ポケモンGOなるゲームが流行り、同年齢の友人などは喜んで興じている。僕はというと、あまり興味が湧かないでいる。高校生の時分、夏休みといえば友人たちは、宿題そっちのけで部活かゲームをやっていたが、僕はどうもあらゆる種類のゲームが(人生だって!)苦手であり、クリアをしたことが一度もない。そんな僕の夏休み最大のイベントは、普段見られないような長い尺の映画を観ることだった(なんとネクラな…)。
そんな夏に観た一本が『スカーフェイス』だ。ハワード・ホークスの傑作ギャング映画『暗黒街の顔役』(1932)を、オリヴァー・ストーンが主人公をキューバ難民とすることで政治的に翻案し、監督・ブライアン・デ・パルマの手腕によって最高のバイオレンス・ムービーとなったこの作品は、170分という比較的長い映画だ。しかし、驚くことに一切退屈しないのだ。常にF**Kと言い続けるアル・パチーノが、もはや英語とはとても思えないような訛りの強い喋りでまくし立てるこの映画のテンションは常時マックスだ。
そして何しろ、音楽が素晴らしい。ジョルジオ・モロダー監修のサウンドトラックには、一人の成り上がりの「栄光と挫折」が一聴して感じ取れるほど情感的な部分と、ディスコシーンで「ぶち上がれる」熱い曲もあり、それだけで映画を追体験できる素晴らしさである。
特にラストシーン、運命のいたずらで自分の大事な妹を殺してしまうトニー。ちょうどその時、他のギャングから襲撃を受ける。失うものは何もない。それは社会の「ゲーム」の中で人の裏をかき、勝者となった男が完全に敗者となった瞬間だ。彼の中でリミッターが完全に外れ、悲壮なマシンガン連発の銃撃戦が始まる。それは、ただのバイオレンスではない、ある男の哀しみと抗えない運命の力を感じさせるものだ。全てが終わった後、モロダーによるテーマが流れる。ため息の出るほど完璧ではないか!
ともかくゲームは得意ではないが、そのことで名画に出会えたということは僕にとって幸せなことであったのかもしれない。
2016.08.28
YouTube / Fábio Silva
YouTube / Movieclips
Information