3月31日
80年代のカルト映画と「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」の関係
24
0
 
 この日何の日? 
映画「ヘザース / ベロニカの熱い日」が全米で公開された日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます

 
 1989年のコラム 
愛され嫌われるマドンナ、ローリングストーン誌の人気投票が面白い

歌もギターもメチャメチャうまい、ボニー・レイットは名曲もいっぱい

ディーヴァを巡る熾烈な闘いに埋もれたグラミー歌手、ジョディ・ワトリー

サザンの片腕・斎藤誠のライブアルバムは音楽サークル経験者の憧れ!

ライフ・イズ・グッド、春にこの曲を思い出してきっと歌ってしまう

祝福された二つの時代、裸の銃を持つ男とピーター・ヌーン

もっとみる≫

photo:Amazon  

1991年に発表されたニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」のPVは、ジェネレーションX的な(つまり彼らの親世代のヒッピー的享楽主義を裏返したような)ニヒリズムとフラストレーションに満ちている。

ハイスクールの体育館で地獄のペップラリー(スポーツ・イベント前の壮行式)が行われ、バンドもそれに合わせて演奏するが、最後は狂気に陥ったかのように高校生達が暴れ狂う。暗い時代の刻印を帯びた傑作といってよいだろう。

このPVの元ネタは、共に1979年公開の映画『レベルポイント』と『ロックンロール・ハイスクール』というのはファンには割合よく知られた話だが、実はより影響を与えた作品があるのでは、と僕はみている。

それが1989年に米国で公開された、ジェネレーションXの暗い青春を描いた学園映画『ヘザース / ベロニカの熱い日』だ。

三人のヘザーが統治する学園で、ベロニカ(ウィノナ・ライダー)とその恋人のJD(クリスチャン・スレーター)が巻き起こす殺人の連鎖を描くブラックコメディー。

脚本のダニエル・ウォーターズはキューブリックに監督を依頼する予定だっただけあり、全体にダークでシニカルな雰囲気で、いわゆる「学園物」とはかなり毛色が異なる。

とにかくこのJDというのがサイコパスで、簡単に人を殺す。ヘザースの一人にトイレの洗浄剤を飲ませて殺し、アメフト部員を銃殺し、最後はすべて自殺に見えるように偽装する。

しかしこうした凶行の限りを尽くした結果ベロニカに振られたJDは、破れかぶれになってボイラー室に爆弾を設置。「俺を愛さない奴らは皆殺しだ!」などと叫びながら学園を壊滅しようとする。

実はこの爆弾設置箇所に、ニルヴァーナのPVとの親近性を読み解くカギがある。

そのボイラー室の上は体育館で、そこではチアリーダー達によるペップラリーが行われているのだ。ここで「スメルズ」のPVでも、うす暗い体育館でペップラリーが行われていたことを思い出したい。

暗澹たるジェネレーションXの精神性を映し出すかのように、『ヘザース』のチアリーダーたちはアナキストを象徴する「赤と黒」のユニフォームに身を包み、それに呼応するように「スメルズ」のチアリーダーたちもまたアナキストを象徴する「サークルA」が刻印されたユニフォームを着ている。共に不穏な雰囲気を醸し出す。

「体育館」という学園の最も溌剌とした場所に、破壊的で暗澹たる空気が入り込むのは偶然ではないだろう。ジェネレーションXの、というかグランジ世代の病んだ魂が、チアリーダーのユニフォームをアナーキーな赤と黒に染め上げた。

結局ベロニカに学園爆破を阻止されたJDは、爆弾を体に巻き付けて自殺する… 僕は何となくその最後にカート・コバーンの姿をダブらせたが、それは故あってのことだ。

ビッグ・ファン(という架空バンド)の「ティーンエイジ・スイサイド」は「いま一番流行っている曲」として劇中で何度も流れるが、この曲には「僕の頭は柔らかいって分るだろ?」だの「銃を口から引き抜いてくれ」など、カートのショットガン自殺を連想させるような危ない歌詞に満ちている。

そしてJDはこの曲を愛聴しているのだ… 「スメルズ〜」のPVの体育館下にも、きっと爆弾抱えた「第二のJD」が潜伏していると僕は思う。

ちなみにウィノナ・ライダーは『リアリティ・バイツ』という青春映画にも出ているが、こちらはジェネレーションXの若者が学校を卒業したあとの姿を描いているので、『ヘザース』と併せて観ることをオススメしたい。

2017.05.23
24
  YouTube / NirvanaVEVO


  YouTube / saxbeat1
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1988年生まれ
後藤護
コラムリスト≫
24
1
9
9
2
回想ライブレビュー、クラブチッタで観たニルヴァーナの「伝説」
カタリベ / 浅井 克俊
12
1
9
9
1
ALIVE 〜 グランジの絶望なんて大したことなかった
カタリベ / 浅井 克俊
16
1
9
9
1
R.E.M.「ルージング・マイ・レリジョン」の神話学
カタリベ / 後藤 護
62
2
0
1
6
30年越しのリック・アストリー ~ 奇跡の全英No.1復活篇
カタリベ / 宮木 宣嗣
16
1
9
7
9
ヒットチャートに背を向けたニール・ヤングと『地方創生』
カタリベ / 浅井 克俊
23
1
9
8
7
ダイナソーJr.の爆裂電磁波ギター治療による "スミスロス" からの脱却
カタリベ / シャロウ
Re:minder - リマインダー