この曲とは、リヴィングストン・テイラーが1988年に発表した「ライフ・イズ・グッド」のことである。僕はこの曲が入ったアルバムを、翌89年の春先に購入し、以来桜の咲くタイミングで必ず聴いてきた。と言うより、春が訪れると無性に聴きたくなって結果的にそれが28年続いた、とい言ったほうが正しいだろう。
世間的に88-89年のパブリックイメージといえば、いわゆるバブル全盛期。今となってはその側面ばかり強調されがちだ。でも呑気な大学生だった僕はバブルなんて全くピンときていなかったし、特にその恩恵を授かった記憶もない。ただ、景気は良かったのだろう。街には様々な選択肢が溢れ、音楽の世界においても、ワールドミュージックをはじめとする多種多様なジャンルの音楽が流通していた。
そんな中、ネオ・アコースティックブームなんてのもあって、スザンヌ・ヴェガやフェアグラウンド・アトラクションが登場、そんな流れがいわゆるフリッパーズに象徴される渋谷系へ繋がっていったのだけど、リヴィングストン・テイラーはその流行とも違っていた。なんたって兄貴があのジェイムズ・テイラーである。本流だ。だからなんと言うか「ネオ」のようなちょっとクールな手触りではなく、温かいぬくもりを感じさせるものだった。
でも、アコースティックと言ったところで、デジタルへのアンチテーゼって訳でもない。この曲には打ち込みやDX-7(80年代を代表するシンセサイザー)もふんだんに使われいて、一歩間違えば当時ですら嘲笑の対象になりかねないのに、この時代を超えた耐久性。ヴォーカルだって何の力みもなく、いい感じに緩い。こんなさりげない感じを出すのって難しいんだよなあ。
Life is good when you're proud of what you do
Giving your all to others and it all comes back to you
穏やかな日差しに包まれると、僕は必ずこの曲を思い出す。そして、暖かい風に吹かれながら口ずさむのである。きっと、これからも。
2016.04.07
YouTube / リビングストン・テイラー - トピック
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