1976年 7月21日

資生堂 vs カネボウ CMソング戦争 〜 揺れるまなざしと一瞬のきらめき

23
3
 
 この日何の日? 
小椋佳のシングル「揺れる、まなざし」がリリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 1976年のコラム 
ニューミュージックの扉を開いたハイ・ファイ・セット vol.2

山口百恵の功績とは?それまでのアイドル歌謡になかった理屈抜きのカッコよさ

萩原健一もカバーした「酒と泪と男と女」河島英五が伝えたかったメッセージとは?

ピンク・レディー「ペッパー警部」伝説の幕開けはスター誕生の合格からわずか半年!

昭和歌謡を代表する作詞家「阿久悠」と 国民的アイドル「ピンク・レディー」の誕生!

追悼:西城秀樹 — たて髪を振るい歌え!若き獅子たちよ

もっとみる≫



photo:@0onos  

77年に本格化した資生堂ーカネボウのCMタイアップ戦争。春に尾崎亜美『マイピュアレディ』、夏にダウン・タウン・ブギウギバンド『サクセス』(年間22位)と先手を打った資生堂。それに対し、カネボウは秋のキャンペーンソングに、意外にも、ある無名の歌手を起用する。その名は、新井満。広告代理店・電通の社員だ。

新井は、前年の76年に森敦の芥川賞作品「月山」の文章にメロディをつけるという風変わりな企画のレコードを出しており、ワイドショーで取り上げられたことがあった。しかし、それはほんの一時のこと。彼自身も歌手活動は終わったつもりでいた。ところが、その「月山」を聴いたカネボウ宣伝部からCMソングを引き受けてほしいと切望される。難色を示す新井に対し、スポンサーに協力せよと社命が下った。やむなく新井はレコーディングに臨むことになる。

そうして出来上がったのが『ワインカラーのときめき』である。曲はヒットし、年間チャート74位を記録。新井はこれがきっかけでメディアの寵児となり、やがて小説を書き、自身も芥川賞作家となる。巷では、前年の資生堂CM曲『揺れる、まなざし』の小椋佳が銀行員、カネボウCMソングの新井が広告マンということで、ともに副業サラリーマン歌手として比較され、話題になった。

ここで、時計の針を少し戻して、CMタイアップ史の元祖『揺れる、まなざし』についてもふれておかねばならぬ。

民間放送が始まって以来、CMのために作られた曲は数多あれど、それらはあくまでCM専用。商品名の連呼などクセが強すぎて、宣伝のための音源をわざわざお金を出して買う人などいるとは思われていなかった。73〜77年に大滝詠一や山下達郎が録音した三ツ矢サイダーの音源は、CM尺だけの長さしかなく、完全な楽曲ではない。また、既成の曲をBGM的に選曲することも昔からあったが、これも音の隙間を埋める安易な手法としか思われていなかった。それらとは違って、タイアップとは、広告と同時に作品コンセプトを合わせて、完成した楽曲のレコードとしても一般発売する手法だ。

CMとタイアップした日本最初の楽曲が何だったのかは、諸説ある。古くは佐良直美が歌って大ヒットした67年『世界は二人のために』(明治製菓アルファチョコ)だが、CMでは佐良は歌っておらず、後になってからメロディを流用したのに近い。72年BUZZ『ケンとメリー』(日産スカイライン)も、CMとレコードの歌詞は異なる。歌詞の内容と広告の文言が同一連動していなければ、正式なタイアップとは言い難い。同じく72年の吉田拓郎『HAVE A NICEDAY』(富士フイルム)は販促用ソノシートのみで一般売りはされなかった。その意味で、タイアップとしての要件を満たし、かつ、ヒットチャートを賑わした最初の楽曲は、76年の資生堂CMに起用された小椋佳『揺れる、まなざし』なのである。

小椋は、前年に布施明の歌った『シクラメンのかほり』でレコード大賞を獲得。しかし、本業である第一勧業銀行でのサラリーマン生活を優先していた。資生堂のCMタイアップをやることになったのも、旧知の間柄であった資生堂の宣伝部長に頼まれて断れず、という経緯であった。それでも、楽曲の良さ+映像美+テレビ大量オンエアによって、76年の年間27位、週間最高2位という大ヒットになる。

それにしても、このフィルムに映る真行寺君枝の妖艶さよ。若干16歳、高校2年生である。早熟といわれた山口百恵や中森明菜ですらも、わずか16でここまでの色気は出せまい。離婚、破産といったその後の彼女の波乱の経歴を鑑みるに、人生における一瞬のきらめきとはなんだろうか、と考えずにはおれない。

(つづく)

2016.09.07
23
  YouTube / Glory 昭和CM チャンネル


  YouTube / nos 00
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。


おすすめのボイス≫
1966年生まれ
鎌倉屋 武士
昨年「山口小夜子・未来を着る人」(東京都現代美術館)を観に行きました。当時の資生堂の広告やCM映像などが展示されていたのを観て、行政を遥かに超えていくその芸術性に打ちのめされたのを思い出しました。真行寺君枝さんの妖艶さ。そして彼女を見詰めているのは中康次さんでしょうか…。このCFもまた…素晴らしいですネ~。
2016/09/12 15:49
2
返信
カタリベ
1965年生まれ
@0onos
コラムリスト≫
33
1
9
8
3
ラッツ&スター「め組のひと」からの、色褪せない「Tシャツに口紅」
カタリベ / 太田 秀樹
26
1
9
8
4
80年代のトップアイコン小林麻美、ジェーン・バーキンに寄せた強い意志
カタリベ / ロニー田中
57
1
9
8
6
依頼は突然やってくる。山下達郎サンへの質問、考えてみない?
カタリベ / 指南役
48
1
9
7
7
むき出しで勝負した山下達郎、僕が「SPACY」のB面に首ったけだったころ
カタリベ / スージー鈴木
61
1
9
8
7
サマー・フェアウェルズ、杏里と一緒に過ごした学生最後の特別な夏
カタリベ / 藤澤 一雅
110
1
9
8
6
6月24日は美空ひばりの命日 − 52歳で終わってしまった80年代の挑戦
カタリベ / 冨田 格