共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.64
Somewhere Out There / Linda Ronstadt & James Ingram
クイーンの映画『ボヘミアン・ラプソディ』の熱が冷めやらぬ中、エルトン・ジョンの半生を描いた『ロケットマン』が日本公開された。そして今度はリンダ・ロンシュタットの映画が今秋北米公開、必ずや日本で上映されることでしょう。70年代のスーパースターたちのちょっとした映画ブーム、まだまだこれからも出てくるのかもしれない。
そう、70年代アメリカン女性ロック・シンガーのトップに位置していたのは、リンダ・ロンシュタット!というか “女性ロック・シンガー” のパイオニア的な存在と言っていいだろう。
全米ナンバーワン「悪いあなた(You’re No Good)」(75年1位)を筆頭に、「ザットル・ビー・ザ・デイ」、「イッツ・ソー・イージー」、「ウー・ベイビー・ベイビー」といったヒットソング群は、50代後半以上の抜群な共有感を誇る。コケティッシュでいながら妖艶な容姿も人気の一要因、恋多き女として錚々たるミュージシャンたちと浮名を流していた。
では80年代のリンダはどうだったのだろうか。パンキッシュシンガーへのイメージ転向が大成功した「お願いだから(How Do I Make You)」(80年10位)のヒット、ネルソン・リドル・オーケストラとの共演でスタンダードナンバーを歌った『ホワッツ・ニュー』(83年)等3枚のアルバムをリリース、黒人男性シンガーと普遍的バラッドでデュエットを披露、さらにはエミルー・ハリス、ドリー・パートンとタッグを組んで出自たるカントリー作品を発表… 数年おきに劇的なイメージチェンジを果たしていながらも、実はしっかりと商業的成功を収めていたのだ。
そんな中での、黒人男性シンガーとのデュエットとして、80年代62番目に誕生したナンバー2ソングが、リンダ・ロンシュタット&ジェイムス・イングラム「サムホエア・アウト・ゼア」(87年3月2位)だ。
スピルバーグによる初アニメーション映画『アメリカ物語』の主題歌として、老若男女に訴求しうる普遍的名曲感漂う、どこからどう聴いても良い曲といえるのがこの「サムホエア・アウト・ゼア」。円熟味溢れるリンダの歌声もパーフェクト(当曲リリース時40歳)、“アメリカを代表する女性シンガー” の座を、バーブラ・ストライサンドから奪取したと、誰もが認めることとなった。
そもそもスピルバーグの大作系映画=アメリカ国家をあげての一大プロジェクトみたいなもので、この白羽の矢はアメリカ代表に充分値するでしょう。そしておよそ2年後、さらなるデュエット名曲「ドント・ノウ・マッチ」で、リンダはその座を盤石にしていく。
つづく…
2019.09.03
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