堀ちえみ、冬の名盤『雪のコンチェルト』
1982年はアイドルが豊作だった年でもあり、多くのトップアイドルが輩出された記念すべき1年でした。今日の主役である堀ちえみも当然そのうちのひとりです。
80年代アイドルというのは3か月に1枚シングルをリリースしていたので1年に4枚のシングルをリリースするわけですが、そうなると曲は季節をテーマにすることが多くなります。春は卒業時期の悲しい別れ、夏はビーチサイドで繰り広げられる恋模様、秋は彼の心変わりにセンチメンタルになる主人公、冬はお互いを温め合う恋人達などをテーマにした曲が多かったと思います。そんな彼女たちは年に2枚のアルバムを発表していたので、1年中レコーディングしていたという話はよく耳にします。
80年代アイドルのオリジナルアルバムが発売されるのは、だいたい夏と冬の時期だったと思うのですが、冬時期に発売になったアルバムというのはジャケットの写真もキュートでGreeting的なものが多かったように思います。ということで、今回は、冬のアルバムの中でもジャケットが特に気に入っている、堀ちえみの『雪のコンチェルト』をご紹介したいと思います。
「さよならの物語」で初のトップ10入り
堀ちえみは1982年3月21日にシングル「潮風の少女」でデビュー。レコード会社はポニーキャニオン、事務所はホリプロで、アイドルとして理想的なデビューを飾ることになります。82年には4枚のシングルをリリースしていますが、残念ながら惜しくもトップ10入りを果たすことができませんでした。当時からアイドルウォッチャーだった僕は、いつもチャートを見てはもどかしい気持ちになったものです(笑)。
1983年のシングル「さよならの物語」で初のトップ10入りを果たし、その後は長らく常連だったので、いつも心のどこかでホッとしていたような記憶があります。とはいえ、堀ちえみはアルバムの売り上げがとてもよく、デビューアルバム『少女』の9位を皮切りに、『夢日記』5位、『心の扉』4位、『風のささやき』4位と4作連続で、トップ10入りを果たしているのです。アルバムを聴いていただけるとお判りいただけますが、80年代アイドルの中のアルバムアーティストと呼んでもいいくらいクオリティの高い作品なのです。
フォーキーなメロディにAORサウンドが融合した「夕暮れ気分」
今回ご紹介する『雪のコンチェルト』は1983年12月7日に発売された、5枚目のオリジナルアルバムですが、もちろんトップ10入りを果たすヒットになっています。12月7日発売ということは、クリスマス商戦に向けたリリースだったと思うのですが、クリスマスを前面に押し出すのではなく、あくまでも“ウィンターアルバム”というコンセプトで制作された作品です。それまでの明るい彼女とは対照的に物憂げな表情のジャケット写真がいいですね。アルバムの裏ジャケットに写る暖炉の前でくつろいでいるちえみちゃんもこれまた可愛い!
このアルバム『雪のコンチェルト』に唯一収録されているシングル曲は「夕暮れ気分」ですが、僕が堀ちえみの全シングルの中で一番好きな曲です。作曲はNSPの天野滋そしてアレンジは清水信之。フォーキーなメロディなのに、ディオンヌ・ワーウィックの「Heartbreaker」的なAORサウンドが見事にマッチした1曲です。
「夕暮れ気分」は今にも泣きだしそうな不安げな彼女のキャラクターにぴったりの1曲で、この曲が一番好きという方も多いのではないでしょうか。ちなみに天野滋はアルバム内で「スウィート・ジェラシー」の作詞・作曲も手掛けています。
アルバムの核となるのが1曲目の「Good-by Winter」とラストの「12月の祈り」なのですが、コンセプトに合わせたこの2曲が特に輝きを放っています。この曲は多くの名曲を世に送り出してきた伊藤薫が作詞・作曲していますが、アルバムのアレンジは鷺巣詩郎が6曲、白井良明が3曲を手がけていて、贅沢な環境でアルバム作りがされていたということがよくわかります。全体的に秋から冬にかけての季節にぴったりの楽曲が散りばめられていますが、「ちえみ言葉でI Love You」のような、いかにもアイドルソング的な1曲も収録されています。当時分刻みのスケジュールをこなしていた彼女は、アルバムの曲をかみしめる余裕なんてなかったとは思いますが・・・(笑)。
そんな堀ちえみさんですが近年、大きなご病気をされ見事復活されました。回復されて心から安堵しております。これからも、どうかお体を大切にしてくださいね。そして最後に改めて、「堀ちえみさんデビュー40周年おめでとうございます」。
ーー 堀ちえみ全オリジナルアルバム、ストリーミング配信がスタート!
アルバムアーティストとして、高いクオリティのアルバムを発表し続けた堀ちえみ80年代の軌跡をこの機会に存分に楽しんでみては。
特集:堀ちえみ 40周年アニバーサリー

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2023.02.11