人間の尺度では測り切れないハイテクニック集団 “少年隊”
笑顔も才能の一つである――。私はこの人を見て、つくづく思う。植草克秀さん。2020年にジャニーズ事務所を退社し、現在ソロで活躍中。7月24日で57歳を迎えるが、サンシャイン・スマイルは相変わらずだ。温かくてホッとする!
カッちゃんといえば、少年隊。少年隊と言えば、ちょっと人間の尺度では測り切れない、ハイテクニック集団である。「時間泥棒」の異名を取る彼ら。そのパフォーマンスを見て、「…………はっ!!」と気がついたら数時間経っていて「仕事が! 締め切りが!」と青ざめたことが何度あったことだろう。
筒美京平氏が認める植草克秀の歌声の甘さ
私が少年隊への扉を開いたきっかけは「君だけに」。彼の歌い出し「君だけに、ただ君だけに……」によって誘われた。
「君だけに」を作曲した筒美京平先生が「最初(歌い出し)は植草くんがいいんだけど」と指名したというのは有名な話。ジャニーズ音楽出版のディレクター鎌田俊哉さんによると、電話で、筒美京平さんからこんな話があったそうだ。
「植草くんの声で君だけに(↑)ってやるとすごく甘くなって、女の子たちはみんなそこにキュンとするから」
(note「令和の少年隊論」)
―― ハイッ、キュンとなりましたーッ! 筒美先生の思うつぼである。
まさに「甘い」。カッちゃんの歌声は、いわば「トップ・オブ・スウィート」。滑舌の良さ、高音の伸び、やわらかさ、音程の確かさ。アイドルとしての声の魅力と、歌手としての歌唱力のバランスが最高なのだ。
アルバム『TiME-19』に収録されているソロ曲「ロングタイムロマンス」は、それが十二分に確認できる名曲である。
ニッキとヒガシの真ん中でも映える逸材
ダンスも、錦織一清と東山紀之という超人に囲まれているので苦手なイメージがあるけれど、カッちゃんもすごい。動きも美しいしバク転もする。なにより表現力は二人に負けていない。パフォーマンスに「物語」を運ぶという恐ろしいスキルを持つ男、それがカッちゃんなのである。
そして包容力。「ストイック」「パーフェクト」の擬人化のような、見ているこちらまで息ができなくなるようなニッキ&ヒガシのパフォーマンスに、この人の笑顔が混ざることで、ふっと呼吸が許される。
ここぞというソロパートでグッと楽曲に深みを与えるなどメインも担いつつ、全体をつなぎ、光り輝かせるバランサー。錦織一清が、著書「少年タイムカプセル」(新潮社)で植草についてこう語っている。
「俺が植草のことを「怖いなあ」と思うのは、俺の頑固なところや、妥協しないところを全部知っている。それが一番怖い。ああ見えて全体を俯瞰してよく見ているから......、経験もあるし」
そして「怖いなあ」の意味として「イコール信頼しているということだけど。」という、最高の賛辞が続くのだ。その言葉をしっかり裏付けるように、2021年からは、二人でYouTubeチャンネル『ニッキとかっちゃんねる』を開始。2022年には『ふたりのSHOW & TIME SONG for YOU』を開催。阿吽の呼吸を見せている。
少年隊時代から続くファンとのロングタイムロマンス
ニッキの言う、カッちゃんの「俯瞰」は、少年隊というグループのなかだけではない。彼は2021年からSNSも始めているが、YouTubeチャンネル「フジテレビュー!!」のインタビューにて、こんな風に語っているのだ。
「フォロワーの人のツイートが面白い。俺が(コメントを)入れるより面白いもん! すっごい面白い! みんなの見てると」
「ファンの人とリアルに話せる、どんな気持ちでいるのかを見られることが、すごく、俺今嬉しくて……。それを体感できていることが、すごく幸せで」
彼が嬉々として話すのは、ファンのコメントについてなのだ。普通なら自分のことでいっぱいいっぱいになりそうな状況でも、この人はきっと、周りを見、その風景の美しさに感動するのだろう。それは少年隊の経験により培われたというより、むしろ生まれながらに持ち合わせた才能のような気がするのだ。
天性の癒しポジション、植草克秀の目線はいつだってやさしく広い。
新しい挑戦も、その笑顔で誰かと誰かをつなげながら、進めていくのだろう。もちろん、明るく甘いハイトーンボイスも今なお健在だ。
カッちゃんと、彼の物語を見つめる人たちのロングタイムロマンスは、これからも続く。
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2023.07.24