ビートたけし主演の映画「悲しい気分でジョーク」(1985年公開)を見た。「なんで今更見てんのかな?」と自分でもよく分からないのだが「たけし、若いなぁ」とか思いながら最後まで見てしまった。この映画は当時のビートたけしの状況そのままの人気芸人の役で、父たけしと余命数ヶ月の子供の親子の物語だ。劇中、ビートたけしとたけし軍団のコンサートシーンがあり、それを見ていたら久しぶりにビートたけしの歌が聴きたくなってきた。 1982年に発売されたビートたけしの『おれに歌わせろ』はA面限定でよく聴いたアルバムだ。ビートたけしは決して歌が上手いわけではないのだけど、ビブラートをかけた独特な歌い方が僕は大好きで、特にバラードは絶品。「ハードレインで愛はズブヌレ」や「CITY BIRD」は久しぶりに聞いても鼻の奥がむず痒くなってくる。 歳のせいで涙腺が弱くなっているのか、電車で聞く時は気をつけなければいけない。このアルバムには入っていないが「TAKESHIの、たかをくくろうか」もビートたけしにしか歌えないと思うし、映画だけでなくまた音楽にも向かってくれないかなと思ったりする。 あの時は申し訳ないことをしたなぁと思う出来事がある。僕とモッチ(JL&Cのコラムで登場した友人)とかめちゃん(後輩の女子)の3人で車で出かけた時のこと(どこに何をしに行ったのかは全く覚えていない)。夜もとっぷり更けた帰りの車中、カーステレオで『おれに歌わせろ』をかけていた。僕たちは一日中一緒にいたこともあって話すこともなくなり、黙ってカーステから流れる歌を聴いていた。 5曲目の「CITY BIRD」が流れ始め、疲れた体にじんわりと染み込むような、なんかトリップしているような気持ちい〜感覚になったその時、後部座席に座っていたかめちゃんがそれまでの沈黙に耐えきれなかったのか「ねぇねぇ、あのさ〜」と話しかけてきた。 その瞬間「おまえは黙ってろ!」と僕とモッチがものすごい勢いで、声を揃えてかめちゃんを怒鳴りつけたのだ。「ひぇ〜」と怯えながら涙目になって震えているかめちゃんを他所に「あ〜あ、いま気持ちよかったのにな〜、でも今の俺たちのユニゾンも気持ちよかったよな」と、車中の雰囲気は一転して楽しい帰路となった。あの時は年下の女の子を怖がらせて本当に申し訳ないことをしたと思う。でも悪いのは、かめちゃん、お前の方なんだぞ。
2016.11.12
CITY BIRD / ビートたけし
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