2018年5月16日、西城秀樹さんが亡くなったことを出先で知った。
どういうわけか、私のリュックサックには2017年11月に発売された『HIDEKI NHK Collection 西城秀樹~若さと情熱と感激と~』という DVDボックスが入っていた。宿泊先で観ようと思ってカバンに入れっぱなしにしていたのだ。
この DVDボックスには『レッツゴーヤング』や『紅白歌合戦』など、NHK での秀樹のパフォーマンスが時系列で収録されている。同じ曲でも違う時期の歌唱を3パターンくらい聴くことができ、我々ファンにとってはたまらない構成なのである。
―― 私がリアルタイムで西城秀樹を意識したのは小学校4年生の時。きっかけは TBS で放送が始まった『ザ・ベストテン』でした。1978年1月の第1回目から観ていましたが、最初はピンク・レディーの「UFO」が3週連続で1位。そしてその次、すなわち放送4週目に1位になった曲が秀樹の「ブーツをぬいで朝食を」だったのです。
イントロでライターの火を見せて、そこから「帰らなきゃいけないと」と軽く控えめに歌い出す。サビでは「後は流れゆくー」とダイナミックに歌い上げ、エンディングでキメる情熱的なポーズ。なんというキレの良さ! さすがドラマーを目指していただけある抜群のリズム感… ということはずっと後に知ることに。
そして話題になったライターに火を付けるパフォーマンス。これが小学生の間で流行り過ぎて社会問題となってしまい、番組の最初に「僕もライター使わないから、君達もライターを使うのはやめよう」と、ライターが封印された記憶が蘇ります。その時、テレビカメラをまっすぐに見て誠実に私達に語りかける真摯な姿勢にも心打たれました。
この曲、先ほどの DVDボックスには『レッツゴーヤング』でのパフォーマンスが2バージョン収録されています。2回目のパフォーマンスの方がダイナミック唱法が頂点にまで達していて、進歩するボーカリストとしての力量にあらためて驚かされました。
このダイナミック路線は、次のシングル「あなたと愛のために」、そしてその究極系である「炎」で頂点を迎えます。確か『ザ・ベストテン』ではこの曲を歌いながら秀樹が氷を叩き割っていた印象がありますが、記憶が大きく膨らんでいるのかもしれません。
「炎」は DVDボックスでも3度にわたるパフォーマンスが収録されていますが、回を重ねるたびに進化する秀樹の鋭敏な感性に心奪われます。何しろサビの歌詞が「あっ、あっ、あーーっ」ですからね、並みの歌手では決められないチャンスボールです。ちなみに、TBS がやっていた『東京音楽祭』にはこの曲で日本代表に選出され、世界のエンターテイナーやアーティスト達と共演していました。
その後、社会人になった頃に CS で『夜のヒットスタジオ』の再放送をやっていて、「炎」の2年前にも究極のダイナミック唱法があることに気づかされました。曲の名は「ジャガー」。特にセリフ部分がアツすぎる…
君が死んだら俺は死ぬ
でも俺が死んでも君は死ぬな
君一人でも愛は生きる
俺一人では愛は死ぬ
しゃべるな何も言うな目を見ろ
何が見えた
炎が見えたか 君を愛する炎が見えたか
さあ来い とんで来い
抱いてやる
抱いてやる
そしてこのセリフ部分からメロディーに戻る部分の躍動感! この情熱はどこから来るのか? この曲で私は完全にノックダウンされ、現在に至るのです。
近年は脳梗塞を患い、あのダイナミクスを思う存分出すことができなかったかもしれません… でも、それでも歌い続けた秀樹の情熱は永遠に我々の心から離れることはないでしょう。日本国民の多く、特に我々世代には不世出のスーパーヒーローであると確信しています。
しばらくはこの DVDボックスで秀樹に浸りつつも、心よりご冥福をお祈りいたします。
DVD Data
■『HIDEKI NHK Collection 西城秀樹~若さと情熱と感激と~』
「ブーツを脱いで朝食を」
1978 / 1 / 22 放送(レッツゴーヤング)
1978 / 2 / 19 放送(レッツゴーヤング)
1978 / 6 / 29 放送(NHK 花のステージ)
「炎」
1978 / 6 / 11 放送(レッツゴーヤング)
1978 / 6 / 25 放送(レッツゴーヤング)
1978 / 7 / 16 放送(レッツゴーヤング)
※2018年5月18日に掲載された記事をアップデート
2019.04.13
YouTube / MERRY KEN
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