもclassの「夏の日の1993」、THE BOOMの「島唄(オリジナル・ヴァージョン)」、THE虎舞竜の「ロード」、山根康広の「Get Along Together〜愛を贈りたいから〜」はこの年のヒット曲だ。

1993年には、なにか特殊なロングヒットの電波が出ていたのかもしれない。



結末を聴く人に託すアンサーソング「もう一度…」


「何も言えなくて…夏」に話を戻そう。1993年の大ヒットから15年後の2008年、アンサーソング「もう一度…」がリリースされている。二人は駅で再会。人混みをかき分けてやさしく駆け寄ってくれた彼女に、主人公が「やっぱりまだ好きだ」と確信するストーリーである。

中村耕一のボーカルは「何も言えなくて…夏」よりも淡く柔らかい響き。再会の喜び、スルーせず会ってくれた女性への感謝と愛情がふんわりと届いてくるようである。

そしてラストの歌詞は――

「もう一度恋をしてもいいと言ってくれ」。

―― で終わる。つまり、それから二人がどうなったかは、聴く私たちの想像次第というわけだ。

「何も言えなくて…夏」という反省文が見事だったので、それを活かせば、さすがに今度は何も言えず終わることはないだろう。曲調も明るく希望を感じる。きっと主人公は「もう一度恋をしてもいいと言ってくれ」とはっきり口に出して言えているのではないかな、と思うのだ。彼女がYESというかは別として。

このように、妄想が膨らみまくる「何も言えなくて…夏」。言えなかった気持ちはいつまでも心に残るのだと、ジャリジャリとした聴きごたえのサウンドが、心を不思議にやさしく刺激する。

もし、あなたに、隣にいるのが当たり前だと思っている人がいるなら、今すぐこの曲を聴こう。恋人がいるのに、相談せず、世界中の悩みを一人で背負っているような気になっている人も、すぐこの曲を聴こう。

そうすればこの夏のうちに、大切な愛に気づけるかもしれない。その人の指がとっても綺麗であることも。

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2023.08.07
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カタリベ
1969年生まれ
田中稲
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